811年度 魔導連合国 中央議会会議
あああああああああああああああああーあ!!
辞めだ!辞め!!
こんな物丸めてポイーッ……っだ!!!
誰だよ歴史書作成なんて面倒な仕事作った奴は!!
「それは坊っちゃんではございませんか」
「確かにそうだけどさ!!……まさか2頁書いて行き詰まるとは思わないよ…」
「まあ…一息入れて落ち着いてから少しずつ書き足していけばよろしいじゃないですか?」
そう言って執事のオウグは紅茶を入れてくれた。
「坊っちゃん、砂糖はいかがされます?」
「ゲロ甘でよろしく」
「……砂糖をお舐めになればよろしいのでは?」
呆れた顔で言われたが、オウグの紅茶は僕にとっては薄味だし、今は甘味が欲しいぐらいに脳を酷使したからね。
この薄味紅茶を美味そうに飲む姉ちゃんの舌は一体どうなってんだろ。
「どうぞ坊っちゃん」
「ありがと」
やっぱり薄味だわ。
「それはそうとなぜ歴史書なんてお書きに?」
「うーん…まだ秘密だけど良い発見というか報告があってね。ちょっと舞い上がっちゃってね。あっ…一度議会に報告相談しないとね」
「それはよろしいことですが、その中央会議は本日の正午に開かれますよ」
「えマジ?」
「マジでございます」
時計を見ると今はその1時間前。
でも移動時間を考えると確実に議会開始に間に合わないけど、これを逃すと次は半年後ぐらい!?
「オウグ、今すぐ行ってくる!」
「かしこまりました」
ーーーーーーーーーー
変ね。
愚兄がいない。
「まずは他大陸の情勢の報告から」
近くに魔力の反応が無いから議会に来てないどころか、この中央都市にも来てないみたいね。
「西方大陸の小国群は変わらず不干渉の姿勢で…」
寝坊?どっかで油を売ってる?
どっちにしても自堕落な生活を送る愚兄には説教が必要ね。
「北東大陸は国家間の外交を要求。南東大陸は今のところ目立った動きはありません。ですが北東大陸に対して挑発的な…」
兄様は遠いし向こうをなかなか離れられないから無理だろうけど、姉様に協力してもらおうかしら。
百戦錬磨の兄様をも怯ませる姉様の威圧感があれば、愚兄も少しは私の話を聞いてくれるでしょう。
御父様なら少し言い聞かせるだけで激変するんだろうけど…………。
………出来るならもう一度御父様に会いたいなぁ。
「クラリアさん?如何でしょうか?」
!!?
びっくりした……会議中だったの忘れてたわ。
……えっとなんだっけ。
基本的な情勢は相変わらずで、南東が北東にちょっかい出してて、北東はこちらと手を結んで南東に圧力を掛けたい。こっちはどう出るかってところかしら?
「基本は現状維持、北東に関しては貿易を行うのみといったところでしょうか」
「ふむ…あくまで今の体制は崩さないが、北東よりの姿勢を示し南東を牽制する狙いということか……異議なしだ」
なんか適当に言ったけど、いい感じの解釈してくれたようね。終わり良ければすべて良しだわ。
「他の皆さんは如何でしょうか?」
「異議なーし」
「異議ありませぬ」
「特に異議ありません」
「異議あり!南東を抑えた後、西方の生き残りを滅ぼすべきだ!」
「異議なし」
「異議あり。我が巨人族の汚名を返上しなければならない」
反対は狼人族のループスと巨人族のジヤ。
どちらも感情に身を任せてる感じね。
とりあえずいい感じのまま終わらせるために、ジヤは龍人のスケイルに任せて、私のお月見仲間のループスを説得しようかしら。
「少し感情的になりすぎじゃないかしら?確かに貴方や一族の気持ちも分からない訳じゃ……」
何か違和感がある……。
……何かが高速で近づいてきてる?
ループスと他何人かが、途中で言葉を止めた私を不思議そうに見てるけど、まだ遠いから気付かないから無理ないわね。
進行役のマドウ6世、鬼人のデュラキュリアス、精霊ダリアは気づいてるみたいね。
特に精霊ダリアはこちらを見ながらニマニマ笑ってくるけど一体何なの……。
あっ……この魔力…………愚兄だわ。