魔導について
「力を付け、技を磨け、知識を深め、心を養え」
ーーー魔導学校 校長 『入学式 挨拶』ーーー
魔導式は魔導連合国を語る上で避けては通れない事がである。
そもそも魔導や魔法、魔術の定義は曖昧であり、魔術士、魔導士、魔法使いなどの呼称はあくまで自称にすぎない。
しかし南方大陸においてその限りでない。魔導連合国 魔導学府アクシスがそれらについて定義し各教育機関で共有されている。
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魔導とは、魔素を用いて独力で物質や現象に導く事。
魔法とは、体内の魔力と引き換えに周囲の霊物に物質や現象を行使させる事。
魔術とは、あらかじめ用意した魔術回路に魔力を流し、物質や現象を引き起こす事。
ーーー『魔導学 理論編 第一章』よりーーー
簡単な例をあげるとするならば、魔法は詠唱魔法や精霊魔法、魔術は魔方陣や魔道具などである。
それらに当てはまらないものが魔導であると考えても良いのかもしれないが、それでもあえて例を挙げるとするなら、昨今の創作物の念動力や神通力と呼ばれるものが近いと思われる。
魔法式の利点は魔力さえあれば、周囲の妖精などに行使してもらえる点である。
しかし詠唱(どのような魔法を、どこに、どのように、どれくらいの規模で、といったような指示)がなければ具体的な魔法が行使できないのが欠点である
魔術式の利点は事前準備さえしておけば、あとは魔力を流すだけで発動する点である。
だが事前準備がなければ時間が掛かりすぎる点や魔術回路を破壊されれば作動できなくなる事が欠点である。
しかし最高位の魔術士になれば脳内で術式を組み上げ、魔術を行使することも可能であるようだ。
魔導式の利点は、体内の魔力だけでなく大気中の魔素の流れを操れることにある。またその場で具現化させる為、状況に応じてすぐに対応できる。
しかし魔導式を修得するのは容易でなく、感覚によるものが大きいこともあり、個人の資質が問われるようである為、その習熟難度が欠点であると言えるだろう。
その習熟難度を引き下げることに成功したのが、現在の最高教育機関 魔導学府の前身である魔導学校の校長レインである。
レインは今まで個人の感覚によって養われてきた魔導を、より理論的に想像しやすくする為に、魔導とは何かを検証し、魔導により発生する現象を追求していった。
その結果、魔素と呼ばれる物質が違う物質に変換されるという仮説を発表した。これは後に魔素基本原則の一つと呼ばれる。
レインは現象や物質変換の過程を説明し、生徒らに実演して見せることで、当時一種族に1人か2人と言われた習熟難度を、30人に1人とする程になった。
彼がいなければ魔導はここまで広がらなかったであろうと言われる。
また彼は魔導の習熟に至らなかった者に対して、別の分野での指導と、希望する生徒に対しての魔導の補講を何度でも行い、逆に魔導を習得した生徒にも魔術や魔法の講義を行ったとされる。
魔導学校を卒業した多くの生徒は様々な分野で活躍した。様々な物理法則を論理的に解明し発表した魔人の学者オステオ、現在も残る世界最長の城壁リブスを設計し建築した巨人の建築家フーリエフェート、製紙家エスクリステ、魔導医ファージ、名工ドルフィなど数えきれないほどの魔導学校出身者が活躍した。
多くの功績を残した者を数多く輩出した魔導学校は、連合の者には羨望を、敵対する者には脅威として名が知られた。
年を重ねる毎に入学希望者が増えていった一方で、度々敵対勢力に強襲の的とされるが、校長を始めとした教師陣がことごとく撃退した。
校長レインは、各種族の長の側近や連合のまとめ役などとして勧誘されるがこれを固辞する。しかしあまりの熱烈さにレインは折れ、連合全体の相談役としてならと合意する。
後に大陸統一戦争と呼ばれる戦いにおいて護国の英雄として戦死することとなる。
レインが魔導学校を創設したのは、連合が結成される翌年であるため、前述した、各種族に魔導を教授した人物では無いようだ。