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彼と私のぐだぐだ恋愛日記。

グダグダ四月

作者: ひばり れん
掲載日:2014/04/01



四月一日。朔日と言っても問題なし。

今日この日はエイプリルフール。

直訳して四月バカ。

通称、「嘘をついても怒られない日」。


大体のいたずらっ子はこの日をとてもエンジョイしているらしい。

毎年手を変え品を変え、頑張って人をだましているらしい。

朝のニュースに続いたアニメを見て気づいた。

「そういえば、今日がそれだ」と。


といっても私に嘘をついてくる人はどこにもいない。

友人はもちろん、長年付き合ってきた彼もだ。

一度も嘘を吐かれたことはない。私の記憶が確かならば。

その代り、彼がいつも婚姻届けを持ってくるのは何かの錯覚だと思う。

あれは新手の嘘だったのだろうか?



「おはよー」

「うん」

「今日、何の日か知ってる?」

「四月一日火曜日」

「そうじゃなくって」



あからさまにエイプリルフールについての話題提供をしてくる彼。

朝から頑張るなーと思いつつ受け流す。

きっとまともに聞いた方が馬鹿なんだ。



「まぁ、いっか」



諦めたにしては明るめな声で彼はそう言った。

最初から見込みのないことに挑戦したかのような語調。

何のことだろうと疑問には感じたが、私が打ち切ってしまった話だ。

今更訊けない。



「そのかわりーこれどーん!」

「・・・・うぇ」



恒例の婚姻届け。

両手で折らないように丁寧に彼は持っていた。

すでに彼の分は書いてある。判子も押してある。

後は私が書き込んだりなんだりすれば、完了してしまう。



「あのさ、去年も言ったけど」

「まだ結婚はできないけどさー予約みたいな感じでいいからー」

「・・・私はあんたが年を取るのを待ってる程暇じゃないから」

「ええー!?あと一年くらいじゃん!」

「あと一年と半年。切り捨てすぎでしょ、一年じゃないよ!」

「・・・そだっけ?」



彼の誕生日は十月。

そして私たちは今高校一年生だ。

まだまだ婚姻適齢ではない(主に彼が)。

それに未成年の私たちは両親の承諾だって必要だ。

これらのことを考えれば婚姻届けなんてまだまだ早い。

今の私たちには不要なもの。


私は彼が、・・・その。好き、だけれど。

同じように彼が私を好きであることも知っているけれど。

それでもいつか、この感情が消えてしまうような気がしてしまう。

永遠の愛なんてどこにもないのだから。

そもそも有限の私たちが無限の存在に手を伸ばせる訳がない。

最初から誓えるわけないのだ。

病める時も健やかなる時も。なんて。



「じゃぁ、今はちゅーで手を打とう!」

「は?」

「ちゅーーーーーーーーーーー」

「い・や」

「いいじゃん、いいじゃん。一回だけー」


呆気に取られたままの私を引き寄せ、口を近づけてくる。

腕を突っぱねて何とか止めたけれど長く持たない。

じりじりと近づいてくる彼の顔。


まるで、そういったことが目当てにも見えてしまう。



「離してよ、ばーか!!」

「うわっ」



思いっきり突き飛ばした。

彼が一メートル程私から離れる。

その隙を狙って捨て台詞と共に彼から遠ざかる。



「もう、あんたなんて大っ嫌い!」



喉からこんなに大きな声が出るなんて知らなかった。

今まで声を荒げたことなんて数えるくらいだし。

それでもいくらか加減していたから。

彼に対してだけは、いつだって全力だった。


だから、どうしようもなく悲しかった。

すぐにでも既成事実を作ってしまおうとしているよう。

私自身に興味があるんじゃなくて、女である私に付きまとっているだけに見える。



「えへへー」



ぎょっとするほど空気の読めない笑い声。

それはもちろん私じゃない。彼だ。



「な、なに・・?」

「珍しく年間行事に付き合ってくれたなーって」

「はぁ?」

「いま、嘘、吐いたでしょ?」

「嘘なんて、」

「ついたよ。俺のこと嫌いって」



自意識過剰、と口が動いた。

まるで私が彼のことを大好きだって確信しているみたい。

そんな証拠なんてどこに・・・。



「そんな泣きそうな顔しないでよ」

「べ、別に」

「婚姻届け(これ)は偽物だって、知らないの?」

「・・・・え」

「やっぱり知らなかった?これねーここがちょっと違うんだよ」



先ほどの紙を根絶丁寧に指さしながら教えてくれる。

嘘の種明かしを今するのか。

明日でもよくない?と思ったけどスルー。

きっと彼なりの考えがあるのだろう。



「去年も同じことしたけど、突っ込んでくれなかったよね」

「・・・そうだっけ?」

「うん、本気にしてたよね」

「・・う゛」

「でも大丈夫。俺が18になったら本物渡すから」



書いて、も。判子を持ってきて、もなく。

それが当然のように笑う彼。

私が必ず彼と結婚するかのようで。


顔が下から徐々に温かくなってくる。

彼の顔は段々二ヤけてくる。




「ばーか」




今日は私も彼も四月バカ。


来年もきっと同じように嘘を吐くのだ。

でも再来年はない。



その時はもう吐く嘘がなくなってしまうだろうから。




永遠はどこにもない。

私の手元には有限ばかり。

彼の強い思いに対抗できるものはほんの一握り。



真実と嘘は両方とも私の手元にある。

だったら、私は両方とも有効活用しよう。

彼に誠実な気持ちで向き合うために。

彼のほんの冗談だって、受け流せるように。



いつか、彼に誓う愛は永遠じゃない。

嘘偽りない、愛を彼に誓おう。


彼にだけは嘘を吐かずに行きていきたいから。








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