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超能力高校生はパフェがお好き  作者: まんぼう
第1章 白い薬にご用心
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パフェなんか食べている場合ですか!

神城の腕の中で鈴和は目が覚めた。

「あ、神城先輩……どうしてここへ」

鈴和はぼんやりした頭ながら、ここに居るはずの無い神城が自分を抱いてくれているのが不思議だった。

「何を言っているんだい。一人でこんな危ない事をしたら駄目じゃないか!」

神城にしては珍しくキツイ言い方で鈴和をたしなめた。

「だって……ただ、浅野さんに訊くだけだと思っていたんだもん」

半分甘える様な言い方だった。

「そんな言い方しても駄目だよ」

そう言ってると浅野邸には爆発音を聞きつけた野次馬と彼らが連絡したパトカーと消防車が到着していた。

彼らは中に入ろうとして戸惑ってしまった。

それはそうだろう。門は閉まっており鎖でがんじがらめになっている。

おまけにそれは暫く人が触った形跡が無く錆びついており、無理矢理こじ開けて中に入っても

玄関は完全に締められており、人が触った形跡さえ見られなかったからだ。

それでいて、居間付近が崩れ落ちているのだ。

まるでそこだけ何か固いものが天から降って来た様な感じだった。

「なんだこりゃ……」

警察も消防所員も全くわけが分からなかった。


鈴和と康子は神城に保護されて家に帰る事にした。

敵が逃げたなら何時までもここに留まってる必要は無いからだ。

「いいかい、今度からは必ず僕が一緒に行動するからね。判ったね!」

神城は未だ鈴和に言ってる。康子は神城にここまで心配させる鈴和が羨ましかった。

そうなのだ康子は神城に憧れに近い恋心を抱いているのだ。

帰り道を歩いているとフルーツパーラーが鈴和の目に入った。

「ねえ、先輩、ちゃんと言う事利くからちょっと寄って行きましょう」

そう言って神城の上着の袖を引っ張る。

やれやれと言う顔をしながらも神城は鈴和に危険な目をさせるならパフェでも食べさせていた方が安心だと思う事にした。

「ああ、じゃあ寄って行こうか。ボスとお母さんには連絡しておくよ」

康子が入ろうか戸惑っていると神城は

「どうしたの康子ちゃん!」

そう声を掛けられた。

康子は神城と鈴和の家族に近い親密な感じが羨ましかったので何となく遠慮してしまったのだ。

「あ、はい」

そう短く返事をすると一緒に中に入って行った。


「フルーツパフェ3つね」

「いや二2つで良い!」

「ええ、先輩は?」

「僕はコーヒーでいいよ。甘いのは苦手だ」

「へええ、先輩変わってますね」

康子がそう口を開くと鈴和は

「変わってるのよ」

そう言って康子を笑わせる。

やっと何時もの鈴和に戻って来たと康子は思っていた。


「お待ちどう様」

店員さんが三人にそれぞれ注文したものを運んで来た。

「ああ、これこれ!」

そう満面の笑みを浮かべながら一口スプーンでクリームを口に運ぶと

「ああ、美味しい!やっぱ専門店は違うわねえ!」

こぼれんばかりの笑顔で食べていると、いきなりパリーンと言う音がして鈴和のパフェが粉々に砕けてテーブルから落ちて行った。

窓際を3人が見るとそこには同じ制服を着た少女が立っていた。

「あ、浅野さん!」

康子の叫びを聴くと鈴和はテレポートで二人の前から消えていた。

「鈴和ちゃん!」「鈴和!」

二人の叫びを無視して外に行ったのだ。


鈴和は感じた気がさっき浅野邸で感じた気と同じなので、先ほど戦ったのが浅野さんだと直感したのだ。

鈴和は浅野さんの前に立ち

「さっきは良くもやってくれたわね」

そう言うと、なんと浅野さんは

「それはこちらの言い草さ。やっと収益を上げられる用になったら嗅ぎつけて邪魔しやがって」

浅野さんの言い方は高校生とは思えない感じだ。

「浅野なんてのはこの世界の仮の名さ。本当はサツキ、アンタの親父さんと同じ様な組織の一員さ。但し異世界のね」

「やはり異世界の人間だったんだ」

「ここまで話したらあんたには今度は本当に死んで貰うよ」

そう言ってサツキは鈴和に気の玉を連続で放つ、

咄嗟に横に逃げて交わす鈴和、

鈴和の横をすり抜けた玉は後ろのコンクリートの壁に食い込んで破壊した。

「あんなの食らったら死んじゃうよ。ヤバ!」

そう言いながら横に移動しながらも鈴和も気を玉にして放って行く

鈴和の玉はサツキの肩を僅かにかすめて行った。

「ウッ」

小さくサツキが呻くと鈴和は続けて放って行く。

さっき浅野邸で戦った時より強力だ。

「人がせっかく楽しんでるパフェを台無しにして……絶対に許さないんだから!」

怒りに鈴和の体から銀色に光るオーラが放たれて行く。


遅れて表に出た神城はその鈴和のオーラを見ると鈴和が通常の能力では無く、一段上の力を発揮するのだと理解した。

鈴和の能力は強力なのだが、状態が不完全なのでコントロールしづらいのだ。

それで母親の陽子も心配するのだ。


一瞬怯んだサツキに続けて気の玉をお見舞いする。

3発放ったうち2発がサツキの足を直撃した。

たちまち転ぶサツキ

「なんだよ、前とパワーが違うじゃ無いか。クソ!調査のやつら隠し能力まで調べ無かったな!」

サツキは今更ながら仲間の調べかたの不十分さを呪った。だが後の祭りだ。

引きずる足を動かして、鈴和目掛けて玉を放出するが、全て銀色のオーラに弾き返されてしまう。

「よし、こうなったら」

サツキは手で円を描くと円盤上に気を形成して回転させながら鈴和目掛けて放った。

凄まじい回転をしながら鈴和目掛けて円盤が襲って来る。

鈴和は木の陰に隠れるが円盤はその木も簡単に切り裂いてしまう。

鈴和は円盤目掛けて気を放出するが、簡単に弾き返される。

「これは厄介ね」

鈴和は思いついた。硬いからはじき返されるんだと。

柔らかくして吸収すれば良いのだと。

鈴和は四面体に加工した気の塊を拵えた。

そして向かって来る円盤にそれをかざす。

気の円盤はその四面体に当たると回転を止めてやがて蒸発して行った。

「もうお終いよ。観念しなさい浅野さん、いいえサツキさん」

鈴和の呼びかけにサツキは

「冗談じゃ無い。一旦は引き上げるが、鈴和あんただけは許さ無いからね。

必ずもう一度アンタを殺しに来るからね」

そう言うと3人の目の前で姿を消して仕舞った。

「あ、テレポートかな、それとも……」

そこまで鈴和が言うと神城が

「異世界の仲間の所に帰ったのだろう」

「そうか、やはり逃してしまったか。残念!」

そう言って鈴和は汗を拭っていた。

梅雨が明けないとは言え7月だ、これだけ動けば暑いハズだと康子も思った。

もう鈴和からは銀色のオーラは出ていない。

「ああ、パフェ食べ損なっちゃった。アイツ絶対許さないんだから!」

それを見て神城は

「判ったよ、さつきの器も弁償しなければならないし、もう一つ注文しよう。あ、康子ちゃんの分もだから3個だな」

さんこ?先輩甘いの嫌いって言いませんでした?」

「まあ、たまには良いだろう!」

そう言いながら又店に入って行った。


後ほど判った事では、浅野邸はそこに住んでいた浅野さんが亡くなり、子供達の遺産分割協議の結果売却して各人相続が決まっており、近々解体される予定だったそうだ。

そこを連中が根城にしていたらしい。

それに住民登録はどこでも出来るから高校も疑わなかったのだ。

鈴和は中に入った時の事を思い出して

「だから電気も通じて無かったのか!」

「でも鈴和は私が門に鎖がって言おうとしたらもう消えてるんだもん」

「まあ、それは言わないで……ね。だって中を霊視したら変な気の奴が居たからさ」


売人の浅野さんは消えて一旦「勉強の出来る薬」騒動は収まったかに見えたが、

実は密かに流通するだけになったに過ぎなかった。

裏で売買される様になり、今度は売人の詮索も難航すると思われた。

「まだ、安心してパフェ食べられないわね」

そう鈴和は思い、決意を新たにするのだった。


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