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超能力高校生はパフェがお好き  作者: まんぼう
第1章 白い薬にご用心
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美樹の想い

屋上の手すりに捕まって美樹は空を見上げながら

「いい天気だね。昔さ、まあ中学の頃、私地元の暴走族に入っていたじゃない。親とか先生に反発してさ。そのおかげで私立は軒並み落ちちゃって、ここに補欠合格したんだけどさ」

傍に鈴和と康子もやって来た。

「浅野さん。そんな噂を聞いたんだろうね。私に薬の事持ちかけて来たの『勉強が出来る様になる薬だから使ってみたら』ってね。でも私は使わなかった。大学へ行く積りなんか無いから赤点さえ取らなければいいからね。そう言うと浅野さん『じゃあ勉強が出来る様になりたい娘が居たら紹介してね』ってそう云われたの」


手すりに保たれながら校庭を見て話していた美樹は振り返り、二人の方を向き治り

「適当に返事していたの。実際は誰にも声を掛けなかった。だから当てが外れたのか、

浅野さん自分で色々な人に声を掛けていたわ」

鈴和は美樹の横に立ちもう少し詳しく訊いてみた

「ねえ美樹、浅野さん誰に声を掛けていたか覚えてる?」

「う~ん大分忘れちゃったけど……」

と言いながら3人の名前をあげていた。

鈴和はそれを覚えると美樹に

「美樹はあの薬が覚せい剤だって知ってたの?」そう訊いてみた。すると美樹は

「うん、知ってたよ。だってほら私、前は暴走族だったから、周りの娘や上の人達が色々な麻薬をやってるの見ていたからね。覚せい剤は3日ぐらい寝ないでも平気になるんだよね。

食べなくても平気だから、年中使ってると痩せて体がボロボロになって行くのも見たしね

だから、『勉強が出来る薬』なんて覚せい剤しか無いとすぐに判ったわよ」


鈴和はもう一つの疑問を美樹が知ってるか訊いてみた。

「あのね、この前教室で見たことの無い娘とぶつかったの。その娘が落として行ったピルケースの中の錠剤を調べたら……」

「強い薬だったんでしょう」

「知っていたの?」

以外な美樹の言葉に鈴和は驚いた。

「なんで知っていたの……」

「あのね。あの子はウチの学校の制服を着てたまに浅野さんから薬買っていたからね」

「ええ!じゃあ前からやっていたんだ、その娘は」

「絶対口外しちゃ駄目だよ。その娘はねえ敬愛学園の娘なんだ。お姉さんがこの高校の卒業生でね。その制服を借りたんだと思う」

鈴和はまさかとは思っていたが、薬の被害は他の高校にも及んでいたのかと空恐ろしくなった。

敬愛学園とはこの高校の傍にある中高短大を併設している私立女子校で、この辺ではお嬢様学校として有名である。


「なんで私が知っていたと言うと、私の姉貴が彼女のお姉さんと同級生だったからね。

そして私、浅野さんに訊いたのよ。なんであの娘はこの学校まで変装してまで買いに来るのかってね」

「ちょっとまって!買ってたって、お金取っていたんだ浅野さん!」

それまで黙っていた康子が驚いて叫ぶ様に言う。

「だってあたしにはくれたよ浅野さん」

それを聴くと美樹は笑いながら

「ヤスは何にも知らないのね。始めはタダでくれるのよ。気に行ったら次からは買ってね。

となり、それからは言い値で買わされるのよ。浅野さん彼女から1錠1000円貰っていたわ」


康子は本当に事がバレてよかったと思い始めていた。

意志の弱い自分の事だ、きっと段々強いのを求めて……そう考えると身震いがするのだった。

「多分、これは私の想像だけど、きっと敬愛の売人は強いのを持って無かったのね。あるいはこの学校よりも薬が入ったのが後なのでそこまで強いのは必要無いのかもね」

そう言って美樹は空をまた見上げた。

その先を鈴和が見ると三人の守護霊が寄って呑気に井戸端会議をしている。

まさか見える訳でも無いのだろうが、何となく気になった。


「レイ、あんたにはこの上で私らの守護霊が何を言ってるか判るんだよね。中学の頃はさあ、

その能力が羨ましくてね。親しくしてれば自分にも、それが移るじゃ無いのかと思ってさ、

何時も学校じゃ一緒にいたんだ」

美樹は鈴和の方を向き直り

「でもね、そうじゃ無かった。レイはそんな能力があっても無くても同じだったと思う。

そう言う人にしか能力は宿らないんだよね。何時も一緒にいて良く判ったんだ」

鈴和はそれは違うと思っていた。

そう見えるのならそれは、自分の能力を何度恨んだ事か数えきれない程悩んだ末なのだと……


「レイこれからも友達でいてくれる?私今日言えてよかった……実はね誰かに言わないと

イケナイと思ってたのにどうして良いか分からなくて誰にも相談できなかった。

元暴走族だからってちょっと強面の顔してなくちゃならなくて……学校で恐ろしい事が広まっているのに、何もできなくて辛くて、怖くて……ゴメンネ、レイならきっと解決してくれると思ってもっと早く言うべきだったのに……私駄目だよね……本当に……」

そう言って美樹は目に一杯の涙を貯めていて、下を向くとその雫が落ちて屋上の床に染みを拵えていた。

それを見た鈴和は優しい笑みえを浮かべて

「そんな事無いよ!良く教えてくれたじゃ無い。今までそんな恐ろしい事を一人で心に仕舞っていたんだね。大丈夫!私頑張るから」

「うん、まだ、私達友達かな?」

「何言ってるのさ。当たり前じゃ無い。落ちついたら又パフェ食べに行こうよ」

「うん、でも私はチョコサンデーかな」

そう言って三人は笑った。



放課後の帰り道、康子と鈴和は神城との待ち合わせのファミレスに向かっていた。

「ねえ、美樹だけど、薬貰ったのに使わなかったなんて凄いね。あたしとは違うね」

そう言う康子に鈴和は

「違うよ。美樹は自分の信じてる事以外はブレないんだよ。だから中学の時周りのみんなが暴走族辞めろって散々言っていても辞めないで逆に『高校行ったら辞めるから』って言ってて皆信用しなかったけれど、本当に辞めたよね。それと暴走族の時も髪の毛は染めなかった。あれ見て美樹は自分の中にある価値観がしっかりしていてブレ無いんだと思ったの」

「そうかあ、あたしなんかブレっぱなしだもんなぁ」


店に入ると神城は先に来ていた。

二人を見ると大きく手をひらひらさせる。

「何か判ったかい?」

そう言う神城に鈴和は美樹の言った事を手短に話してみせた。

「そうか、敬愛からねえ……」

「先輩の方は?」

「その前にパフェ頼むんだろう」

「あ、忘れてた。じゃお願いします」

そう言って店員にパフェとドリンクバーを康子の分と一緒に頼んだのだった。


「まず、お父さんには報告して組織で取り上げる様に頼んでおいた。それから2年の方だけど、

やはり女子を中心に広がっていた。ついでに3年も調べたら、エラい事になっていたよ」

「それは、どういう事ですか?」

鈴和の顔色が気色ばんで来た。

「うん、受験を控えている3年はかなり使っている者が多くてね。男子も使ってるんだ。

男子は量の多い奴を最初から使っていてね。常習者も多いと言う事だ」

「先輩、良く短時間でそれだけ調べられましたね。一人じゃありませんね」

そう言われて神条は笑いながら

「いや、お父さんが能力者を回してくれてね……」

「やっぱり……」

恐らくテレパシーを持つ能力者を何人か送り込んで、片っ端から脳内をスキャンしたのだろうと思った。

事情が許せば自分もそう言う事をしたい。いや明日からは自分も能力を使う積りだった。

ただ、今日の康子や美樹に対しては使いたく無かったのだ。

「その浅野さんて言う娘がウチの学校の大元らしいとは判ったんだ。調べた人間辿って行くと最後はその娘に辿り付く」

「結局は浅野さんかぁ~ 明日訊こうかな」

鈴和は口ではそう言っていたが、明日は自分の脳力をフルに使ってでも、彼女を問い詰める積りだった。同級生や先輩達を覚せい剤の常習者にしたのは許せなかった。

でも、でも今はいい、すべては明日から始めよう。その前に……


鈴和と康子はパフェを美味しそうに食べている。

「やっぱりさあ、この前の『喫茶館』もいいけど、我々はここの何時もの味だよね」

「そうだよね~」

これを食べている時は本当に幸せそうな顔をすると神城は思った。

この顔を見るのなら、奢る金額は安いとさえ思っていた。

そして、兎に角マスコミが嗅ぎつける前に事件を片づけなくては、と思うのだった。

既に組織が動き初めている。

そっちの情報も段々と入るだろう。

神城は自分もコーヒーを飲むとささやかな安らぎを覚えていた。

全ては明日からだと……


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