西高での調査 その1
鈴和と美樹、それに康子は鈴和の家に寄りサツキの持って来た西高の制服に着替えていた。
「康子、良く似合ってるわよ。美樹もいい感じ」
鈴和はそう言いながら笑っている。
「西高ってセーラー服なんだ今でも」
そう言ったのは美樹だった。
「サツキ、今から行って時間的にはどうなの?」
鈴和はその方が心配だった。
それに対してサツキは
「大丈夫、今は学祭の準備期間だから最大21時までに帰れば良いとなってるから」
それを訊いて美樹は
「西高は随分規則が緩いのね。ウチは文化祭の前でも7時だもんね」
「ほら、これでもウチは進学校だから」
康子がそう言って笑っている。
「進学校の生徒が毎日の様にファミレス寄ってパフェ食べてるんだ」
美樹は半分自虐的に言うのだった。
鈴和の家から西高までは歩くと20分以上かかったが、そこは鈴和は康子を、サツキは美樹を抱きしめると西高にテレポートした。
康子は気がつくと学校の体育館の裏にいた。
ここが西高かと思って隣を見ると鈴和と美樹、そしてサツキが立っていた。
「ちゃんと着いてよかった」そう思ってしまった。
「さあこっちよ」
サツキが三人を案内して歩きだした。
後を従いて歩いて行く。
校舎の3階の隅にある「現代経済研究会」と書かれた部屋には警察が来て色々と調べているらしい。
「警察来てるじゃん」
美樹が警察が張ったロープを掴みながら言うとサツキは
「鈴和、なんか変な霊とかいない? ちょっと見て欲しいのよ」
そうサツキが言うので鈴和はこの辺りを霊視してみた。
すると、特に変わった事は無かったので鈴和は「現代経済研究会」の部室の中を霊視して見る。
中には、警察の関係者と思われる鑑識らしき人が3人、刑事らしき人が2人いて、3人いる部員に話を訊いている。
鑑識の人は行方不明になった生徒の指紋を採取してるらしかった。
鈴和はその中で部員でも一番偉そうな感じの部員の守護霊に訊いて見る事にした。
鈴和が訊いたのは研究会の部長の守護霊で、実に気さくに答えてくれた。
それによると……
「アンケートを採っていた娘が行方不明になったの?」
「そうです。高校の前で通行人に経済関係のアンケートを採っていたのです。そうしたら何時の間にかいなくなってしまって……」
「なんか、変なアンケートだったのでしょう!」
「とんでも無い、真面目なアンケートでしたよ」
「じゃあ、売春の噂は?」
「そんな事してないと思いますよ。ただ、良く「意見交換会」と言う事は良くやっていましたねえ」
「「意見交換会」?」
「はい、よその学校の生徒と色々な経済の問題について意見を交換する会ですね」
そこまで訊いて鈴和はこの部長の守護霊や恐らく部長も知らないのかも知れないが、
この「意見交換会」が怪しいと鈴和は思うのだった。
続いて他の部員の守護霊にも訊いてみた。
しかし、同じ様な情報ばかりで、新しい収穫は無かった。
仕方無いので、校舎内をうろうろしていたら、通りかかった教師に注意を受けた。
「君たち、何処の部活だ? 学祭の準備が終わったなら早く帰りなさい。21時と言うのは例外的に遅い時間なんだから」
そう云われて、ハーイと三人は言って顔を見合わせて笑った。
その時だった鈴和はその教師の守護霊が何か言いたそうにしているのを鈴和は見逃さなかった。
『どうしたの?私に何か言いたい事があるの?』
その問いかけに守護霊は『聞いて下さい!』
そう言って鈴和に語り掛けてきたのだった。
その守護霊は若い女性の守護霊で何でもこの教師の先祖に当たるのだが若くして病気で亡くなってしまった人だという事だった。
「わたし、知ってるんです!」
「何を?知ってるんですか?」
「この人、生徒さんと他所の生徒さんを交際させてお金を儲けているのです」
「ええ!あの先生が?」
そう驚いたのはサツキだった。
「なんで?どうしたの?」
そう訊く三人にサツキは
「だって、あの先生、真面目で固くて有名だったのに……」
「あるんだね~表の顔は真面目でも裏に回ると……ってねえ!」
康子は何故か嬉しそうに笑いながら言う。
言うまでも無いが、守護霊と鈴和のやりとりは、サツキがテレパシーで他の二人に伝えている。
「あの先生は確か「現代経済研究会」の顧問だよ確か」
サツキはそう言って遠ざかる教師を眺めていた。
歩いて行く方向からして、部室の方に行くのだと思った。
顧問が生徒に交際の斡旋をしてお金を儲けて居る……デートクラブじゃん!
サツキはそう思うのだった。
これは鈴和にも組織にも本当に協力して貰わねば……そう思うサツキだった。
その後、4人はサツキの案内で色々と訊き廻ったが新しい情報は見つからなかった。
ただ、行方不明になった経緯は判った。
それによると、アンケートを校舎の前で採っていた生徒二人はどうやら顔見知りの人物と出会ったそうなのだ。
そして、どうやらその人物に言葉巧みに連れて行かれたか、連れされた、と言う事だった。
鈴和はそれを訊いて、
「ねえ、サツキ、その人物が能力者だという事は無いかしら?」
そう陽の暮れ掛かっているサツキのクラスの教室で鈴和はサツキに尋ねてみた。
「あるかも知れない。だって、傍にいた人もいつの間にか消えていた。と言っていたからね」
サツキの言葉を訊いて鈴和は、これはまた、新しい能力者同士の戦いになるのか?
と思うのだった。
「兎に角、明日も放課後はこっちに来る事にしたわ」
そう言う鈴和に美樹と康子は
「じゃあわたし達も一緒に来るわ」
そう言うと鈴和は
「危ないからって言っても来るのでしょう?」
「それは、そうよ。何だか面白そうじゃない」
それを聞いて鈴和は嬉しくもあり、心配でもあるのだった。




