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超能力高校生はパフェがお好き  作者: まんぼう
第3章 デートクラブにご用心
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異世界から来た子供

今から14年前の事だった。

上郷陽子は娘の鈴和を連れて買い物から帰って来る途中だった。

何時も鈴和が遊んでいる近所の公園の前を通りかかった処、公園のベンチに見慣れない男の子が座っているのを発見した。

見慣れない子だと思い、陽子は鈴和を連れてその男の子の所に行ってみた。


傍に行くと、その子も気がついた様だが陽子が「ボクどうしたの? お母さんは?」

と訪ねても何も言わなかった。

見ると男の子は3歳ぐらいであり、色が白く顔立ちはハーフかクオーターを思わせるものがあった。

陽子は、この子は外国の子かも知れないと初めは考えた。

だから、言葉が判らないのだと……

だがそれは違っていた。いきなり陽子の脳内に

『あなたは誰ですか?』と問掛けてきたのだ。

「この子は能力者だ!」

陽子はひと目で見抜き、自分も最近使える様になったテレパシーで意志の疎通を行う様にした。

そうしたら娘の鈴和がニコニコ笑って

「お母さん、このお兄ちゃん。違う世界から来たんだって!」

そう言ったのだ。娘のが対応が早かった。


陽子はその男の子を連れて家に帰って来た。

既に来月に控えている第2子の出産に備え、母が実家から来ていた。

「おかえりなさい。あら、その子は?」

母の問に陽子は今迄の事を話した。すると母は

「お父さんにも来て貰いましょう。それから達也さんにも仕事が終わったらなるべく早く帰って来て貰う様に」

そう言われたので、それぞれに連絡をする。

最もテレパシーで思いを送るだけで良いのだが……


ダニングのテーブルに座らせ、ジュースを出してあげる。

鈴和が横に座り、ストローを口に加え「こうやって飲むんだよ」と教え、それを見て同じ様に真似をしてジュースが口に入るとやっと笑顔を見せた。

「良かった……」

とりあえず陽子はそう思うのだった。


落ち着いた男の子に色々と聴いて見る事にした。

勿論会話では無くテレパシーで訊くのだ。

『あなたお名前は?』

『●※□#』

『どういう世界からきたの?』

『人どうしが争っていて恐い世界』

『戦争していたんだ?』

『戦争? わからない』

『あなたの所ではみんな心で話せるの?』

『みんなできる』

『じゃあ言葉は無いの?』

『ある、心で話せない人もいるから』

『じゃあ何か話してみせて』

そう陽子が伝えると少年は何かを口にした

「●※□#▲●※□#▲」

全く何を言ってるのか理解出来なかったし、この世の言葉とは思えなかった。


その後、この頃の組織の会長の陽子の父親や夫の達也が帰って来て、善後策を相談する。

その間、少年は鈴和と仲良く遊んでいた。

どうやら二人はウマが合うらしかった。

その間に陽子は御飯をたべさせたり、色々と世話をしていた。

この時まで判った事は、どうやら少年の世界では能力者同士の戦争が起きており、

能力者があまりにも多く能力を使った為に次元の壁が弱くなり、一部が壊れ、少年はそこに落ちてしまったのだろうと言う事だった。

そしてこの世界に転がり出たと言う訳だった。


「今日はウチに泊まらせるか、でも名前ぐらい訊いておかないとな」

夫の達也がそういうので、陽子は少年に訊いてみた。

『あなたお名前は?』

『●※□#』

『それがお名前なの?』

先ほどと同じ答えだった。

『判らないけど、迷子になったらそう言えと言われた』

『そう』

陽子は達也にその事を伝えると達也は少年の頭をなで

「今日から君は、剛志くんだ!いいね。これからうちで暮らしなさい」

そう言って名前を決めてしまった。

それから、彼はこの上郷の家で育ったのだ……


小学校に入学する時に。櫻井の親戚の神城家が養子を欲しがっていたので、本人納得の上で養子縁組をした。

戸籍などは組織が偽造して誤魔化したのだが、この時に達也は彼の能力を発見したのだ。

いわゆる、「支配」と言う特殊な能力を……

神城家はかなりの資産家だが跡継ぎが居なかった。

当主が病気になった時に剛志と養子縁組をしたのだ。

従って、神城剛志は今でも神城家のお屋敷に住んでいる。

鈴和とは兄妹みたいな関係でもあり、この世界で初めて心を許せた人でもあるのだ。


神城は色々な事を思い出していた。

もう以前の世界の事は殆ど思い出せないが、何時帰れるのだろうか?等とたまに思うが、

きっとこの世界の方が良いと思うハズと考えていた。

今日は神城家に鈴和と康子が遊びに来ている。

鈴和は康子の付き添いと言う感じだ。

神城家には代々仕えている執事の岡さんと家の用事をしてくれる斎藤さんという二人が家を取り仕切っている。

だから、神城としては自分では家の事はあまりしない。

いや、したくてもさせてくれないのだ。

神城家には多くの家作がありマンションも幾つも経営している。

それらは殆ど執事の岡さんが仕切ってくれていて、神城は書類を見て判子を押すだけだ。

彼が不正をしないのは良く判っているし、神城は彼の功績に対して幾つか家作を与えていた。

だから彼もまた大家なのだった。


「鈴和お嬢様、そんなにはしゃぐとお洋服が汚れて仕舞いますよ」

岡さんは優しく鈴和をたしなめる。

「岡さん頼むから、お嬢様だけは止めてくれないかな!なんか背中がこそばゆくて」

そう鈴和が言うと岡さんは

「とんでも無い!世が世であれば、櫻井財閥のお嬢様なのですから」

鈴和はそれは判っていたが、やはり自分はあくまで上郷の人間と言う思いがあった。

「でも斎藤さんの作ってくれるパフェの美味しさはどう鈴和?」

康子がそう鈴和に問い正すと鈴和は

「そりゃ、比べたら他所が可哀想なくらい美味しいわよ」

二人は斎藤さんが作ってくれたパフェを楽しそうに食べている。

その様子を見ながら神城は「自分がこうして行きてこれたのも皆、上郷と櫻井の人々のおかげと思っている。勿論神城のお爺さんにも大変世話になった。だから自分はこの人達の為にも一生懸命に生きて行かなくてはならない」と思うのだった。


束の間の休息はやがて破られる事になる。

事件はすぐそこまでやって来ていた……

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