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能力者の家に生まれて

鈴和れいかはその日も部活を休んでしまった。

彼女は某都立高校の1年生で16歳になったばかりだ。

部活動は「歴史研究会」に属してるのだが、この部活動は文化祭で研究結果を発表するだけで、後は活動らしい活動は行なっていないのだ。

では部員は何をやってるか?

それは只集まってたわいの無い会話に終始しているのだ。

鈴和も暇と時間を持て余してる時は参加するが、今日はとてもそんな時間は無かった。


それは大好きなファミレスのフルーツパフェのタダ券の有効期限が今日一杯だったからだ。

親友の康子と一緒にファミレスを目指しているのだった。

「なんで今日まで忘れていたのよ?」

「だって仕方ないじゃない。財布の奥に仕舞って忘れていたのよ」

「信じられない、それも二人分だよ」

「だから、康子を誘ったんじゃない」

「まあ、それは感謝してるけどね。途中でこの前みたく変なのに引っかからないでよ」

「今日は大丈夫だって見てみないふりをするから」

二人はそんな会話をしながらファミレスに急いでいた。

あまり遅くなると家に帰ってから夕食を食べれなくなるからだ。


ファミレスの入口で声を掛けられた。

「あのう……」

ギクッとする鈴和。

「あ、私今急いでいるから、後でね」

そう言うと急いでファミレスのドアを開けるのだった。

「また、声掛けられたの?」

「うん、でも後にして貰ったから大丈夫だよ」

「ほんとあんた人が良いんだから……」

「へへへ、ごめん!」


二人は鈴和の持って来たパフェのタダ券を出して、それだけでは悪いと思ったのか、

ドリンクバーを一緒に頼んだ。

「やっぱ、タダ券だけって勇気要るよね」

そう言ってお互い笑ってる。

鈴和がコーヒー、康子が紅茶を入れて席に戻るとすぐに二人にパフェが運ばれて来た。

早速鈴和は「いただきま~す」と一口くちに運ぶと

「ああ、幸せ!これがチョコパフェだったら、もう死んでもいいわ」

それを聴いた康子は

「大げさだって!」と鈴和のおでこを軽く指で叩いた。


目の前のパフェを平らげると鈴和は満足そうな顔をして

「チョコパフェだったら三つは平気だな」

そう言ってお腹をさする。

それを見て、康子が眉をひそめて

「よしなって! 天下の女子高生がやる仕草じゃないよ」

そう言ってたしなめる。

「大丈夫! 康子の前だけだから」

鈴和は始め笑っていたが、急に真面目な顔になると

「康子、ゆっくり食べててね。私さっきの約束果たすから」

そう言ったかと思うと焦点の合わない目線になった。

それを見た康子は別段驚くでも無くそのままパフェを食べている。

暫く経って、鈴和が元の状態に戻ると

「御免!済んだから」

「今度は何だったの?」

「うん、大した事じゃ無くて、さっき入口に居たのは女の人の霊でさ、去年交通事故で亡くなったのだけど、この世に残して来た恋人がいないのは何故だろう、と言うから霊視したら、恋人は悲観して自殺していたのよ。自殺すると行く処が違うから判らなかったのよ。それを教えてあげたの」

そう言ってコーヒーを口にする。

「あ、冷めちゃったから又貰って来るわ」

そう言って席を立って熱いコーヒーを入れに行った。

戻って来ると康子は

「そう言うのってさ、一日どれくらいあるの?」

そう聞くと鈴和はちょっと考えて

「そうねえ、平均すると2~3回かな」

「ふううん。結構忙しいねえ」

「それは仕方ないよ。生まれた時からだから」

「もう慣れちゃったって?」

「そうね。諦めかな、普通の人に戻る事を……」


ファミレスの前で康子と別れると鈴和は一路家に向かった。

高校から徒歩で歩くと20分程かかるがこのファミレスは丁度中間点にあるのだった。

住宅街の中でもやや大きめの門のある家に入って行く。

表札には「上郷」としてある。

彼女の名は上郷鈴和と言う訳だ。

「おかえりなさい。あらファミレス寄ってパフェ食べて来たんだ。券無駄にならなくて良かったわね」

出迎えてくれた母親の陽子がそう言う。

「まあ、母さんには何でもバレちゃうからなぁ」

「あら、お父さんだって同じよ。でもお父さんは一々言わないからね。そう言う事」

「晩御飯まで勉強するからね」

「晩御飯はちゃんと食べれるのね」

「入る処違うから」

そう言って笑いながら2階の自分の部屋にはいると弟の信太郎が顔を出した。

「姉さん、ここ教えてくれないかな」

そう言って出したのは中学の英語の教科書だった。

鈴和はそれを丁寧に教えてやる。

「判った!?信ちゃん」

「うん、良く判ったよ、ありがとう!」

そう礼を言うと自分の部屋に戻って行った。

上郷家は両親にこども二人の4人家族なのだ。


夕食の時に鈴和は今日ファミレスで霊に話し掛けられた事を皆の前で話すと、

同じ能力を持っている父親が、適当なアドバイスをしてくれる。

父親、上郷達也は表向きは商事会社の社員だが実は超能力の組織の責任者なのだし、

母親もその組織の幹部なのだ。

ふたりとも凄まじい能力を持っているのだ。

父親の達也は霊能力者でその実力も凄まじい程強い。

おまけに自分の気を自由に操れる事が出来るのだ。

母親の陽子は異次元の世界と自由に行き来出来る力を持っていて、

しかも、その世界ではテレパシーも使えるのだ。

その子供の鈴和は両親程では無いものの、二人と同じ能力を使えるし、若干だがテレパシーとテレポートも使える。まあこの二つは未だ児戯にも等しいのだが……

傍から見るとごく普通の家族にしか見えないし、今の処弟の信太郎には能力の兆しも見えないが父親も成人してからだと聞かされて居るので、特別不安は無いのだったが、実はこの長男の能力こそ、達也達の組織が長年探していた能力だったのだ。

それが知られるのは未だ先の事になるのだ。

今は誰もそれを知らない……

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