第二十一話
後半ネタあり。
――十一月中旬、ホワイトハウス――
「プレジデント、日本は戦争への準備しているようです」
「……そうか、漸くジャップも我々の誘いに乗ってくれたか」
ホプキンスからの報告にルーズベルトはニヤリと笑う。
「しかしアメリカにいるジャップを返してよかったのですか?」
「構わん。それに日本にいた我が同胞が帰ってくるのだ」
ルーズベルトはそう言った。
「……ジャップが東南アジアを占領するようだな?」
ルーズベルトはキングとスチムソンに聞いた。
「イエス。台湾方面に偵察に出したB-17が多数の輸送船団を発見しており、海軍の考えでは開戦後に東南アジアに攻めこむでしょう」
キングはそう言った。
「ふむ……フィリピンは捨て石になるな。マッカーサーからの要請で支援をしてはいるが恐らくは陥落するだろう」
ルーズベルトはそう判断した。
「ではフィリピンの支援を打ち切るのですか?」
「いや、時間稼ぎが必要だから減らして送れ」
ルーズベルトはフィリピンを完全に捨てる事にしたのだ。
「分かりました。そう手配しておきます」
スチムソンは頷いた。
――柱島泊地――
柱島泊地では第一航空艦隊と第一艦隊が出撃していた。
「……頼んだぞ」
通信機能を増強させた聯合艦隊旗艦敷島の艦橋で堀長官は第一艦隊と第一航空艦隊を見送っていた。
対米交渉は既に決裂寸前までになっていた。
しかし、それでも将樹や東條達は改善に見出だそうとしていた。
山本首相自らが行く案があったが流石にそれは見送られた。
「……無理そうやなぁ……」
将樹はこの時、空母赤城に乗艦していた。
その理由はというと……。
「どうかね特務参謀? 改装された赤城の具合は?」
「こ、これは小沢長官」
将樹の前に現れたのは第一航空艦隊司令長官の小沢治三郎中将だった。
「赤城は改装によって搭載機は百機を越えたからな」
赤城は下部の二十サンチ単装砲六門は撤去されて格納庫の広さを確保し、艦を伸ばして機関も新しくされ対空火器も十二.七サンチ高角砲、四十ミリ連装機関砲、二五ミリ三連装対空機銃が設置されたのだ。
なお、常用は零戦三六機、九九式艦爆二七機、九七式艦攻二七機の九十機で補用十二機の全搭載機数は百二機である。
赤城と第一航空戦隊を勤める加賀も改装されていた。
下部の二十サンチ単装砲は撤去され、航空機のスペースを確保し、艦を伸ばして機関も新しくされ最大速度は三十.二ノットを記録。
武装も十二.七連装高角砲、四十ミリ連装機関砲、二五ミリ三連装対空機銃が設置された。
航空機は常用に零戦三六機、九九式艦爆三六機、九七式艦攻三六機で補用十二機である。
「はい。史実より武装と搭載機数も増えていて強力な空母です」
将樹は力強く頷いた。
「ただ沈みにくくなっだけかもしれんな。赤城と加賀は老齢艦だ。気を抜いていれば史実のミッドウェーになるかもしれん」
小沢長官はそう言って並走する空母加賀を見つめた。
「そのために防空巡洋艦に改装した軽巡長良と五十鈴がいます」
第一航空艦隊には防空艦の補給として防空巡洋艦に改装された長良と五十鈴が臨時に配備されていた。
二隻は主砲を全て撤去し、十サンチ連装高角砲に置き換えて二五ミリ三連装対空機銃も増設した。
残念ながら四十ミリ連装機関砲は二隻に乗せる余裕は無かった。
それでも二隻は第一航空艦隊の防空の要でもある。
「……楠木特務参謀のおかげで出来る限りの事は出来たからな」
小沢長官は言った。
「……まだ特務参謀には馴れませんけどね」
将樹はアハハハと笑う。
実は将樹、第一航空艦隊の特務参謀に任命されていたのだ。
――回想――
「俺が聯合艦隊司令長官の任を引き受けたんだ。楠木少佐にもしてもらうからな」
いきなり敷島に呼ばれた将樹は目が笑っていない堀長官にそう言われた。
「謀ったなシ○アッ!!」
「誰が○ャアだ」
将樹のネタに堀長官がツッコミを入れる。
「第一航空艦隊の特務参謀だ。それと少佐に昇進させておく。小沢を出来るだけ補佐をしろ」
「了解です」
将樹は堀長官に敬礼をした。
――回想終了――
「(彗星が完成したら一機ただで貰おうかな。何使うかは上の言葉がヒント……なのか?)」
『いや知らんがなby作者』
少々電波が乱れた。
「今の段階でこちらのアドバンテージは空母の数と君の史実だ。よろしく頼むよ」
「分かりました」
二人は敬礼しあってそこで別れた。
「……そういや桐野は大丈夫やろか……」
将樹はそう呟いて艦尾に向かった。
「オェ〜〜〜」
「……まだ吐いてるし……ってクロエ、桐野の介護しとけ言うたやんか」
海に向かって胃の中身を出している桐野に溜め息を吐きながらもクロエに文句を言う。
「さっきから胃液しか吐いてないから大丈夫よ」
クロエは興味なさそうに言ってメガネをくいっと上に上げる。
「オェ〜〜〜」
「……大丈夫やろか……」
将樹は深い溜め息を吐いた。
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