最終話.創魔終焉 ―そして、始まりへ
紅蓮の空。
崩壊寸前の世界の中心に、二つの光が対峙していた。
一方は、全てを統べる理事長――その正体は世界の根幹に干渉する「創造神アーク=ディアス」。
もう一方は、世界を何度も救い、何度も失い、それでも立ち上がったただの教師――スチュワード・レオン。
天を裂く光の奔流がぶつかるたびに、世界の法則がねじ曲がり、時空が悲鳴を上げた。
時間は千年単位で膨張と収縮を繰り返し、現実と幻想の境界が消えていく。
「――レオン。貴様はなぜ理解しない。
世界は“滅び”によって再構築される。
成長は苦痛の上にのみ成立する。
私は、その理に従っているだけだ。」
理事長――神の声は冷たく、全知を名乗るに相応しい響きを持っていた。
だが、レオンは微笑んだ。
かつての穏やかな教師の笑みで。
「……お前の言う“理”に、涙を流す子どもはいるのか?」
神の眉が動く。
「俺は教師だ。
子どもたちの可能性を“痛み”で閉ざすことはしない。
――未来は、信じる力でこそ開くんだ。」
次の瞬間、レオンの魔力が爆発した。
世界の基盤そのものが震え、空が七色に砕け散る。
「全構築式展開――《無限術理》!」
炎が竜となり、雷が剣となり、氷が翼を生やす。
すべての属性魔法が融合し、“原初の魔法”として形を成した。
それはかつて神々ですら扱えなかった概念――存在改変魔法。
アーク=ディアスが叫ぶ。
「貴様……人の身で“根源魔法”に触れたか!」
「……俺は、もう“人”じゃないさ。」
レオンの背後に、無数の光が現れた。
それは、かつての教え子たち――レン、リアム、そして名もなき生徒たちの魂。
彼らの意志が一つに溶け合い、レオンの体に宿る。
教師と生徒、魂の絆が“真の魔導師”を形作っていく。
「――《魔導極式・創世還理》!!!」
天地が反転した。
神の力が押し返され、創造の光が闇に呑まれる。
空が崩壊し、世界そのものが一瞬“無”になる。
だが、無の中から新たな光が生まれた。
レンの声が響く。
『先生、もう……十分です。』
リアムの声も重なる。
『あなたが繋いだ光は、俺たちが受け継ぐ。』
レオンは静かに笑った。
「……そうか。なら、これでいい。」
彼は両手を天に掲げる。
指先から放たれた光が、崩壊した世界の欠片を一つひとつ再構築していく。
大地、海、風、空――新たな秩序が生まれていく。
その中心で、レオンの身体が徐々に透けていく。
「先生――!」
レンとリアムの声が響くが、レオンは微笑んで首を振る。
「俺は……お前たちに、未来を託した。
もう十分だ。教師として、これ以上の幸せはない。」
最後の瞬間、彼は空に手を伸ばす。
「ありがとう。……生徒たち。」
その声と共に、レオンの身体は光となって消えた。
残されたのは、静かな風と、新しい朝日だけだった。
⸻
―そして、千年後。
人々は再び魔法を学び、世界は平和を取り戻していた。
魔法学校の中央塔には、一つの銘が刻まれている。
> 『魔導師スチュワード・レオン。
> 彼は世界を導き、再び創った。
> その教え、今も続く。』
空には、虹のような魔力の流れが残っている。
それはまるで――教師が今も、生徒たちを見守っているかのように。 《終》




