24.輪廻断絶 ―真なる魔導師、復誕
世界は、赤黒い光に覆われていた。
天も、魔も、地上も――すべてが焼け落ち、静寂だけが残る。
魔王レオン=ディザイアの魔力は、既に理を超えていた。
天界軍、魔界軍、そしてリアムを中心とした連盟軍。
その全てが彼の放つ“世界律”の奔流に呑まれていく。
「……先生、どうして……!」
リアムは最後の力で防御障壁を張る。だが、その結界は一瞬で崩壊した。
彼の胸に、レオンの掌が突き刺さる。
「すまない、リアム。これは……終わらせるためだ。」
レオンの掌から光が流れ出し、リアムの身体が崩壊していく。
彼の全魔力、そして継承されていた“レオンの力”が逆流し、再びレオンの中へと還っていく。
雷鳴のような轟音が世界を揺らす。
黒と白、光と闇――あらゆる魔力がレオンの体に収束していく。
そして――
「我が名は……スチュワード・レオン。
世界唯一にして、最初の魔導師――」
その瞬間、天地が再構築される。
レオンの背後には、数百万枚の魔法陣が出現し、時間そのものが巻き戻り始めた。
だが、その内側で何かが蠢いた。
レオンの瞳の奥、黒い影が揺らぐ。
彼の肉体に宿っていた“邪悪な何か”が、もはや隠れることをやめたのだ。
「フフフ……ようやく気づいたか、我が器よ。」
影が形を成し、黒い人影が浮かび上がる。
“それ”は、レオンが倒したはずの存在――世界の深層に潜む「虚界の王」。
「貴様が滅ぼした世界、その意志こそ我だ。
お前は私の器として生まれ、教師などという愚行に逃げた。」
「……違う。俺は、教えるために生まれた。
力は、人を殺すためのものじゃない。」
レオンの魔力が逆流し、黒い影を押し返す。
その力は、リアム、レン、かつての生徒たち――彼が導いたすべての者たちの魔力の残滓。
「お前たちの想いが……俺を、立たせる。」
世界が砕け、時が崩壊する直前、レオンは叫んだ。
「――《時環廻帰》!!!」
時が、逆流した。
全ての戦い、死、崩壊、滅びが巻き戻り――あの瞬間へ。
――レンが死ぬ、直前のあの日へ。
レオンは息を呑んだ。
校舎の屋上、沈む夕日、泣きながら倒れた教え子。
あの時の光景が、目の前にあった。
「……レン。」
涙が零れた。
だが、もう迷いはない。
レオンはレンの体を抱き上げ、空を見上げた。
その瞬間、空が裂け、白い塔が姿を現した。
そこに立つのは――かつての日本魔法学校理事長。
「やはり、戻ってきたか。世界の管理者よ。」
その声には、神のような響きがあった。
「貴様が……全ての元凶だったのか。」
「そうだ。魔法という力を人に与えたのは私。
世界を動かすためには、滅びが必要だったのだ。」
レオンの周囲に、膨大な魔力が渦を巻く。
炎、氷、雷、時、空間――全ての属性が一つに収束し、
彼の右手に巨大な魔法陣が展開された。
「……教師としての最後の授業だ。」
レオンは静かに呟く。
「“神”よ。
教え子を、殺した報いを受けろ。」
理事長の背後で、白光が世界を包み、天が砕ける。
神と魔導師――創造の頂での最終決戦が始まった。




