23.断裂の空 ―天と魔の接触
七日七晩続いた戦いの末、地上は崩壊寸前だった。
リアム率いる「時導連盟」は北方大陸の防衛線を維持していたが、魔界軍の侵攻速度は凄まじく、すでに大地の半分が黒に染まりつつあった。
炎が空を裂き、雷が地を焼く。
人と魔の咆哮が交錯するその中心で、リアムと魔王レオン=ディザイアは遂に対峙していた。
「――先生……!」
「リアム。お前がここまで来るとは思わなかった。」
紅の瞳と蒼の瞳が交錯する。
その瞬間、空気が凍りつき、天地の魔力が悲鳴を上げた。
二人の魔力が激突した瞬間――世界が悲鳴をあげる。
ゴォォォォォォォォォォ――ッ!!!!
空が裂けた。
見上げたリアムの目に映るのは、“もう一つの空”。
そこには、純白の大地、金色の塔、そして羽を持つ存在たちがいた。
――天界。
天界と魔界、そして地上を隔てていた結界が、二人の力によって粉々に砕け散ったのだ。
その瞬間、無数の光が降り注ぐ。
天より舞い降りたのは、白銀の甲冑をまとい、翼を広げた戦士たち。
「我ら、天界第七師団。
神の秩序を守るため、この乱世を終わらせる。」
眩い光の矢が放たれ、魔獣たちを一瞬で灰に変える。
しかし次の瞬間――魔界からも黒き翼の群れが現れた。
「フフ……天が動いたか。ならば、地の底も目覚める時だ。」
魔王の言葉と共に、四天王の背後から闇の裂け目が広がり、そこから翼を裂かれた堕天たちが溢れ出す。
――天使 vs 悪魔。
――秩序 vs 破壊。
世界は三界が交錯する“最終戦域”へと変貌した。
リアムは天界の大天使ミカエルと肩を並べ、レオン=ディザイアは堕天の王アザゼルと共に立つ。
そして、二人の目が一瞬だけ合う。
「……先生、あなたの意志は、まだ……!」
レオンの瞳の奥で、かすかに人の光が揺れた。
その瞬間――天も魔も、互いの戦いを止めた。
空が、悲鳴を上げるように泣いていた。
大地には巨大な裂け目が走り、世界そのものが崩壊寸前にある。
天界最高主“セラフィエル”と、魔界の至王“アザゼル”がそれを見て言う。
『……今、戦えば、この世界は終わる。』
『ならば、一時の休戦だ。』
その言葉と共に、天使も悪魔も武器を下ろした。
リアムは膝をつき、血まみれの拳を握る。
レオンは静かに空を見上げ、どこか遠い目で呟いた。
「……まだ終わらない。これは、始まりに過ぎん。」
その声は、かつて“教師”だった男のものではなかった。
しかし――その瞳の奥には、まだ確かに“レオン”がいた。




