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魔法戦争  作者: ははんぽ
19/25

19.時の欠片 ―封印の下の邂逅

地底訓練区域――

 魔法学校の最深部に存在する、禁域しんいき

 生徒たちが足を踏み入れることは通常許されないが、

 今回は“特例”として、上級教員主導の実戦演習が行われることになった。


 「おかしいよな……。十年前に封印区域ができたって記録はあるけど、誰が封印されたかは未公開なんだ。」

 リアムは壁面に刻まれた古い魔法文字を見つめながら呟いた。

 隣でクロウが肩をすくめる。

 「理事長の命令だろ? まあ、魔法の天才リアム様がいりゃ、何とかなるってことさ。」


 「やめろよ、その呼び方。」

 リアムは苦笑した。だが、胸の奥がざわつく。

 この区域に足を踏み入れた瞬間から、

 **“何かに呼ばれている”**感覚が絶えず彼を締め付けていた。


 地鳴りが走る。

 奥から風とも熱ともつかない魔力の流れが吹き抜けた。

 ミラが息を呑む。

 「この魔力……あり得ない。属性が、すべて混在してる……!」


 その瞬間、リアムの視界に――**“光の棺”**が映った。

 古代の紋章に囲まれ、無数の魔法陣が螺旋状に浮かぶ。

 その中心で、ひとりの男が眠っていた。


 金色の髪。白の外套。

 閉じられた瞳の下で、何千もの術式が脈打つ。


 「……まさか、これが……」

 リアムの喉が凍りつく。

 胸の鼓動が痛いほど早くなり、世界が歪む。


 ――聞こえるか、リアム。


 脳に直接響くような声。

 周囲の音が消え、時間が止まった。

 ミラもクロウも、凍りついたまま動かない。


 「レオン……先生……?」


 ――久しいな。十年ぶり、か。


 リアムの足元に、淡い光が渦を巻く。

 そこに現れたのは、透けるような人影――

 それは確かに、スチュワード・レオンだった。


 微笑みを浮かべたその姿は、かつての映像記録で見たよりもずっと穏やかで、

 けれど、背後に広がる魔力の海は“次元そのもの”を揺らすほどの圧だった。


 「先生……どうして……あなたが……?」

 ――封印の奥で眠っていた。だが、お前が“呼んだ”のだ。

 ――お前の中に宿る“時の欠片”が、私の意識を外へ引き出した。


 リアムは拳を握る。

 「時の……欠片?」

 ――あの時、お前はまだ生まれていなかった。

 ――だが、レンの最期の魔法が……お前を導いたのだ。


 レオンの視線が柔らかくなる。

 「レン……?」

 ――あいつの命の灯が、お前という“未来”に受け継がれた。

 ――だから、お前は時を越えた私に触れられる。


 リアムの瞳に涙が滲む。

 胸の奥が、誰かの痛みで軋むようだった。

 レオンは静かに右手を差し出した。


 ――この世界は、また崩れ始めている。

 ――封印は弱まり、Λの残滓が再構成を始めた。


 「じゃあ、俺が……先生を解放すれば……」

 ――まだ早い。封印を破れば、世界が再び分断される。

 ――だが、私の“意識”を少しだけ、お前に預けよう。


 レオンの手がリアムの胸に触れた瞬間、

 光の奔流が爆ぜた。

 封印の紋章が一瞬、赤く輝き――そして静まる。


 クロウとミラが動き出す。

 「リアム!? 今、何が――!?」

 リアムは振り返る。だが、その瞳はさっきと違っていた。


 淡い金の光が瞳孔に宿り、

 その周囲を“時の魔法陣”がゆっくり回転している。


 「……先生の、力が……俺の中に。」


 空気が震えた。

 リアムの足元に、誰も知らない詠唱文字が浮かび上がる。

 ――“時門・開”。


 その瞬間、彼の周囲の空間が歪み、

 封印区域の全センサーが同時に警告を発した。


 > 【警告:封印区画に異常発生――時属性干渉検知】


 地上では、魔法理事長が立ち上がる。

 「……まさか、あの封印が――!」


 地底では、リアムの声が響く。


 「レオン先生。俺が――あなたを超えてみせる。」


 その誓いとともに、彼の背に“黄金の魔法陣”が展開された。

 それは、かつて世界唯一の魔導師が使った紋章と同じ形だった。

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