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魔法戦争  作者: ははんぽ
17/25

17.試験の日 ―光は再び、少年の掌に

十年。

 世界が最強の魔導師・スチュワード・レオンを封印してから、ちょうど十年が経った。


 魔法社会は平穏を取り戻したように見えた。

 しかし、裏では異変が続いている。魔力濃度の不規則な波、制御不能の“異界干渉”、そして十年前には存在しなかった“無詠唱反転”の発現者。

 学術的には説明のつかない現象が、若い世代の魔法師たちの中に現れ始めていた。


 その中で、ただ一人――異常なほどの才能を見せる少年がいた。


 名は、天城リアム(あまぎ・リアム)。

 十五歳。

 日本魔法学校入学試験、史上初の“詠唱なしで三系統中級魔法同時発動”を成功させた天才。


 彼の出身は、山間の孤児院。

 血筋も家系も何も分からない。ただ、幼少期から“魔力の流れを視る”ことができた。

 本人いわく、「世界の中に音がある。それが見えるんだ。」


 試験会場――魔法学校の第一試験区。

 円形の広場に、数百人の受験生が立っている。

 審査官の声が響いた。

 「次、受験番号1072番――天城リアム!」


 その名が呼ばれると、周囲の空気がわずかに震えた。

 彼が一歩前に出た瞬間、まるで空気が吸い込まれるように静まり返る。

 黒髪に金の瞳。

 その瞳は、十年前のあの少年――レン・シノミヤの面影をどこかに宿していた。


 「準備は?」

 「ええ、もう始まってます。」


 審査官が目を見開く。

 リアムの足元から、淡い光の紋章がゆっくりと浮かび上がった。

 詠唱はない。

 彼の呼吸と鼓動だけで、魔法陣が自律的に構築されていく。


 「なっ……! 詠唱が、ない……!」

 「待て、あの構築式は――十年前に封印された“時属性”の流れ……!?」


 広場全体がざわつく中、リアムは小さく息を吐いた。

 「……“刻流クロノ・ストリーム”。」


 光が弾け、風が止まる。

 砂塵の一粒さえも空中で凍りついた。

 審査官たちは息を呑む――世界が、一瞬だけ“止まった”のだ。


 やがて風が戻り、光が消える。

 リアムは静かに立っていた。

 「……試験は、これでいいですか?」

 その声音は淡々としていたが、どこか悲しげでもあった。


 審査官の一人が震える声で言う。

 「天城リアム――合格だ。だが君、今使った魔法……どこで学んだ?」


 リアムは首を傾げた。

 「分かりません。ただ……夢で誰かが教えてくれたんです。

  “お前の中に、時間の欠片がある”って。」


 その瞬間、遠く離れた封印施設の奥――

 時空封印区画L-01。


 沈黙していた光の棺が、かすかに脈動した。

 ほんの一瞬、内部の結界が波打つ。

 封じられたレオンの意識が、微かに動いた。


 (……誰だ……? この波動……まさか……)


 少年が、空を見上げて微笑む。

 彼の瞳の奥に、金色の残光が灯った。

 それはまるで――レン・シノミヤの魂が、再び世界に還ったかのように。

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