14.再誕 ―巻き戻る時、覚醒する師弟
戦いは終わった。
レンの白と黒の光が交錯し、黒塔は沈黙した。
アーク・コードは消滅し、世界は再調律を終えた――
はずだった。
だが、レオンの表情は晴れなかった。
彼の中に広がるのは、静かな確信。
“これでは終わらない”という、未来の残響。
> 「……そうか。これが“結果”か。」
空を見上げると、微細な裂け目があった。
それは、世界時間層のひび割れ――“未来の断層”。
> 「このままじゃ、また繰り返す。
> レンがいくら強くても、この世界の法則が変わらなければ……いずれ同じ結末に辿り着く。」
レオンは静かに手を掲げる。
その指先に、無限の光が集まる。
神位構文第零式――「輪廻逆行」。
それは、世界そのものを“巻き戻す”術。
時間だけでなく、因果そのものを再構築する禁術。
「……やり直すか。
教師としても、魔導師としても。
今度こそ、“誰も死なない世界”を作る。」
レオンの身体が崩れ、光の粒となって空に舞い上がる。
その瞬間、レンの胸の奥で何かが反応した。
> 『先生……?』
> 「心配するな、レン。お前の力はもう完成している。
> これは、俺の“最後の授業”だ。」
レオンの声が、優しく、どこまでも穏やかに響く。
> 「――世界を、再開しよう。」
そして、光が世界を呑み込んだ。
⸻
――気づくと、朝の光が差していた。
窓の外に広がるのは、懐かしい日本魔法学校の景色。
鳥の鳴き声、学生の喧騒。
机の上には、資料と紅茶。
スチュワード・レオンは、目を見開いた。
「……戻ったのか。」
鏡を見る。
そこに映るのは、若き日の自分。
教師として赴任した、最初の年のレオンだった。
だが、違う。
瞳の奥には、神の光――世界を見通す視が宿っていた。
「記憶も力も、全部残ってる……
つまり、これは“再構築後の第一世界”だな。」
彼はゆっくりと立ち上がり、懐かしい教室を歩く。
生徒たちの名簿を開くと、そこには見覚えのある名前があった。
> 「……レン・アークライト。やっぱり、いるのか。」
だが今度のレンは、まだ魔力に目覚めてもいない少年。
純粋で、無垢な眼差しを持つ少年。
レオンは微笑み、呟いた。
「今回は――お前を“最強の鍵”に育てる。」
⸻
その日、1年A組に新任教師が赴任した。
日本魔法学校における新しい風。
> 「今日から君たちの担任を務める、スチュワード・レオンだ。
> 魔法のことなら、なんでも聞いてくれていい。」
教室にざわめきが起こる。
彼の放つ空気は穏やかなのに、どこか底知れぬ重さを感じさせた。
まるで、“世界そのもの”がそこに立っているかのようだった。
窓際の席でレンが首を傾げる。
「……この人、どこかで……」
レオンは軽く笑う。
> 「どうした? 初めて見る顔だろ?」
「……いえ、なんでも。」
レンの胸が熱くなる。
記憶の奥で、かすかな“既視感”が鳴っていた。
レオンもまた、その気配に微笑む。
(……覚えていなくてもいい。
だが、魂は覚えている。
お前がまた戦う時、俺は――必ず隣にいる。)
⸻
その日の放課後、レオンは理事長室を訪れていた。
日本理事長・アマミヤが静かに紅茶を啜る。
> 「久しぶりだな、スチュワード君。いや――まるで初対面のようだが。」
「いえ、全部覚えてますよ。十年前も、今も。」
> 「……君、やはり“やった”のか。」
「ええ。世界を、一度巻き戻しました。」
アマミヤが息を呑む。
レオンは微笑んだまま、手のひらに光を灯す。
その光の中には、かつて死んだはずの生徒たちの影が、確かに生きていた。
> 「今度こそ、正しく導きます。
> 世界を、戦争のない“完全な形”に。」
> 「……それは、神のすることだ。」
「違います。教師のすることです。」
レオンの背後に、黄金の魔法陣が展開する。
それは、再誕した“真魔導師”の証。
⸻
その夜、レオンは屋上で夜空を見上げていた。
静かな風、月光、遠くの笑い声。
「――第二の世界、開始だ。」
彼の瞳に、星々が映る。
世界はやり直された。
しかし、今度の彼は“結果を知る教師”だ。
そして、彼の生徒たちは――
未来で“神すら凌駕する存在”になる運命を秘めている。
レオンはその予感に微笑み、風に呟いた。
> 「レン……今度は、勝とうな。」




