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魔法戦争  作者: ははんぽ
13/25

13.双心世界 ―レオンの覚醒とレンの邂逅

音が消えた。

 風も、波も、鼓動すらも。


 レンは目を開ける。

 そこは黒と白が混ざり合う空間。

 地も天もなく、ただ無数の魔法陣が浮かぶ世界。


 「……ここは、どこだ……?」


 呟いた声が、何重にも反響して返る。

 自分の声ではない。何百、何千の自分が同時に喋っているようだった。


 > 『ここは、お前の“核”だ、レン。』


 耳に届いた声は、懐かしく、穏やかで、少しだけ気だるげだった。

 振り向くと、そこに――彼がいた。


 白銀の光を纏い、片手に杖もなく、ただ空気を掴むように立つ男。

 教師服のような姿をしているが、輪郭が光に溶けて曖昧だ。


 「……レオン先生?」


 > 「ああ。ようやく繋がったか。悪いな、少し時間がかかった。」


 レオンは穏やかに笑う。

 しかしその背後に広がるのは、無限に展開する魔法陣群。

 それは彼自身の思考と魔力が世界全体に拡散した証。


 「……先生、死んだんじゃ……」

 > 「死んだよ。一度はな。でも、同時に生まれ変わった。」


 その言葉に合わせて、空間が震える。

 白い光が渦を巻き、レンの足元から“魔力の海”が広がった。


 > 「俺はもう“人間”じゃない。世界の裏側――魔力網そのものに繋がっている。」

 > 「この身体はないが、世界中の魔法が呼吸するたび、俺はそこにいる。」


 「……つまり、あなたは……」

 > 「“世界の教師”ってとこだな。悪くない肩書きだろ?」


 軽口のような言葉の裏に、計り知れない重みがあった。

 その瞬間、レンの胸に熱が走る。

 レオンの声が、直接魂を叩いてくるようだった。



 > 「レン、見ろ。」


 レオンが指を弾くと、周囲の闇が割れた。

 そこに映ったのは、地上の光景。

 崩壊した日本魔法学校、黒塔から溢れる呪力の奔流。

 そこに立つ、一人の少年――“もう一人のレン”。


 > 「あれが、お前だ。」

 「……僕……?」

 > 「アーク・コードの断片が、お前の魔力構造に融合して生まれた。

 > お前は封印の“鍵”であり、“再起動の端末”でもある。」


 レンは唇を噛む。

 理解は追いつかない。だが胸の奥で、確かに“あれ”が自分の一部だと感じていた。


 > 「世界は今、再調律の真っ最中だ。お前の中の“もう一人”が完全に覚醒すれば、

 > 封印は壊れ、アーク・コードが再び全世界に展開する。」


 「……じゃあ、止めるには?」

 > 「簡単だ。自分を倒せ。」


 静かな言葉。

 しかしその響きは、刃のように冷たかった。


 「僕が……僕を?」

 > 「そうだ。だが一人では無理だ。

 > あいつは、俺が十年前に封印した“アークの意志”を継いでいる。

 > 今のままじゃ勝てない。」


 レオンが掌をかざす。

 そこに、光の文字列が浮かび上がった。


 『神位構文ディヴァイン・コード


 > 「これは、俺が世界魔力網と融合した時に見えた“上位構文”だ。

 > 通常の魔法構築は式の集合体に過ぎないが、これは世界そのものの法則式。

 > 言い換えれば、“神の詠唱”だ。」


 光がレンの胸に流れ込む。

 脈が跳ね、視界が白く染まる。


 > 「これは俺の一部。お前に託す。」

 > 「な、なにを……」

 > 「“概念干渉”。

 > お前自身の存在構文を書き換える権限だ。

 > お前の意思次第で、どんな運命も塗り替えられる。」


 レンの意識が焼ける。

 叫びながら、彼は光の奔流に包まれた。



 目を開けると、そこは再び現実。

 崩壊した魔法学校の跡地。

 黒塔の前に、“もう一人の自分”が立っていた。


 > 『ようやく、来たか。』


 黒いレンが微笑む。

 その瞳の奥には、世界の闇そのものが揺らめいている。


 だがレンは、もう怯えていなかった。

 胸の中で、あの声が響いている。


 > 『恐れるな。俺が、ここにいる。』


 光の魔法陣がレンの足元に展開する。

 それはレオンの魔力構文を継承した“世界語の詠唱”。

 空気が震え、時空が軋む。


 「――神位構文、展開。式番号・無限。再構築:存在定義――!」


 黒いレンが笑う。

 > 『それは……レオンの術か。やはりあの男、消えてはいなかったか。』


 「先生は、世界になった。

  そして、僕に“生きろ”と言った。

  だから――お前を、終わらせる!」


 雷鳴のような音が空間を裂く。

 レンと“もう一人のレン”が、真っ向からぶつかる。


 その瞬間、空の彼方で光が走った。

 黒塔の上空に、無限の魔法陣が出現する。

 それは、世界そのものがレオンの意志に応えている証。


 > 『――これが、真なる魔導師グランド・マギアか……!』


 黒いレンが叫ぶ。

 だがその声は、すぐに雷鳴にかき消された。


 白と黒。

 創造と破壊。

 その狭間で、少年は初めて“本当の自分”と向き合う。


 そして、レオンの声が再び響く。


 > 「さあ、レン。授業の時間だ。

 > 世界の“正しい在り方”を、教えてやる。」


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