ep.8
ソフィーはヴィクトリアのお茶会に招待された。
応接間には令嬢や夫人が10人ほど集まった。人気者の彼女は友人が多い。ヴィクトリアを中心に話が弾む。
「ソフィー、あなた凄く綺麗になったわ」
隣のエミリアが言う。
「そんなことないわ。あなたこそ本当に綺麗よ」
エミリアは艶のある赤い髪を綺麗に結い上げている。とても華やかな人だ。
「誰かいい人ができたの?」
ライアンと婚約はまだしていない。そんな中、ソフィーはライアンのことをどう話すべきか迷った。
「エミリア、あなた大事な話があるんじゃなくて?」
ヴィクトリアがエミリアを促す。
エミリアは立ち上がった。
今日の彼女は笑顔で自信に満ち溢れている。
「皆さん、わたくし、エミリア・クランリーは婚約致しました。お相手はノース伯爵家のライアン・カッセルさんです」
大きくはっきりしたエミリアの声が応接間に響いた。
歓声があがった。皆立ち上がり、お祝いの言葉を述べる。
ソフィーは呆然として固まっていた。
ライアン・カッセルという名前にショックを隠せない。
「ソフィー?」
エミリアがいぶかしむ。ソフィーは慌てて立ち上がった。皆と一緒に笑顔で祝い拍手する。
その反面、頭の中は真っ白で何も考えられなかった。
翌日、新聞にはエミリアとライアンの婚約記事が記載されていた。
昼前にはライアンが訪ねてきた。
「帰ってもらってちょうだい」
ソフィーは泣き腫らした顔を隠して執事に伝える。ベッドにもぐり込み、ぎゅっと目を瞑った。
外からライアンの声が聞こえる。ソフィーを呼んでいた。
ソフィーはカーテンを閉めて耳を塞いだ。それでも声は聞こえ続けた。
請うような声に、思わず会いに行きそうになる。
ソフィーは唇を噛み締めて、必死に自分を抑えていた。
翌日以降もライアンは続けて訪ねてきた。
ソフィーは庭奥のアトリエに鍵をかけ、一人籠もるようになった。




