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偽物の恋人  作者: あお卵
10/15

ep.10

ブライベリーに来て二度目の夏が来た。


 ロージーはよちよち芝生の上を歩く。躓いて転んでしまった。泣くロージーをソフィーは優しく抱き上げた。


「ソフィー。暑くなったから入りましょう」


 日傘をさしたヴィクトリアと彼女の息子のオリバーが待っている。


 ロージーはオリバーと手を繋いで先に屋敷に入っていった。乳母が2人を追いかける。ヴィクトリアが微笑んだ。


「2人は仲良しね。可愛いわ」


 ソフィーは今もヴィクトリア達の領地にある領主館でお世話になっている。ヴィクトリアはソフィーと娘のロージーにとても良くしてくれた。


「ソフィー。ロージーの髪は本当に綺麗ね」


 ロージーの髪は眩しいほどのブロンドだ。ソフィーは黒髪だし、ロージーの父親もそうだった。

 ロージーの髪色が誰に似たのか、ソフィーは見当がつかなかった。



 あくる日、ソフィーは馬車鉄道に乗り、隣のフォーダムの町まで向かった。


 停留所からは徒歩で、フォーダムの地主の屋敷に着いた。地主夫人に頼まれていた絵を持って来たのだ。

 夫人のエラはダニエルの親戚だ。これまで度々顔を合わせてきた。


 ソフィーの描いた風景画をエラに渡す。ソフィーは思いがけず謝礼金をもらってしまった。


 安定して絵が売れるようになったら、ロージーと2人で暮らしていけるかもしれない。ソフィーは淡く期待した。

 ヴィクトリアにいつまでも頼るのは心苦しかった。


 お茶の誘いを丁寧に断り、ロージーのもとに帰ろうとすると、ピーターに引き留められた。


「もう帰るのかいソフィー」


 ピーターはエラの息子だ。


「ええ、ロージーが待っているもの。またね、ピーター」

 

「ソフィーちょっといいかい?」

「なあに?」

「君もこっちに来て二年になるね。伯爵達は親切だけど、世話になるのも気を使うだろう」

「そうね」


[それでずっと考えていたんだが⋯⋯」


 ピーターは頭をかく。


「僕と君が結婚したらどうかなって。僕のことをそんなふうに見てないのは知っているよ。だけど僕なら君に安定した暮らしをさせてあげられる」


 ソフィーはピーターの気持ちにまるで気が付いていなかった。


「ごめんなさい。気持ちは嬉しいけど、貴方とは友達でいたいわ」

「⋯⋯そうか、残念だ」

 ピーターは鼻を擦る。


「気が変わったらいつでも言ってくれ」


 ピーターはいい人だ。でも今はそんな気分になれない。


 遊ばれたと分かっていても、ソフィーはロージーの父親をまだ忘れられなかった。

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