時間は遡って入学式の日③
入学式はつつがなく進行していきました。
校長先生の話は定番のよくある内容だったと思うのだけど、ちょっと紫乃さんのことで上の空だったこともあって覚えてないというか、ちゃんと聞いてないというか…。
式の後に行われた新入生オリエンテーションでは、各委員長たちから学校生活についてレクチャーがあったのですが、上の空から一気に覚醒したのは、図書委員長と副委員長から図書室の利用について説明される時に二人が壇上に上がったときでした。
副委員長は、朝のタイの君、サチコ様(あ、これは私の脳内で勝手につけた名前です)だったのです。
最初に自己紹介があって、サチコ様は清原凪さんというお名前と判明しました。
今から凪様に変更です。でもでも、2年生で副委員長やってるなんて凄い!
その後も凪様はどんな本が好きなんだろうか妄想しているうちにオリエンテーションは終わってしまい、何か大事な情報を聞き逃しているのではないかと不安になりながら教室に戻りました。
教室に戻って席に着くと、紫乃さんはまだ戻ってきていませんでした。
トイレかなぁなんて思っていると、ふとあることに気づきました。
紫乃さんの机上に置いてあった自作小説のノートがないのです。入学式のためにアリーナに移動するときは出しっぱなしだったはず。
私のそんな思考を切り裂くように、教室前方の教卓を囲んで何かしていたグループから奇声があがりました。
「なにこれ、ヤバーイ!」
「高校生でこれはキモイでしょ!?」
とか、ギャーギャー騒いでます。
その中には嫌な予感を感じた意地悪そうな2人の顔も…。
これは紫乃さんの小説を勝手に見て、悪質な喜びかたをしているのでは…。
確かめないとと思い、恐る恐る教卓に近づき、教卓を囲む生徒の隙間から覗き込んでみると、そこには予想通り紫乃さんのノートが乱雑に開かれていました。
最悪だよ、この教室に正義はないのか!と心がカッと熱くなりました。
でも影薄の私に何ができるのだろうとウジウジしていると、例の二人がとんでもないことをしようとしているではありませんか。
「ちゃんとキモイってこと、親切に教えてあげないとね。」なんていって、黒板のところにあった赤チョークを持ち、紫乃さんのノートに何か書こうとしています。
あ、これは一線越えちゃうやつだ。
止めなきゃと思いました。
でも、私も影薄からイジメられる対象に格落ち一直線では…。
でも、紫乃さんと友達になればボッチじゃないよね。
ここで何もしなかったら、私は桜宮の3年間を楽しく過ごすことはできないと思う。
高速思考の末、私は脳内で叫びました。
はしれ! はしれ! 私の正義感!!
「そういうの、やめたほうがいいよ…。」
か細い、私の渾身の注意の言葉に、賑わいが静寂に変わっていきます。
投稿を再開しました。
しばらく間がいてしまい申し訳ありませんでした。