時間は遡って入学式の日②
紫乃さんは、紫乃さんはというと…ちっちゃかった。
座ってるから正確にはわからないけど、140cmくらいかも。それでいてムチムチしていた。太ってるわけじゃなくてムチムチしてるんだよなぁ。
なんというか世の殿方の庇護欲をそそりそうな、マスコットキャラにしたいような。そんな見た目で一心不乱にノートに何かを書いていました。
集中しているみたいだから声掛けづらくて、そのままお隣に着席してしまいました。
うーん、ファーストコンタクト失敗。
何を書いているのか気になってしまい、横目でチラチラと紫乃さんのノートを盗み見ていると、文章を書いていたのを止めて、イラストを文章に添え始めました。
決して上手くないのですが、その独特のコスチュームから私は確信しました!
これは『魔法少女』です!
え、魔法少女ものの自作小説をイラスト付きで書いてるの!?
まぁ私も未だに日曜朝の魔法少女枠はチェックしてたりするので人のことは言えませんが、その行為は危険ですよ、紫乃さん!
入学初日に魔法少女自作小説を一心不乱に書く人を、クラスのヒエラルキー高めの人たちが見逃すはずないもの…。
どうしよう、どうしようと思い悩んでいるうちに先生が入ってきちゃいました。
先生の自己紹介とか正直全然頭に入ってきません。
そうこうするうちに、紫乃さんはイラストを描き上げて満足げに顔をあげ、先生の話に耳を傾け始めました。私も聞かなきゃ…。
今後の説明を終えた先生は、恒例のアレを提案してきました。
「それでは、皆さんにも自己紹介してもらいましょう。順番に名前と趣味をみんなに紹介してください。他にも自己PRしたいことがあれば付け加えていいですからね。」
さぁ、避けては通れない第一の試練ですよ、ここは無難に悪目立ちしないように乗り越えないと…。
ほとんどの人は名前と趣味と「よろしくお願いします」しか言わないのでテンポよく私に回ってきてしまいました。
「菅原紗良です。趣味は読書です。よろしくお願いします。」
パラパラと拍手があり、無事に無難な私をアピールできました。
しばらくして紫乃さんの番が回ってきました。平然と立ち上がる紫乃さんの横で鼓動を速める私がいました。それにしても、ちっちゃカワイイ。
「藤原紫乃です。趣味は魔法少女アニメの視聴と魔法少女ものの小説の執筆です。」
そして、そのまま座った…。拍手はない…。
皆さん、私の横に勇者がいます!我が道を堂々と進もうとする紫乃さんに私の心はしびれましたとも。
でも私は見逃しませんでした。意地悪そうな顔のイケてそうな女子二人が、ニヤニヤしながら目配せしているのを…。
時間とれたので今日も更新できました。昨日の後書きから変更になってすいません。
次の更新は日曜日の予定です。
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