第19話『文化祭デート』
俺と花輪囲さんと一緒に、文化祭を回ることになった。
お化け屋敷や軽音部の演奏を聴いたり、放送部の映画を視たり、いろいろ回った。それから俺達は花輪囲さんと屋台でジュース、焼きそば、フランクフルトを購入し、校庭の石段に座った。
缶ジュースを飲み。俺はホッと一息する。
「フランクフルトにケチャップをつけてあげるね」
「うん、ありがとう」
花輪囲さんはフランクフルトにケチャップをつけてくれた。
「はい、あーん、して」
「え?」
花輪囲さんが、俺の口に向けて、フランクフルトを食べさせようとした。
「ほら、食べてよ」
「自分で食べるよ! 花輪囲さん!」
なんか恥ずかしいよ。
「嫌なの?」
「嫌じゃないけど、嫌です」
「どっち?」
ええッ!? なんか、花輪囲さんが怖いんだが。
「……食べます」
なすがまま、俺はフランクフルトを食べさせられた。
フランクフルトは美味しい。けど、なんか悔しい。
彼女は俺の反応が面白かったのか。
「八雲くん、可愛いぃ~」
花輪囲さんは、笑いながら、俺の頬をツンツンする。
「花輪囲さんの方が可愛いですけどね」
「え?」
彼女は目を見開き、驚く。
桜色の長い髪、青い瞳、雪のような白い肌。やっぱ、綺麗だし可愛い。
「花輪囲さんの方が、可愛いですよ。ハグしたくなるほど、可愛いです」
「ひゃあぁ――ッ!!!」
花輪囲さんは、足をバタバタにしながら、両手で顔を隠す。
いいリアクションだ。本当にハグしたくなる。
「……ご飯、1億杯いける」
彼女はそんな事をいいながら、両手の隙間から、俺を覗き見る。
「1億杯とか、食べ過ぎだよ。花輪囲さん」
俺は思わず吹き出した。なんというか、花輪囲さんは面白いな、と思う。
「もう! 八雲くんの、すけこまし!」
「すけこましって何ですか?」
「ググって下さい」
「わかった。ググる」
俺はポケットから『スマグリ』を取り出し、操作する。
「今、調べなくていいよ!」
彼女は、俺の『スマグリ』を取り上げる。
「返してください」
「後で、調べてね?」
「わかりました」
そう言うと、彼女は俺に『スマグリ』を返してくれた。
「ねぇ、八雲くん」
「何でしょう?」
「八雲くんの事、空音くんって呼んでいい?」
「いいですよ。そのかわり、花輪囲さんを優美ちゃんって呼んでいいですか?」
「!!!」
彼女は驚き、顔が赤くなる。
「優美ちゃん、いいですか?」
「!!!」
彼女は、顔も耳も、真っ赤になり、口が、おちょぼ口になる。
「優美ちゃん」
「は、はい……!」
どうしよう、優美ちゃんが可愛すぎる。
俺は彼女の手に、触れ、掴む。
ああ、柔らかい。
「そ、空音くん!」
「優美ちゃん、俺は、その」
「……!!」
ここで、告白するのはマズいよな。俺は、周囲を見た。
うん、俺達を見ている生徒達がいる。
俺は、諦め。
「あのさ、優美ちゃん」
「うん」
俺は、優美ちゃんが買った缶ジュースを手に取り、彼女の頬に当てる。
「ひゃっ!」
「仕返し、成功!」
俺はわざとらしく、意地悪な表情を作る。
「ちょ、空音くん!」
優美ちゃんは、驚く。それから、何が起きたのか理解したようだ。
「酷いよ! 空音くん!」
「ははは、やられたら、やり返すよ、俺は」
俺は、彼女の缶ジュースをプルタブをおこし、開け、優美ちゃんに渡す。
「もう……」
優美ちゃんは、頬を膨らませ、缶ジュースを受け取る。
なんだろう。この甘酸っぱい青春は。
恥ずかしいけど、ワクワクする。
てか、これってデートなんだろか?
「優美ちゃん、文化祭を楽しもう!」
彼女に笑顔を向けると。
優美ちゃんは、花のような愛らしい笑顔で。
「うん、楽しもう!」
まだ、回っていない所がある。
俺と優美ちゃんが立ち上がった時だった――
どこからともなく、叫び声が聞こえた。