第5話『魔王試験』
《視点 空真》
夏が終わりそうであった。修行が終わり。
俺は、今日、魔王試験を受ける事になった。
そして、試験会場である闘技場へ。
コロッセオみたいは建物である。石でできた円形状の建物だ。
名前は『コロセオ』
うん、コロッセオだよな?
待合室でルピナス、ビナ、エレビ魔王と一緒にいた。
「大丈夫? お腹とか痛くない?」
ルピナスが心配してくれた。
「マスターなら、大丈夫だよ~」
ビナはスナック菓子をパリパリ食べる。
ルピナスとビナは参加できない。俺、1人で戦わなくてはならない。
エレビ魔王が俺の肩を叩く。
「いいか、空真。本気で戦いなさい。下手に手加減するようなマネなしない事じゃ」
「わかりました」
エレビ魔王のアドバイスを聞き、俺は頷く。
エレビ魔王はエロじじいだが、優しい。俺を魔王候補にしてくれただけじゃなく、修行までつけてくれた。ものすごく、感謝している。
そして、闘技場の中心に向かう。観客席には多くの魔人で大賑わいであった。
ウキウキワクワクする者や、魔王が勝つだろうと賭けている者、少数だろうが、もしかしたら人間である俺が勝つだろうと期待する者まで、様々である。
すごく緊張するが、頑張るしかない。
「ほお、お主が空真とやらか」
見た目、20代男性に見える、超絶美形な魔王がいた。
美しい水色の長い髪と、海のような青い瞳。紫色のローブの中は、水着の海パンであった。
エレビ魔王にも負けず劣らず、鍛え上げられた肉体美。
ラブリーな杖と、女性用と覚しき、サンダルを履いている。
ツッコミをいれたい箇所はあるが、我慢だ。
「あなたは、ウオルス・ドラゴンニス・ラゴスさんですか?」
「左様だ。エレビ魔王様に頼まれて、試験官となった」
「そうでしたか」
確か、水竜王の魔王だったな。
人の姿をしているが、上位のドラゴンで、いつでもドラゴンモードに切り替える事ができる。
属性が闇と水属性。
水を自在に操り、殺傷能力のある魔術を多数所持している。闇属性の状態異常魔法が多くを扱えるし、死の宣告がやっかいだ。それと、もっとも厄介なのが、魔術無効である。
この術を受けてしまったら、解けるまで魔術が扱えない。
「この杖いいだろ? 可愛いだろう? これは妹からもらったプレゼントなんだ。最高だ!! このサンダルもだ。可愛いだろ? 最高に優しい妹なのだ!!」
「そうなんですか」
「リアクション薄いな……」
「あの、試合を始めませんか?」
「そうだな。では、試合を始めよう。では、位置につけ」
俺は位置につく。
「試験、始め!!」
「《ディススペル(魔術無効Ⅶ)》」
俺の体が黒いオーラに包まれる。
やはり使って来たか。だが、俺には効かない。
なぜなら、魔術無効を無効にするネックレスをつけているからだ。
それに、死の宣告を防ぐ指輪も装備している。
そう、エレビ魔王にもらったからだ。
「ちッ! やはり、装備しているか」
ウオルスは舌打ちし、早くも、俺が装備していると気づいたみたいだ。
「《魔法防御力上昇》《魔法攻撃力上昇》《敏捷性上昇》《状態異常無効》――」
俺は様々なバフを自分にかけていく。
「《ウォータードラゴンストーム(水竜嵐Ⅶ)》」
100体に及ぶ水の竜が俺に向かって、襲ってくる。
「《マジックシールド(魔法の盾Ⅶ)》」
俺は魔法の盾で水竜嵐を防いでいく。
「人間よ、魔法の盾Ⅶを習得しているとは、なかなかやるじゃないか」
「《ホーリーバレット(聖なる弾Ⅴ)》」
200発に及ぶ、光の弾丸がウオルスを襲う。
「素晴らしいな」
ウオルスは難なく魔法の盾で防ぐ。
「《ユウドウダンドウミサイル(誘導弾道ミサイルⅤ)》」
3発のミサイルがウオルスを襲う。
ビナが最近、開発した魔術だ。
現代兵器はどうだ?
誘導なので、よけるのは、困難だろう。
見事、命中。
「な、なかなかやるじゃないか」
よし、たたみかけるぞ。
「《ホーリードラゴンブルーフレイム(聖なる竜の蒼炎Ⅶ)》」
セイラとルピナスの魔術をミックスさせた攻撃だ。
「!!」
巨大な竜が蒼い光のブレスをウオルスに向けて吐く。
ウオルスは魔法の盾で防ごうとしたが、盾も燃え上がる。
ウオルスのローブに火がつく。
「くそ! ローブが!!」
ウオルスはローブを引き剥がし、地面に放り投げる。
火属性は相性が悪いが、光属性も含まれているので、受ければダメージが入るだろう。
「《ホーリーフレイムドラゴンレイン(聖なる蒼炎竜の雨Ⅷ)》」
光と蒼い炎の包まれた竜が雨のように降り出す。
雨が止むと、そこには。
ドラゴンモードになった、ウオルスがいた。
「グオオオオオオオオオオオオ――――――ッッツ!!」