第4話『聖天使学校』
《視点 彩良音》
私、八雲彩良音は天界である、ラーエルにある聖天使学校に入学し、授業を受けていた。
天界は春と夏の期間が長く。秋と冬の期間は短い。
もうすぐ、夏が終わりそうであった。地上世界も夏が終わろうとしていた。
今日の授業はボランティア活動である。聖天使学校の近くにある公園の清掃をしている。
私達は、運動着姿で、バケツと掃除用トングを持ち歩く。
「彩良音ちゃん。そっちにゴミ、落ちてる?」
友人のエリナス聞いてくる。
「いや、落ちてないね」
さすがは天界、公園も綺麗だ。ゴミのようなモノは一切、落ちていない。
「ねぇ、エリナス」
「ん? なあに?」
ああ、可愛いな。エリナスは。
綺麗な金髪に緑色の瞳。雪のように白い肌。
まさに天使。まるで漫画から飛び出てきたような美少女である。
「好きな人とかいる?」
「いるよ~」
エリナスは頬を赤らめ、頷く。
「コリウスでしょ?」
「なっ! 何で知ってるの!?」
エリナスはトングとバケツを落とし。目を大きく見開き、大きい声を出す。
「授業中よく、よくコリウスを見てたから」
そうエリナスは、よくコリウスという美少年を授業中、チラチラ、彼を見ていた。
「うう、バレちゃったか……」
エリナスは恥ずかしそうに、もじもじ、し始める。
可愛いなぁと思う。ハグしたくなる気持ちをぐっとこらえ。
「ふふふ、私、エリナスの事、好きだから、応援するからね」
そう言うと、エリナスは顔を上げ、パアッと明るくなり。
「ありがとう!」
満面の笑顔に私は癒やされた。
聖天使学校では、世のため人のためになる天使を作る。地上世界の知識や、人間にどういう風に支援すればいいのか、どうしたら地球をよりよくするかなど、いろいろと学ぶ。正直、天界は住み心地がいい。天使も神様もいるのだが、みんないい天使だし、 神様も気軽に話せるほど、親しみやすい。
ボランティア活動の授業が終わると、校長先生があらわれた。
白髪のお婆ちゃん先生である。優しくて、とても評判のいい校長先生らしい。
「ちょっと、お話があるので、授業が終わり次第、校長室に来てください」
「はい」
なんだろう? 校長先生が、わざわざ呼び出すなんて。
校長室に到着し、ノック。
「どうぞ」という声が聞こえた。
「失礼します」
中に入る。
「イスに座っていいですよ?」
「はい」
私は言われたとおり、イスに座る。
「八雲さんに、お話したい事があります」
「何でしょう?」
「実は、あなたを天使になる資格を与えようと思っています」
「え? 聖天使学校を卒業しないと、天使になれないんじゃ、ないんですか?」
「本来は、そうです。ですが、八雲空音さんには、大きな借りがあります」
「借りですか?」
「町田市魔神襲撃事件で、彼は町田市にいる住民だけじゃなく、天使や神様を助けた事や、魔神の封印した功績があるのです。我々は、彼が困ったら恩返しをする用意があります」
町田市魔神襲撃事件って、10年以上前に起きた、大きな事件だっけ?
空音お兄さんの記憶を探った。おぼろげだけど、なんとなく理解できる。
かなり被害が大きく、災厄級といっても過言じゃない、怖ろしい事件だったようだ。
当時、小学生だった空音お兄さんが、ルピナスさんと力を合わせ、魔神の封印に成功した。
いわば、空音お兄さんは英雄的存在だ。各方面に謝礼されても、おかしくない。
「……なるほど」
「彩良音様は天使にふさわしいと上から判断されたのです。天使になる手続きの準備が整いました。ぜひとも、彩良音さんに、天使になってもらいます」
「直接、空音のお兄さんを天使にした方がいいのでは?」
「実は、彼には大いなる進化を促すため、あえて、あなたを天使化させるのです」
「と、いうと?」
「そうですね。八雲空真さんが魔王化しそうです。そして、彩良音さんが天使化すれば、お兄さんである空音さんが、大いなる進化を遂げるでしょう」
「大いなる進化ですか?」
「実は、魔神の封印が解けようとしています。このままだと、いずれ暴れ出す恐れがあります」
それって、非常にマズいんじゃないだろうか?
どうにか、できないの?
「再封印はできないですか?」
「再封印はしていますが、時間稼ぎにしかなりません。魔神は強く、時間がたてばたつほど強くなります。いずれ限界がくるでしょう」
私が思う以上に魔神というのは厄介な存在なのかもしれない。この事をセイラさんや、空音お兄さんに伝えるべきだろう。
「わかりました。その事は、空音お兄さんに伝えても、いいですか?」
「はい、ぜひともお伝えください」