第3話『空真の修行』
次の日から、俺は修行を受ける事になった。
「お主は、分体として、生まれて来たばかり。まずは、基礎的な運動をすべきじゃ」
エレビ魔王様が、腕を組み、話す。
俺やビナ、ルピナス、エレビ魔王様はジャージを身につけていた。
「なるほど。何事も、基礎が大事ですよね」
「そうじゃ」
「準備運動した後、ワシの城下町を一周してもらうぞ」
「どれくらいの距離なんですか?」
「12キロメートルはあるかな~」
「マジかよ!?」
「わたしも、走るわ。頑張りましょ」
ルピナスは笑顔で俺を励ます。ルピナスさんが、そう言うなら、頑張らなくちゃだな。
「ああ、頑張ろう」
準備運動した後。俺達は、魔王城の門から出る。
走ってみてわかった。俺の肉体はスゴイ。
マラソン選手並みの、スピードで走っても、苦しくないのだ。
それから、ラジオ体操のような準備運動をし、その後、城内にある筋トレ室でエアロバイクで30分こいだり、チェストプレスなど、様々なマシンを使ったり、ダンベルを使って鍛えたりと、まるでジム通いのお兄さんのようなメニューである。
そして、室内プールで、クロールで1時間泳ぎ、お風呂に入る。
「ふぅ~……」
俺がお風呂で汗と疲れを落としていると。
見知った男性が入る。
「エレビ魔王様……」
エレビ魔王は、爺さんと思えないほど、筋肉でバキバキだった。
お爺さんとは、思えないほど、若々しい肉体美だ。
エレビ魔王は桶で湯をすくい、体に浴びせる。
そして、ゆっくりと浴槽に入る。
「……」
「……」
しばし、無言になる。
俺から話すべきか?
「どうじゃ、修行は?」
お、そっちから話かけてくれたか。
「そうですね。ちょっと楽しいです」
「ちょっと、楽しいか。もっと、キツいメニューの方がいいのぉ」
「すいません。今日のぐらいで、十分です」
「ホホホ、素直じゃの」
エレビ魔王は、ケラケラ笑う。
「厳しい事をいうが、そんな調子では魔王には勝てんぞ? 確か、お主は短期間で魔王になりたいんじゃないのかの? そうじゃとしたら、もっと向上心がないと難しいのじゃよ?」
「そうですね。でしたら、今日の二倍のトレーニングで大丈夫です」
「ふむ、もっと頑張りなさい」
エレビ魔王は苦笑し、俺を鼓舞する。
「その、ルピナスちゃんは。どんな物が欲しいのかの?」
エロじじいめ。
無視するわけにはいかない。俺は記憶を掘り出す。
「そうですね、編み物や小物が好きですよ?」
「ふむ、可愛いのぉ~。ぜひとも、ワシにマフラーなどを作って欲しいのぉ~。よし、城下町で毛糸を探すかのぉ~」
エレビ魔王は、ニヤニヤしながら、妄想している。
正直、気持ち悪いが。まあ、しょうがない。
下手に、横やりを入れると、不機嫌になるだろう。
せっかく、修行に付き合ってもらっているからな。
空音兄貴は大丈夫だろうが、彩良音は元気にしているだろうか?
『天界・ヘブンワールド』の天使の学校に通い、天使になるのが目的だが。
天使になるには、天使の学校に6年間、通わなくてはならない。
それまで、空音兄貴はSSR以上のキャラを、これ以上、所持できないし、SSR以上キャラのレベルアップができない。それは、空音だけじゃなく、俺や彩良音にとっても、よくないだろう。
俺や彩良音も空音ほど、器がでかくないので、さっさと魔王になって器を強化しないと、命にかかわる。早く、魔王にならなくては。