第20話『準決勝の試合後』
準決勝の試合後。
俺は医務室にいた。
みんなは俺が魔法で回復させたので、傷は治っている。
次郎は眠っている。
強司は軽傷で元気そうだった。
「《ヒール(体力回復Ⅲ)》」
俺は彼に向けて回復魔法をかける。傷はみるみるなくなる。
「ありがとう空音」
「どういたしまして」
「……」
「……」
どうしよう、気まずい。
強司はぷっと吹き出し。
「空音、ちょっとだけ本気だしたね?」
「えーっと、ちょっとじゃないよ、本気だよ」
「1000分の1くらいかな?」
ギクリ。何でわかるんだ?
「まあ、力を隠したい気持ちはわかるよ? でも、もっと力を使ってもいいんじゃないかな?」
強司は優しげに、言う。
「強司も本気を出していないって事?」
「ぼくが本気を出したら、死人が出るよ?」
強司は笑顔で答える。なんというか、ちょっとゾッとした。
「はは、だろうね……」
強司の力は底が見えない。本当は滅茶苦茶、強い気がする。
どうして、本気を出さないのかは謎だが。
それを聞くのも、やぶ蛇だな。
「花輪囲さんの所にいったら?」
花輪囲さんは、大丈夫だが、行って見るか。
「行ってくるね」
花輪囲さんは椅子に座り、モニターを視聴していた。
俺は彼女の隣にある椅子に座る。
「調子はどう?」
「うん、元気よ!!」
「……」
「……」
俺もモニターを視る。
『――チーム眠り姫の勝利』
「決勝の相手は、チーム眠り姫ね」
「確か、全員が3年生のチームなんだよね?」
「そう。全員が3年生」
「チームのリーダーはS級冒険者だっけ?」
「そうよ」
「確か、花輪囲さんのお姉さんだよね?」
「うん。私には長女の真里守。次女の絵里守の2人の姉様がいる」
「お姉さんか……」
「うちの学校には、次女の絵里守お姉様がいる。花輪囲絵里守よ」
「うちの学校で、唯一のS冒険者だよね?」
「そうよ。S級ギルド『青薔薇騎士団』の1人で、彼女はS級冒険者よ」
「高校3先生で、S級冒険者とかヤバいね」
「そうね、お姉様は怪物よ」
「怪物か……」
「八雲くん、手加減しなくてもいいのよ? じゃないと……」
「ん?」
「何でもない……」
花輪囲さんは、何か言いかけたが、止めた。
気になるけど、まあいいか。
読んでくださり、ありがとうございます! 評価してくださると、作者の励みになります!