第6話『セイラの提案』
夜中。みんなが寝静まった頃。
俺は台所の冷蔵庫から麦茶を取り出し、コップに注ぎ、飲んでいた。
「主様」
セイラは台所に入ってきた。どことなく、暗い表情だ。
「セイラか、どうしたんだ?」
「お話があります。よろしいでしょうか?」
「わかった、いいよ」
そして、俺とセイラは居間に移動する。
「なんだ? 話って?」
「わたしは、主様が天使になれないか情報を探っていました」
セイラは神妙な面持ちで話す。彼女も俺のために、いろいろと調べてくれていたのか。なんというか、嬉しい。
「天使か……」
魔王に、悪魔。当然、天使もいるよな。
「天使になるには、天界『ヘブンワールド』に行って、天使学校に行かなくてはなりません」
「ヘブンワールド?」
「天国のような世界です。寿命が尽きて、亡くなると逝く世界です」
「なるほど。やっぱ、そんな世界があるのか。で、天使の学校とかもあるんだな」
「そうです。とても素晴らしい学校らしいですよ? 生徒は天使を目指すわけですから、心が綺麗な方が大半だと聞きました」
彼女は優しげに話す。
「主様なら入学試験に受かるでしょう。6年間、通えばいいのです」
「6年か……」
ちょっと、長いな。
「てか、死後の世界だろ? 肉体を生かしたまま、ヘブンワールドに、いけるのか?」
「はい、それは大丈夫ですよ。上からの許可さえ、あれば、肉体を保持したまま、天界にいけます」
「じゃあ、分体はどうだ? 俺の分体を天界にいかせるのは?」
「そうですね、上に相談してみないと、わかりません」
「おお、頼む。相談してみてくれ」
新たに分体をつくるべきだろう。
天使になるには6年間、かかるのか。
「だが、魔王になるのを優先する」
「それは、本気なのですか!?」
「ああ、マジだぞ、俺は。天使になるまで6年間、通うのもアリだ。だが、それまでお前達をレベル上げできないのは我慢できない」
仮に1年で魔王になれば、5年間もあれば、セイラ、ビナ、ルピナスなどのキャラ達がかなりレベル上げできるし、すごく強くなれる。
それなのに、むざむざ、その時間を無駄にはできないのだ。
ビナの話が正しいなら、最短で5ヶ月で魔王になれるらしい。
6年かけて天使になるか、5ヶ月で魔王になるか。どっちを選ぶかというと、俺の場合、魔王である。
「それにだな、セイラ。まだ、猶予があるはずだ。もっと良い案が見つかるかもしれない。魔王になる以外の方法が。だから、セイラにも協力して欲しいんだ」
セイラは希望を見いだしたのか、明るくなる。
「なるほど! 確かに良い案が見つかるかもしれませんね!」
「ああ、そうだ」
俺は頷く。
魔王の道に進む予定だが、天使になる選択肢も残すべきだろう。
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