第2話『地下世界に行かせたい理由 パート1』
俺の部屋に入ってきたのは。暴食の暗黒王女スライム『ビナ・ヴァイム』のビナである。地雷系メイクに黒と青を基調としたパンクな格好。
見た目は陰キャだが、中身は陽キャ。俺の自宅にいるなら、ノーメイクでもいいと思うのだが。
どうなんだろうな?
「マスタ~」
ビナはすたすたと歩き、俺を後ろから抱きしめる。
「ビナ、どうしたんだ?」
胸があたって幸せだが、側にいるルピナスの黒いオーラが怖い。
「すごく重要なお話があるんだけど、いいかな~?」
なんだ? なんだ? 俺に相談か?
「うん、いいよ~」
そういって、俺はビナの方を向く。
「実はね、『地下世界・アンダーワールド』という世界にマスターをご招待したいんだけど、いいかな~?」
「『地下世界・アンダーワールド』って……何それ?」
地下に何かあるのか?
「日本や世界の地下にね、巨大な地下世界があるの~。そこには、人界領域や魔界領域、悪魔界領域、地獄界領域とか、いろんな領域があるの」
「うわ~、そんなの初耳だ。そんな世界があるのか」
実に興味深い話じゃないか!
「ビナ!!」
「ん? ルピナス様、どうしたの?」
ルピナスは目に止まらぬ早さで、ビナの両肩を掴む。
「どうして、空音に地下世界に行かせようとするのッ!? あそこには、魔物や魔人、悪魔がうじゃうじゃいるのよ!!」
鬼の形相でビナを睨み強い口調で訴える。
「落ち着け!! ルピナス!!」
俺は止めに入る。
だが、ビナは動じない。ルピナスの目を真っ直ぐ見つめる。
「マスターの分体をつくって、その分体を地下世界に連れて行く」
「なぜ?」
「マスターには、魔王になって欲しいの」
「魔王に……」
ルピナスはかたまる。
「え?」
ま、魔王って、ゲームの最後に出てくる、ラスボスの魔王を言ってるのか?
ルピナスは動揺し、くしゃくしゃと顔が歪み、ビナを掴む手を強める。
「ビナ、もはやその方法しかないの??」
「マスターの器に限界の兆しが視える。魔王になれば器が大きくなり容量も増える。魔王になった方が一番、手っ取り早いよ」
「えッ?!」
俺の器が限界?
「どういうことだ? ビナ!」
「マスターは、多くのキャラを所有し、ぼく達みたいな強い存在を所有している。ぼく達は日々、強くなっている、強くなれば強くなるほど、マスターに大きな負担になる。このままじゃ、マスターの肉体、器は限界を超えて、壊れちゃう」
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