第31話『強制転移』
俺は意気揚々と、待合室に向かった。
やはり、セイラの魔術はスゴイ。
南条さんを、あそこまで追い詰めるなんて。
まあ、彼の場合、本気で戦わず、手加減してくれたに違いない。
それでも、格上相手に勝つのは、嬉しいというか。
達成感がある。
帰って来たら、お祝いしたいな。
「あれ?」
待合室に行った。
だが花輪囲さんがいない?
トイレかな?
だが待てど、くらせど、来ない。
俺は『スマートフォン型グリモワール』である『スマグリ』で電話通話をしたが、繋がらなかった。
おかしい……
俺は会場中、探してもいなかった。
それから、会場を抜け出した。
「ここにもいない……」
まさか、奴が!
蛇闇間学か??
俺は急いで次郎に連絡する。
「――花輪囲さんが、いなくなったんだ!!」
「わかった。俺も探す!」
「強司にも連絡してくれ」
「わかった!」
『スマグリ』をポケットにいれ、探す。
路地裏を通った所だった。突然、地面が光り出した。
「!!」
――目を開けると。
そこは、見覚えのない部屋だった。
広大で奥行きのある部屋である。
部屋は明るく、どこか荘厳な作りになっている。部屋を囲むようにマグマが流れている。
部屋の温度は40℃はあるだろう。ものすごい、暑さである。
「お前は……」
そこに立っているのは、178センチぐらいの高さがある男子であった。
闇色の長髪に、爬虫類のような目つき、青白く。蛇を連想させる風貌である。
「おれを知らないのか?」
「蛇闇間学だな」
同じクラスメイトで、花輪囲さんのストーカーの蛇闇間学。
「そうだ」
蛇闇間は花輪囲さんをお姫様抱っこしていた。
花輪囲さんは縛り付けられており、首に首輪がされていた。
「お前、花輪囲さんに、何をしたんだ!!」
「ふん! ただ、縛り付けただけだ!」
「いや! 首輪もつけてるじゃないか!」
「だから、何だ?」
「花輪囲さんを解放するんだ!!」
「嫌だとしたら?」
「これは犯罪だぞ! お前、本当に捕まるぞ!」
「ハイハイ、そうですね」
「お前……」
「てめえに、絶望的な情報を教えよう」
「情報?」
「ここは、第60層だ」
「ろ、60層だと!?」
「そしてこの部屋は60層、階層ボスの部屋だ」
「!!」
「さあ、出てこい! 炎の魔獣ファイアーミノタウロス(大)!!」
すると、床に巨大な魔法円があらわれ、ズズズズと何かが出てくる。
禍々しい2本のツノ、ミノタウロスに炎を纏ったような、赤黒い色の巨躯。
大きな爪には赤く、血の色をしている。射殺しそうな目が俺をとらえる。
「グオオオオオオオオオオオオオオ――!!」
咆哮。ものすごい、魔圧だ。
立っているのがやっと。
「それに、デカい……!!」
5階だてのマンションぐらいの高さがある。
「さあ、戦え。八雲空音」
おいおい、それは無理だ。
鑑定スキルで視たが、レベルが120。
S級冒険者が10人いて、なんとか倒せるほどの強さはあるだろう。
俺は、セイラとビナを外に転送。
「主様、奴が相手ですか?」
セイラが鞘から剣を抜く。
「なんか、デカいのがいる~」
ビナは驚かず楽しそうな様子。
「セイラ! ビナ! 戦うぞ!」
「かしこまいりました!」
「わかった~」
ウネちゃんも戦って欲しいが、ダメだ。相手が強すぎる。
俺は『スマグリ』を操作。
『SRキャラのみんな! 横浜大迷宮でランク上げを、して欲しい――』
『了解!!』
『了解!!』
『了解!!』
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