第27話『蛇闇間学と黒幕の影』
《視点 蛇闇間学》
おれは、衝撃を受けた。
それは、優美ちゃんが八雲空音のメイドになる宣言である。
にわかに信じがたい。
なぜ、彼女が八雲空音に??
正直、羨ましい。彼女を所有物にできるなんて。
おれだったら――
『ご主人様、お紅茶はどうですか?』
『私はご主人様の事が大好きです!』
『ご主人様、どうか私に首輪をつけてください!』
妄想中。
ああ、妄想したら、ヨダレが止まらない。
八雲空音の事だ、きっと優美ちゃんに、あれこれ指図し、己の欲望を押しつけるだろう。
羨ましすぎて、目から血が出そうだ。
俺は優美ちゃんの事を中学生の頃から、好意を抱いている。
第2魔導学校ではなく、第3魔導学校を選んだのは彼女が受験すると知ったからだ。
次郎にはストーカーだの、クズ男だの、罵倒されたが。
相手を愛せば、誰もがストーカーになると思っている。
愛が強ければ強いほど、ストーカーになる確率は上がる。
次郎は、本気で彼女を愛してないから、いつまでたっても友人Aなのだ。
ストーカーになって彼女を愛せば。
彼女はきっと、おれを一生、忘れないでいてくれるだろう。
おれの愛を忘れず身も心も、そして魂にも刻みこむことができる。
八雲空音。
中性的で愛らしい見た目だが、おそらく中身は野蛮人だろう。
彼女を、あんな事やこんな事をして、もて遊ぶに違いない。
このままではマズい。
絶対、助けなくてはならない。
突然、『スマートフォン型グリモワール』の『スマグリ』がブーブーと振動する。
誰だ?
おれは机に置いてある『スマグリ』を手に取る。
「名前がない」
非通知みたいだな。
イタズラ電話か?
それとも、おれへの抗議電話か?
おれは赤の拒否ボタンをタッチし、切る。
だが……
また、振動する。
おれは、仕方なく緑ボタンの応答ボタンをタッチ。
「もしもし」
「こんにちは、蛇闇間学様。八雲空音を消す方法があるのですが、どうですか?」
「!!」
新手の詐欺か??
でも、おれにとって、八雲空音は消えて欲しい存在だ。
「確実に消せる方法があるのですが、いかがですか?」
「……」
「八雲空音はきっと、花輪囲優美を愛玩動物にしますよ?」
「!!」
八雲空音はやはり、野蛮人だったのか!?
「わかった。いくら出せばいい?」
「そうですねぇ~、200万円で、どうでしょう?」
200万円か、200万円で八雲空音を消せるなら、安いな。
「わかった。よろしく頼む」
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