第25話『メイドになった理由』
「――その生徒が花輪囲さんをストーカーしてくるんですね」
どうやら、花輪囲さんにはストーカーがいるみたいだ。
同じクラスメイトの蛇闇間学という男子である。
「そうなの。朝、出ると。電柱の側でその男がいるの。で、同じ学校だから、ついてくるし、 ギルド帰りにも、やっぱり、ついてくる。『キャラトピア』でもよ」
「マジか!!」
筋金入りのストーカーだな。
「毎回、お姉様達が撃退してくれるんだけど、それでもストーカーを止めてくれないの……」
「そうなのか、かなり深刻だな……」
確か、花輪囲さんは『青薔薇騎士団』に所属している。S級ギルドだ。
日本屈指の最強ギルドである。
そんな最強ギルドを敵に回しても、ストーカーするとは、蛇闇間学って、相当、ヤバい奴だな。
「普通はこんな面倒な話に、巻き込まれたくないでしょ? 蛇闇間学は、B級冒険者で、そこそこ強いし、それに滅茶苦茶、粘着質だし」
「う~ん……」
いわんとしてる事はわかる。本当は、巻き込みたくなかったのだろう。
近くにいて、わかったが。
目元にはクマがうっすら見える。
恐怖でまともに、睡眠がとれてないのかもしれない。
精神的に参っているだろう。
「メイドになれば……ずっと一緒にいれば、安全だと思ったの……」
「なるほど……」
なぜ、俺なんだろと思った。俺なんかより強い生徒はいるだろう。
そいつに頼れば、そっちの方が安全だと思うのだが。
例えば、俺の友人である次郎や強司とか。
「空音。助けてあげなさい」
「!」
「困っている人がいるなら、助けるのが八雲家の家訓よ? 空音、できる範囲でいいから、助けてあげなさい」
お母さんは真剣な眼差しで話す。
そうだよな、うちの家訓の一つには『困っている人がいたら、助ける』がある。
「わかった、助ける!!」
「八雲くん……」
「そのかわり、俺のできる範囲でだけど、いいかな?」
「もちろんよ! ありがとう!!」
花輪囲さんは、俺に抱きついてきた。
「か、花輪囲さん! お母さんと妹が見ているから!!」
花輪囲さんは、俺から離れて。
「ご、ごめんなさい……」
「よかったわね。優美ちゃん」
「はい、ママさん!」
花輪囲さんは、笑顔になる。
「お兄ちゃん」
「なんだい、妹よ」
「ごめんなさい。変態って、言って。酷い事、言って」
花純は素直に謝ってくれた。うん、妹よ、君の心は綺麗だ。
「謝ってくれて、ありがとう。許してるから大丈夫だよ」
「うん!」
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