第11話「復活」
迎えたイギリスラウンド。
チームが変わった永野は水を得た魚のようだった。
2位の松下を10秒近く引き離しての圧勝を飾ってみせた。
「…駿…強くなっちゃったな…」
遠くで1番にゴールした永野のマシンはひときわ輝いて見えた。
「駿、やったじゃん。おめでとう。」
「ヒロくんこそ。これでお互いF2で表彰台に上がったね!」
「だな、これで3対1だな。」
「なに、勝負してたの?」
「そりゃあな。」
「じゃあ、また表彰台でね。」
「おう。」
2つの日本国旗が表彰台に上がり、その下に永野と松下が立つ。
多くのモータースポーツファンたちはこの瞬間を望んでいただろう。
「駿、シャンパンの時間だ!」
実はここまで2人同時に表彰台に上がったことはなかった。
そのため、お互いに嬉しくもあった。
シャンパンファイトをした後、お互いにハグをした。
「おめでとう、駿。」
「この調子なら、ヒロくん抜けるかもね」
「なにを〜?」
再び、ボトルの中にあったシャンパンを背中に流し込む。
「ひゃあぁ、冷てぇぇ」
その場でピョンピョン飛び跳ねていた。
表彰式を終えて、一旦自宅に戻ろうと駐車場に向かったとき、後ろから声をかけられた。
「あ、ノア、おつかれ」
「おう、新しいドライバー、すごいな、バケモンだ。」
「へへ、俺と日本で高め合ってきたドライバーだからな。あいつは速いよ。」
「今日だって圧勝だったじゃないか。」
「俺でも追いつけなかったよ。」
「ヒロキでも追いつけないなんて、速すぎるな。」
「話は変わるんだが、新しいハリソン・ジャクソンだっけ?あいつはどうだ?」
「あ〜…あいつはダメだよ。」
「なんかあったのか?」
「わがまま放題のやばいやつだよ。指示も聞かないし。」
レース中も接触寸前のハプニングがあった。
レース12周目、レースも折り返し。
「前のやつは周回遅れ?」
『前のハリソンは周回遅れだ。彼にもお前を行かせるように指示している。』
「了解」
そうして追い抜こうとしたとき、前を走るマシンが自分のラインにかぶせてきたのだ。
「****(自主規制)!危ないぞ!ぶつかるとこだった!何やってるんだ!」
『落ち着いて、落ち着いて。またパス(追い抜き)するタイミングは来る。とりあえず、バックストレートまではそのまま行こう』
「…了解」
ピットインでもひと悶着あった。
『松下を先にピットインさせる。だから、このインラップはプッシュ(攻める)して。』
「了解」
そうしてピットレーンに入ると、先にもう1台が作業していた。
『ステイアウト!ステイアウト!』
「おい!おかしいだろって!俺が先じゃなかったのかよ!」
『こっちも指示したんだがな…勝手に入ってきやがった…』
「まじかよぉ…」
頭を抱える。
「とまぁ、こんな感じかな。」
「結構ワガママ放題だな。そのうち、同士討ちとかあるんじゃない?」
「縁起でもないこと言わないでよ〜」
次はF2のシーズンの中でモンツァサーキットと並ぶハイスピードステージとなるベルギーのスパ・フランコルシャン。
ここで事件が起きてしまう。