最終面
要塞化された小惑星、それが侵略拠点だった。
ただし……まだ工事中らしい。
掘削機械が坑道を進む、見知らぬ機械が反撃してくる。
なんとか右城のナビゲーションで無事に最深部へ到達。
そこで待ち受けていたのは、2面で出会った強襲機だ。
閉鎖空間で、多数の大出力レーザー砲を乱射してくる。
必死に避けつつ背後にまわり、青色のコアを破壊した。
轟沈していく……簡単すぎる。
「これで終わりじゃ無さそうだ」
『 ええ。なんだか、妙です 』
「……妙?」
『 2面ボスは、特徴的なキズや修復痕がありました 』
「……傷?」
『 これです 』
ピ、と小さな電子音。
左下、サブモニターに表示された、2枚の画像。
横目で見て、思わず二度見して、ギョッとした。
『 奇妙なほど一致している、似すぎています 』
確かに、これは似すぎている。
まったく同一の個体に見える。
背筋を、 ゾ ク リ と冷たいものが走った――――
「同型艦じゃない。 ……この短時間で、修理したのか?」
『爆発・四散した巨大な強襲機です。修理できますか?』
オレは、なにか肝心なことを忘れている。
前世の知識ではなく、現実的で、大切な。
この難局を生き残るための知識、情報だ。
だが、今、必要なのは2面ボスの残したエネルギー圧縮装置、その回収だろう。機体を寄せながら、不意に博士の説明を、その後のオペ子の言葉を反芻していた。
見込み違いは生産性。
戦力を補充する余裕。
余裕、と…… 方 法 ?
「思い出したぞ」
『 なにを? 』
「レジスタンスの拠点へ、初めて行った日に聞いた」
『 えっ?! 』
「異星人には、失った戦力を補充する方法があるんだ」
まさか、とは思うが。
『 次、来ますッ! 』
「次? おいおい、おいッ! ……冗談、だろぉ?!」
目の前に降り注ぐ肉塊。
脈動を始めて結合し、いびつな姿を再現していく。
茫然自失で眺めるのは、悪夢をなぞる復活劇……。
それは細胞面を護っていた、グロテスクな生命体。
復活……生産や修復ではなく、復 活 ッ ?!
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2面、4面、5面、1面の拠点防衛兵器を撃破。
続いて転移して来たのは、初めて見る巨大な敵。
絶え間なく撃つ枝分かれする粒子ビーム砲。
凶悪な範囲を焼き尽くす、レーザーの照射。
チャージ時間の隙間を埋める実体弾の乱射。
与ダメージの甚大なユニットを複数パージしていくが、エネルギーコアを残して爆発・四散するのは、燃料不足のこちらにとって好都合だった。
墜としても墜としても、復活してくる……。
それも、終わりの時が近付いているようだ。
今はもう、試作機プリシュティナより一回り大きい程度。
弱点のコアを部分的に覆う、シャッター構造があるだけ。
攻撃は、おもに体当たりという状態。
このまま攻撃を続ければ、墜とせる。
そんな手応えを感じていた――――
「もう一息、あと一撃でッ!」
単調な体当たり攻撃。
衝突寸前で躱し、トリガーを絞る。
最後は、あっけない幕切れだった。
後に残された、たったひとつのアイテム。
それは地球へ帰還するための燃料となる。
回収、何気なく武器選択画面を操作した。
「REWIND……巻き戻し、か?」
ぽつりと独り言が漏れた。
これが、ラスボスの兵器。
過ぎ去った時、取り返しのつかない失敗。
それを巻き戻す、神にも成し得ない科学。
一連の、復活劇の、舞台装置。
『 終わったようですね、脱出を! 』
「外へ繋がる、狭い通路があるはずだ」
『 狭い……戦闘機で通れますか? 』
「基地が連鎖的に爆発していく、やるしかないッ!!」
押し寄せる瓦礫。
追い縋る、爆風。
知っている展開だった。
……が。
「前が見えない?! 聞いてないぞ……こんな展開!」
『 レーダーとソナーは生きてます、表示します! 』
「このワイヤーフレームを頼りに操縦しろだって?!」
『 他になにか方法が? 』
「やるしか、ない……のか」
爆風に煽られて、木の葉のように頼りなく舞う機体。
姿勢を立て直し、前へ前へと進めていく。
それが、数十秒。
ちいさな星空が前方に見えた。
大暴れした操縦桿が軽くなる。
機体が安定を取り戻していく。
宇宙に戻ってきた。
「 抜 け た ッ!!! 」
『 まだです!!! 』
視界に覆い被さる巨大な鉄塊。
頭では理解できた。
気が緩んでしまったのだろう。
身体が反応しない。
右手が、もう、動かなかった。
「畜生…… こ ん な ッ …… 」
そのまま巨大な鉄塊に衝突。
機体は、飛行能力を失った。
ノーミスクリアは、露と消えた――――
生命維持装置の稼働時間も残り少なくなってきた。
それより早く、右城の命は失われてしまうだろう。
「脱出装置すら無いとはな……さすが、レトロゲームの世界だよ」
『宇宙に放り出されても、結果は同じだったと思いますけど?』
「コックピットごと分離するとかさぁ、やりようはあったろ?」
『それは……悪くない案ですね』
「そういうアニメがあったんだ」
今、宇宙にいる人間は、2人だけ。
救助など、期待できるわけがない。
「ところで、右城」
『 あ、はい? 』
「最後に吸収した兵器、REWINDと表示されていた」
『 REWIND? ……巻き戻し 』
「奴等が巻き戻していたのはなんだ?」
『 そう。 ……時間、でしょうか 』
あるいは、自機に向けて撃てるなら。
ボスオンパレードで見た敵の兵器のように、復活したのか?
憶測でしかない。
「オレの勘が正しいなら、イチかバチか試したいことがある」
『 勘、ですか 』
「もうひとつだけ、思い出したことがある」
『 なんです? 』
「女神はオレに転生を薦め、世界を救いに行こうと言った。てっきり一人で来たと思っていた。見た目は随分違うのに、雰囲気は似てる。あの時出逢った転生神に、右城、お前は……奇妙なほど、似すぎてる」
右城は無言だった。





