第七十二話 どこへ?
前回のあらすじ。帝国医療生化学院に赴任した俺。部下を紹介された途端に、見知らぬ部屋へ転移させられた。第四十五皇女を名乗るシアータって幼女の仕業だ。
「えっと。ふむ。……今日からここへ名誉顧問として配属されたヒロアです」
「知ってる。異界人の魂を持つ東の王国民」
「左様ですか。それでシアータ様、私はどうしてここに?」
「セルア姉様やラデス様に接するように話せ。シアータは気にしない」
それは助かるけど、この子、自分のこと名前呼びなのか。皇女らしくないね。
「では仰せのままに。何か御用で?」
「ヒロアのこと、ずっと感じてた。近くに来たから呼んだ」
「はあ……?」
しばらくして血相を変えた特殊遺物運用班の班長のデエマが入ってきて、俺は執務室へと連れ戻された。
デエマは『シアータ様は極秘の任務をされていまして、全て今回のことは口外無用でお願いします』と必死に頼み込んできた。
「あ、うん。誰にも言わないよ」
「名誉顧問がまた呼び出されたら極秘も何もないだろう」
マベがデエマに呆れたように問いかける。デエマ、目を瞑りしばらく考え込んだ後、目を見開き口を開いた。
「分かりました。ヒロア名誉顧問には伝えておきます」
シアータは物質、生き物、何でもランダムで呼び寄せ、またどこへでも送る魔導が使える。
対象がどこにあろうとだ。この惑星にとどまらず、その範囲が未知の異星や異界だということ。
転移魔導との違いは、シアータ自身は移動できないこと。言うなれば“召喚・送還魔導”か。
「一度、異形の怪物を呼んでしまい、この建物が半壊したことがあります」
「うへぇ」
その怪物の姿はおよそ普通の生物とはかけ離れた姿で、未知の力を振るい、破壊の限りを尽くしたそうだ。
帝国虎の子部隊、特務魔導士部隊が総出で鎮圧、それをシアータが送り返したそうだ。
「シアータ様は何か特殊な思考波長を発して、それに感応した存在を呼び寄せます」
「じゃ、本人も何が来るか、はっきりとはわからない、と?」
「その通りです」
「随分とリスキーな魔導だな……。ん? 何で俺?」
「分かりません」
俺はシアータの言ったことを思い出す。
『ずっと感じてた』
俺のことを認識してたわけだ。その辺だけでもはっきりさせておきたいな。
「また急に呼び出されても困るからさ、会いに行くよ。話をしておきたい」
「は、はい」
デエマは諦めた顔で頷いた。
俺とセルア、セルアの侍女メブ(特務部隊)、護衛の獣化女兵(中身はエックス)はシアータのいる部屋へと案内されていく。
案内役はクド。最上部に近い部屋の前に立つ。
「こちらです。私は基本的に入室できない立場ですので、ここで待機します」
シアータは最高機密の存在。俺でもわかる。
「よっす!」
わざとフランクに声をかけて入る。
「ヒロア、来てくれた」
小走りでやってくるシアータ。身長から察するに小学生ぐらいだな。
俺の腰に抱きつき、顔でグリグリする。やることも小学生かな。
「皇女がそれでいいのかねぇ」
「お祖父様に許されてる」
「お、おう……」
俺を見上げるシアータは得意げな顔だ。
「で、何か御用かな?」
「ヒロアの助けが必要な人がいる」
「え?」
「ここじゃない。不思議なところ」
「誰なんだい?」
「ヒロアと縁があるキリオカとコウノ」
「何だと!」
西の大陸へ転移させられていた彼らを救出し、少しの間だけ一緒に過ごした、昭和から来た高校生。
「いや待て。彼らには心強い味方がたくさんいるじゃないか」
神気を帯びた刀を振るう黒瀬、
その妹は地域に根付いた神様、
裕子は瞬間移動や不思議な能力を使う吸血鬼、それに猫やイタチ、さらに宇宙から来た河野さんの生みの親までいる。
そんな彼らが苦戦するほどのことが起きてるいるのか?
「変なところにいる」
「変なところ?」
「助けてあげてほしい」
「言われなくても」




