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017. 新たな旅路

 変わり果てた姿となってしまった先発隊の冒険者達。

 せめてもの(はなむけ)にと、クシード達は石を積み上げて墓を形成した――。




「……そうでしたか。新種のレッサーテングに負けてしまいましたか……」


 チェマに帰還したクシード達は、町長に依頼内容の結果を報告。これを聞き、先発隊へ慰問の意を込めたため息と共に、労いの言葉をクシード達に送った。

 

 スナッチ処理をした魔力を分析してもらうと、新種のレッサーテングは、レッサーテング・グゥソーと言う上位種であったことが判明する。

 

 このグゥソーは知能が高く、先発隊が全滅したのはグゥソーの奇襲作戦。

 “警戒”などの業務魔石(グリスタ)で発見させない方法を身につけ、あの(ひら)けた空間から弓矢で一斉に闇討ちに遭い、陣形が乱れたところを襲撃されたのだろうと報告書にまとめられた。


 置いて行かれたアマレティ以外は全滅とはいえ、彼女が所属していたパーティは駆け出しの初心者パーティとかでは無く、しっかりと実績を積んでいたらしい。

 



 

「そんな上位種が2体もおって、オレらは両方とも斃したんやな!」

「町の治安維持に貢献して頂き、本当にありがとうございます」


 虹色の7色で難易度が表されるシーブンファーブンの依頼で言えばネイビーになるが、今回は上位ランク、ブルーからグリーンに相当すると、町長は深々と頭を下げ感謝の言葉を交えながら言う。


「でもあたし達、命を懸けて難しい依頼を達成したのよね?」


 謝意を示す町長に対し、パーレットは腕を組んで不満げだった。

 

「報酬は上乗せしてくれますよね? なんせあたし達、命を懸けて難しい依頼を達成したのですよ?」


 高圧的な態度のパーレットに“そんなこと聞くの?”と、町長は口をモゴモゴと曲げていた。


「お、おいくらぐらい、でしょうか?」


 パーレットは指を3本立てた。


「なぁ、そんなんでええんか? オレらは命を懸けて難しい依頼を達成したんやで」


 その場にいたクシードも儲かる機会だと便乗し、パーレットの隣に立つと、小指も加えて指を立てる。


 

「報酬ぅ〜、3倍とか4倍とかぁ〜、もはや強盗の域だねぇ〜」

「……」

 

 名声より金。

 欲望に忠実なクシードとパーレットを横目に、呆れるアマレティと恥ずかしそうに他人のフリをするミルフィであった――。


 



「結局報酬は15,000ジェルトって、ケチなもんやなぁ」

「確かにそうね。でも貰えただけでも良しとしましょう」


 2人の強盗は報酬以外に、指定された宿と飲食店での費用はタダになるチケットや、武器屋で武器のメンテナンス費用を補助してくれるサービス券なども獲得している。


「報酬は4人でキッチリ分けましょ! それと、この後あたし達、夜ご飯へ行くけどアマレティも来るでしょ?」

「行く行くぅ〜」



 今夜はパーティだ、とまではいかないが、労いも込めた()()()が細やかに行われ一夜を終えた――。


 


 ◆◆◆




 翌日、午前9:00。

 

 やはりミルフィは寝坊し、まだ夢の中。

 出発は大いに遅れている。


 この時間を利用し、クシードは武器屋へ寄っていた。


 ルミナエルスの弾薬補充もそうだが、新たに手に入れた底碪式散弾銃レバーアクションショットガン“ハーヴィスロート”について武器屋の亭主に聞くためだ。

 

「見た目によらず物騒なモン持ってんだな」

「銃は好きなんで」


「あーわりぃわりぃ。そうゆう意味じゃ無くて、このハーヴィスロート、スリムな真紅のボディがカッコイイだろ? それなのにショット弾以外にもスラグ弾も使えるんだぜッ!」


 つまり範囲攻撃か、一点集中の破壊力か、その時の戦況によって使い分けることができる優れた銃である。


 反対に銃身は狙撃銃のように長く、狭小な場所では取り回しさに欠け、レバーアクションと言う仕様上、連射性能は劣る。


 欠点はルミナエルスで補えば良いだけで、こんな素晴らしい銃の扱い方を知らないなんて、あのレッサーテング達も見る目がない。


 ショットガンについて情報を知り、ニコニコしているクシードはさらに、町長から貰ったサービス券を駆使して、大量の弾薬を購入。


 終始笑顔だった。



 

「ちょっと、クシードッ! 遅いじゃない!」


 午前10:30を過ぎた頃――。


 出発の準備が整い、クシードは町の出口付近で待機していたミルフィとパーレットに合流した。


「次の町へ着く頃には、もう夜よッ! 宿の手配間に合わなくて野宿とか、あたし嫌だからねッ!」

「てか、そもそもミルフィが寝坊した時点でアウトやん!」

「――――ッ」


 “だって起きれへんのやから、しゃあないやん”と開き直ったように、ミルフィは左右の人差し指同士を合わせながら唇を尖らせている。


「ああ言えばこう言わないのッ! 早く出発するわよッ! お昼休み無しで進むからね!」

「えー……、ランチは歩きながら食べるんか? メシぐらいゆっくり座って食べようや」


「そんな余裕は無いのッ!」


 出発が遅れイラ立っているパーレットに、クシードは武器屋の帰り、弁当屋で購入したランチボックスの中身を見せた。


「えっ、何? オシャレで超美味しそうなお弁当じゃん」

「せやろ〜、そんでも歩きながら食べたいか?」


「……しょ、しょうがないわね。でも食べたらすぐに出発するからね! わかったッ!?」

「はいはい、りょーかい」


「なによ、その態度ぉ〜ッ!」


 


 他愛無い2人の会話が続く。

 クシードとパーレットのやりとりは、近くで聞いていると面白おかしく、気づけばミルフィの口元は綻んでいた。

 

 “私もいつか、楽しくおしゃべりをしたい”

 今は難しくても、これからも旅は続く。おしゃべり上手な2人といれば、なんだかできるような気がする。


 ――と、先を行くクシードとパーレットの背中を瞳に映し、ミルフィは青く真っ直ぐな髪を揺らした。





 チェマを出発して約3時間。

 ミルフィの懐中時計は午後1:30を回ろうとしている。


「なぁ、パーレット。ぼちぼちメシにせぇへんか?」

「そうね……、そろそろ休憩所だと思うし、着いたらランチにしよっか」


 “やったぁ”とお待ちかねのお弁当の時間となり、ミルフィは小さくガッツポーズを決めた。


 少し先へ進み、1ルごとに設けられている休憩所に辿り着くと、早速ランチボックスを開封。

 色鮮やかに添えられた野菜と、スタミナ回復に最適な肉料理が並ぶ。


「見てるだけでも、マジで超美味しいそう」

「ほな、取り分けようか」

「うんうん〜、4()()()〜」


 先に料理が配られても、食べる時は全員一緒。

 皆に行き渡ったところで、昼食の時間を迎える。


「「「「いただきまーす!」」」」


「ヤッバ! これ、超美味しいじゃん!」

「な? ええもん選んできたやろ?」

「クシード、センスあるねぇ〜」

「……?」


「お肉もぉ、柔らかぁ〜いままぁ〜。ん〜、おいひぃ〜」


「……てか、あ、アマレティ……? 何であなたここにいるのよ?」

「ん〜? 何でってぇ? こっそりぃ〜(あと)を付けたからだよぉ〜」


「こっそりやなくて、堂々と(あと)を付けてこいや!」

「いやいや、それはそれで怖いわよ……」


 アマレティは昨夜の食事会で、首都カロッサ・ヴァキノへ向かうと言っていた。

 だが、方向は全くの逆である。


「ウチねぇ〜、みんなと一緒にぃ、冒険して、ご飯食べてぇ、す〜んごい楽しかったのぉ〜」


「仲間があんなにも悲惨な目にあったんに、えらい切り替えが早いんやな」


 アマレティが亡くなった仲間達と出会ったのは数ヶ月前とは言っていたが、この期間中、寝食を共にし、背中を預けるようなこともあったはずだ。

 こんなにもドライなものなのだろうか……。


「だってぇ〜、セルンはぁ〜、ウチのことぉノロマだのぉ淫乱メスヅノだのいつもバカにするしぃ〜、シュベアとぉ、ファートはぁ、おっぱいやおしりとか、カラダを触ってくるしぃ、襲われたこともあるからぁ〜、キラ〜イ」


「そ、そっか……」


 露出の高い服装をしているからだろと、クシードは言いたくなるが、プンスカと怒りが見える顔で言われると言いにくい……。

 思わず食事の手が止まってしまった。


「――サイッテーな仲間だったのね。少なくても高潔なるロンイー族であるあたしは、そんな下劣なことはしないし、させないわ!」


「さっすがぁ〜。なのでぇ、このままフラフラするよりぃ〜、みんなと一緒にいたぁ〜いって思ってぇ〜ん」


 所詮、過去は過去。

 楽しいことを経験して過去を上書き保存していくそうだ。



 

「――ウチもぉ、付いてっていぃい〜?」

「まぁ、全然ウェルカムやでッ!」


「ほんとぉ? やったぁ〜!」

「ちょっと、何勝手に決めているのよッ!」

「何でって、美女の誘いは断ってはいけない、が、我が家の家訓やねん!」


「えへへぇ〜、よろしくねぇ、クシード〜」


 歓喜の抱擁をアマレティはクシードに施し、彼は甘美たる香りと感触を堪能していた――。


 

「どんだけチャラい家系なのよ……」

「……」

第2章終わり。

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