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異世界少女と無能の現代異生活  作者: たんぽぽ3号


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潜入計画



取り敢えず穴を開けて潜入することに決めたので、まずは様子を確認することにした。

金剛城は地下の中心、少し窪んだ場所にあるため適当に廃墟のビルに登ると簡単に見下ろせる。



「・・・警備って厳しいのか?」


「ワリとな、、、特にやましいことをしてる時はさらに厳しくなる。今は幹部が外に出てるとこすら見かけないし相当警戒してるな。」



マジか、運が悪いなぁ。


と言っても幽世渡りノ箱の製造してるならグリーンパイソンとも取引してるだろうしね。最近行動を起こし始めたグリーンパイソンと取引してるハザードにも動きがあったって何ら不思議じゃない。



「・・・ただまぁ所詮は寄せ集めだ。幹部以外なら特にそこら辺のチンピラと変わんねぇよ。」


「でも建物がそこまで大きいわけじゃないし結構な人数に警備されればバレないように行くのは難しいぞ?」


「そこら辺は割り切るしかないんじゃねぇか?」



蛇紋はそう言ってチラリとフユ姉に視線を送った。

見られた本人は不快そうな顔をして胸を隠す。


・・・多分そこを見たわけじゃないと思うよ?違うとも言い切れないけどさ。



「・・・囮にしろってか?」


「ない話じゃないだろ。フユ様だったら1人で大立ち回りできるし、大穴を開けられる。その隙にお前が忍び込めば第一の関門はクリアだ。そんで先に潜入してる姉ちゃん達と合流すりゃあいい。」



俺は頭を悩ませる。


確かにそうすれば一番手っ取り早いが、それは後を考えなければの話だ。フユ姉はこの街に住んでるし、俺達はハザードを潰しに来たわけじゃない。外に居場所のある俺達と違ってフユ姉はここから出るのは難しいしできれば目立って敵対はしてほしくない。



ならどうするか、手段はたった一つ!



「フユ姉、俺たちを食ってくれ!」


「え、そ、それはどっちの意味で?」



どっちってなんだよ、もう片方でもいいんですか!?



「あぁ? それって結局フユ様が目立つじゃねぇか。」


「馬鹿野郎、食べるの解釈を広げるんだよ。そうすれば俺達は神出鬼没のマジシャンだ。」


「ちょっと何言ってるかわかんねえ。」



マジかよ、結構わかりやすく言ったつもりなんだけどな。でもとりあえずの侵入方法は決まったし、準備したら向かうとしますか。



・・・あの2人大丈夫かなぁ。



ーーー




「・・・・・むぁ?」


「よくこの状況で眠れますね。」



薄暗いやけに豪華な洋室の中、ふかふかのベッドに包まれて寝ていたエリスは目を覚ます。

せっかく、小綺麗な服を着ていたのだが、そのまま寝てしまったため少し気崩れてしまっていた。


欠伸を漏らしながら服を直し、今何をしていたのか思い出そうと首をひねった。



「・・・・・あぁ、ラブホテルとやらか。」


「あとで保護者に何を教えてるのか問いただしますね。・・・違いますよ、ここは金剛城の中です。」



同じく綺麗にオシャレをした副班長が呆れたようにため息をつきながら頭を押さえている。


いやだがこの内装に装飾はまんまじゃないか?

前に変に引っ張られたサイトでそんな画像を見たぞ。



「どういう状況だったか?」


「・・・・・わかりました、説明します。と言っても難しい話ではありませんよ。」



副班長は思い出すように淡々と何があったかを教えてくれた。


まず初めに、綾人に眼鏡を取られ、完全に素顔を晒した途端、大勢の人に囲まれる。

単に好奇の視線を向ける者に、下卑た笑みを浮かべる者、なかには鋭い視線と憎悪を向ける者もいた。


少しの間視線を避けられていたことによって感覚が鈍ったのか、向けられる視線に少し萎縮してしまう。

すると、その隙にそっと自分の腕を取ろうとした者が観衆の中にいた。


伸ばされた腕が自分の手を取る前に副班長が相手の手首を掴み捻り上げる。



「・・・なにする気ですか?」


「いたたたっ!? ち、ちがうわよ、別に悪いことをしようってんじゃないから!」



手首を掴まれた人物は派手な毛皮の服を着た中年女性。ゴテゴテのアクセに白い歯を輝かせている。



「では何の用で?」



痛がってる女性を副班長は鋭く冷たい視線で見下ろす。周囲はその剣幕に押されて輪が広がった。



「・・・い、いやぁ、可愛い子がいるなぁって思ってね。良かったらウチの商品でも買っててくれないかなって、、、。」


「そうですか、随分強引な客引きですね。」


「つ、ついね。」



脂汗を流しながらも女性は何とか話し終えると副班長はパッと手首を離す。

もし副班長がいなければ大勢の人に群がられて相当まずかったと思う。一般人を斬る訳にもいかないし本当に助かった。



「・・・では案内してくれますか?」


「え?」


「正直人目が多すぎるので、早めに案内してくれると助かります。」



副班長は周囲に視線を配りながら女性にそう提案した。

確かにこの場で大勢に囲まれてるくらいなら店に案内してもらって少しでも人目を避けたほうが良いか。


女性はコクコクと頷いて、自分の店へと案内してくれるのだった。



・・・・・。

・・・・。

・・・。




「いやー! すっごい可愛い!何でも似合うから逆に選ぶのに困っちゃうわ!」


「・・・いやいや、明らかにあのドクロは似合っとらんかったろ。」


「何言ってるのよ、ああいうのをパンクっていうの、と言うかオシャレなんてその人の見え方変わるしぶっちゃけ何でもいいわ。」


「・・・本質に迫るような事を言いますね。」



今私は先ほど会った女性(佐伶那というらしい。)の店に案内され、着せ替え人形のようにさまざまな服を着せられていた。


すでに疲れ果て、生気のない顔をしながら次の服に袖を通している。



「きゃー!それもいいわ! まるでアサシンみたいよ!」


「ひどく物騒じゃな!?」


「・・・メイド服では? コスプレ要素のほうが強いですけど。」



先ほどから着る服着る服を褒めちぎられ妙に気恥ずかしい。テンションの上がり続ける佐伶那と冷めた目で突っ込む副班長の温度差が激しくて風邪ひきそうだ。



・・・それにしてもこれはメイド服というのか。



元の世界にも似たような服を使用人が着ていたがここまでスリットは深くないしフリルも付いてなかった。前にテレビでやっていたアニメなる物には同じような服装を着た少女の絵が動いておったがな。



「あら、違うわよ。これは暗殺メイド黒々ちゃんが着ている服だからね。」


「ならメイドと暗殺者の両方じゃないですか。」


「そうとも言うわね!」



すると試着室の横で座って端末をいじりながらツッコんでいた副班長の腕が急に掴まれる。



「・・・え、何ですか?」


「せっかくだからあなたも着替えましょうよ♪ あなたもそ~と〜綺麗だし着せ替えがいがあるわぁ。」


「い、いえ、私はいいですよ。」


「ダメよ! 貴女のような真面目そうな娘はオシャレに無沈着で決まってる格好が一番楽とか言うのだから! 決まってる格好なんてつまらない、楽じゃなくて楽しんでなんぼなのよ!!」


「個人の価値観ですよね!?」



おぉ、珍しく副班長殿が振り回されているな。

蛇紋のような下心全開ならまだしも佐伶那は純粋に見てみたいという好奇心から来てる発言だし、無碍にしづらいのだろう。


と言うか私も見たい。


悪戯心を刺激され、副班長のもう片方の腕にそっと手を添える。



「・・・なんです、これ?」


「いや、私ばかり着せ替えられるのは不公平だ。苦労は分かち合おう。」


「適材適所と言う言葉をご存じで、、、って脱がさないでください! 待って待って!心の準備をさせて下さいよ!」


「あらー、あんなに固い顔してたのに今はとても乙女よ〜? 安心して、必ず可愛くするから!」


「そんな心配してません!」



慌てふためく副班長はズルズルと佐伶那に引きずられていく。にしても本気出せば簡単に抜け出せるのに連れて行かれたってことは副班長も少しは興味あるのか?



しばらく暗殺メイドの格好のまま座っていると、奥から2人が出てくる。


いつもならほとんど肌を露出させていない副班長が肩を露出させたブラウスにスカートといった可愛い系の服に身を包んでいる。


それに着せ替えられた本人は顔を真っ赤に染めて肩を抱いていた。



「おぉ似合っているではないか。何を隠しているのだ?」


「は、恥ずかしいです。し、仕事と割り切ればこういう格好もしますけど今は無理です。」



ひとしきり佐伶那にグルグルされたあと副班長はまた奥に連れて行かれ、ニットのワンピースに、ガウン、シャツにロングスカートなど色々着て度々自分の前に連れてこられていた。


どこか目を回している副班長を温かい目で見ていると、いつの間にか自分も着せ替えられる。


もう何が何だか分からず混乱していると、カランっと小気味いい音ともに他の客が入ってくる気配がした。



「・・・あら? 今日は閉店しといたはずなのに。」


「・・・・・。」



不思議そうにドアに向かう佐伶那の背の向こうを副班長は鋭く睨む。

すると彼女を押しのけてガタイのいい金髪のニヤニヤした男と帽子を被った細身の鋭い目つきをした青年が私たちの前に立った。



「ちょっと!何よあなたたち!」


「あーん?お前この街で俺たちを知らねえのか?」



タンクトップの日焼けした金髪は言いながら右肩を見せるように前に出す。


そこには、、、なんだこのマーク?



「・・・ハザードファミリー。」


「そう! 天下のハザードだぜ!わかったら邪魔すんなババァ。」


「ーーバっ!?」



ババァと言われ佐伶那は青筋を立てる。

しかし彼らが厄介な連中だということがわかっているからか唇を噛みながら彼女は押し黙った。



「・・・何のようですか?」



副班長殿は顔色を変えずに淡々と目の前の男に目的を尋ねる。男は自分と副班長を交互に見て口笛を吹き、下卑た笑みを浮かべた。



「お前ら金はあるか?」


「・・・いくらほど?」


「だいたい100万くらいだ。」



どこか聞いたことのある金額に眉をひそめる。副班長は少し考えたあとに顔を上げて口を開く。



「そうですね、用意はあります。」


「そうか、ならよかったな。実は俺達はスカウトマンでな、どうも街を歩いてたらすげえ綺麗な奴がいるって言うんで追ってきたんだよ。俺様の眼鏡に叶うなんて喜ばしいだろ?」



副班長は無言でニコッと笑みだけを浮かべている。

嬉しいと嘘をつかなかったのはせめての抵抗か?



「と言うことは、エラード様に紹介していただけるのですか?」


「あー、それはお前さんら次第だな。うまく壊れなけりゃ会えるかもしれんな。」



男はどこか舌舐めずりのようなものをしながらこちらを見下ろす。その不快な視線に思わず目潰しをしてやりたくなるが、せっかくの苦労が水の泡になるのでぐっと堪えた。



「つーか、拒否権なんかねぇ。さっさとついてこい。来なかったら、、、わかってんだろ?」



威圧するようにこちらを睨んだあと2人は店の外に出た。佐伶那は慌てたようにこちらに駆け寄り申し訳なさそうに謝ってくる。


それに副班長はニコッと先ほどよりも優しい笑みを浮かべた。



「大丈夫ですよ、おおむね予定通りです。・・・佐伶那さん、少しの間でしたが楽しかったです、また機会があれば。」



そう言って副班長は佐伶那の肩に手をかけながら立ち上がり、こちらにいつもの仕事モードに切り替えた表情で淡々と告げる。



「では行きますよ、ラクラットさん。」


「うむ、わかった。」




・・・・・。

・・・・。

・・・。




「・・・で、今は此処で待たされている状態ですね。」


「そう言えばそうだったな。」



長いようで短い説明を聞いてようやく自分の置かれている状況が理解できた。


つまり今は実質軟禁状態のようなものか、、、。


改めて姿を見下ろすと、今の自分はフリフリが多くついたドレスのようなものを着ている。ぶっちゃけすごく動きづらいから脱ぎたいが、ここで下着になるのは色々リスキーだろう。



「・・・これは何というドレスなのだ?」


「ドレスと言うよりロリータファッションと言うものですね。似合いすぎてて動かなければ本当に人形と見間違えそうですよ。」



・・・それは喜んで良いのか?



微妙な顔しながら対面に座る副班長はチョーカーに短いシャツ、どことなく班長っぽいダウナーな格好をしていた。何故かお腹に布団を巻いているので恥ずかしいのかもしれない、写真撮ってよいか?



「ひとまずは現在地と幽世渡りノ箱の捜索。可能であれば脱出経路とエラードの逮捕を目標でいきましょう。」


「うむ、わかったがこんな所でそんな話しして平気なのか? 普通に盗聴とかされる気がするのだが。」


「ジャミングしてますので問題ありません。」



言いながら副班長殿は右手の指につけた黒い指輪を少し捻る。ほんの僅かにカチッとした音が聞こえ、明かりが灯って消える。それがジャミングの合図なのだろう。



「では待ちか?」


「ですね、行方をくらませれば騒ぎになります。・・・下手に証拠を隠滅されてもかないませんのでギリギリまでは今のまま耐えましょう。」



副班長殿はそう言ってそっと目を閉じた。

少しでも体力を蓄えようとしてるのか動かず彫像のようだ。


自分は落ち着いてこれからのことを考えながら、チラッと副班長の服装を確認する。



(・・・佐伶那の所にスーツと装備は置いてきているはずだ。今は本当に必要最小限、なのにこの落ち着きよう、、、潜ってきた修羅場の数が多いのか。)



武器を持っているといないのでは心の余裕に大きな差が生まれる。いくら徒手空拳を鍛えていると言っても想定外に対応する手札が減らされるのはストレスなはずだ。


自分はいつでも剣を出せるからまだ余裕はある。でも未知の場所というのは漠然な不安を感じてしまうのに、、、。



「・・・ふぅ、少し休むか。」



下手に思考を乱せば焦りが生まれる。

一度落ち着くために息を漏らし、そのまま同じように目を閉じた。




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