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異世界少女と無能の現代異生活  作者: たんぽぽ3号


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レベル5


次の日の朝、呼び出しを受けた俺達は対策局の事務所にいた。



・・・やばい、久しぶりの2連休なんて味わってしまったもんだから帰りたさがえぐい。



昨日の夜は布団に入りながら「このまま朝が来なければなぁ。」って半泣きだったしね。


そんなやる気がなくて頭が冴えていない中、ぼんやりとパソコンを確認しているとドアが開いて帆哭さんが顔を出す。



「ちゃんと来てますね。」



そりゃもちろん、朝から痛い目にあいたくないからね、はっはー。


乾いた笑みを浮かべている俺とエリスを確認して帆哭さんは一つ頷く。



「では次にお願いしたい仕事ですが、私と一緒に6番街へと調査に行きましょう。」



・・・い、一緒に? ま、まさか帆哭さんが付いてくるってこと?



「サボれないじゃん、、、。」


「2本折りますね。」



やべ、心の声が漏れた。てか2本何を折られるんだろう、心かな?


「ふっ」と諦めたように座り直した俺は震える手を押さえながらコーヒーを飲んで心を落ち着かせた、現実逃避とも言うね。



「・・・6番街って言うと班長が言っていた『幽世渡りノ箱』関連ですか?」


「御名答。あれはいわゆる幽世への出入り口を作る異常具です。もし正門か裏門、そのどちらかでも壊れたら幽世の住人達が外へと出てくる可能性があります。そうなってしまえば現世へと恨みと羨望を持つ彼等によって大勢の犠牲者が出るでしょう。」


「ちょっと待ってください、裏門ってなんです?」


「あぁ、幽世渡りノ箱は2つで1つなのですよ。正門と呼ばれる箱で幽世へ入ることができ、対となる裏門へと出ることができるのです。ただその最中で幽世の住人に目をつけられれば引きずり込まれて二度と出てくることはありません。」



こっわ!?


だから生存率は50%だって言ってたのか。


青い顔をしている俺の横でエリスは「むぅ?」と声を漏らした。



「・・・なぁ、そもそも幽世とはなんだ。」



あ、そう言えばそうだよね。


俺は笑みを浮かべてエリスを見つめ、ぐっと親指を立てる。



「知らねw」


「知らんのか!?」



いや知らないよ。

オカルト話とかには詳しいけどそんな見たこともない世界なんて知ってるわけないだろ。


と、言うわけで説明を帆哭さんに求める(Please)。



「そうですね、幽世とは主に死者の世界を表しますが、今言ってる幽世がその世界だという確証はありません。ただ内側に存在する不気味な黒い影、そういった存在が怨嗟の声を漏らしながら人を引きずり込もうとすることからそのように名付けられました。・・・いわゆる通称ですね。」


「あぁ、じゃあ本当に死後の世界というわけじゃないんですね。」


「はい、言ってみれば理解不能な奇妙な空間というだけです。」



なるほど、よく理解できた。

つまりあの世界は別にそう呼ばれてるだけの意味不明な場所ってことね。


問題はそこにいる謎の存在が人間に対して敵意を持っていることか。



「取り敢えず危ない空間を渡って遠くに移動できる代物、という理解で大丈夫です。そしてその箱は班長がすべて壊し尽くしたはずなのですが、それをグリーンパイソンが持っていて、緊急の逃走手段として保持している、、、それも複数。」



確かに大問題かもね。

もし不手際で暴走して謎の存在に侵略でもされれば止めるのが遅れる。そうすれば多くの被害者が出るだろう。


・・・ん?てか班長は壊せたの? てことはやり方はあるのか。



「なので6番街へと赴いてカリアが言っていたことは真実なのか、と、本当に量産されているようであれば即刻止めさせるというのが今回の目的ですね。」


「・・・言わんとしてることはわかりました。で、思ったんですけどそれって班長が行ってくれば良くないですか?」



だって壊し方を知っててどんな相手だろうが簡単に捻りつぶせるあの人が行けば万事解決じゃん?

むしろもう全部あの人に任せようぜ。


最後は心の中だけで呟いていたが、帆哭さんは静かに首を振った。



「班長はいま深度レベル5の怪物の様子を確認してくれています。とてもじゃありませんが別のことに思考を割く余裕はあの人にもありませんよ。」



・・・あ、じゃあしょうがないわ。少しでも任せようとしてごめんなさい。無理やり連れて行かれなくて本当に良かったです。


てことはあの人しばらく帰ってこないな。と、1人安心していると、エリスが勢いよく手を挙げた。



「はい先生!」


「はい、ラクラットさんどうぞ。」



何そのやり取り。



「深度レベル5の怪物とはなんだ?」



その言葉に俺と帆哭さんは顔を見合わせる。

そう言えばあまりに有名な存在すぎてすっかり説明するのを忘れていたね。


帆哭さんは「コホンっ」と1つ咳払いした。



「説明不足でしたね。110年前の超常災害から今までに国が興されましたが、その空白、避けるように残された未開の地にはある最悪の怪物達が存在しています。その怪物は深度レベル5とされ、レベル5とは今現在確認されている対処不可能な5体の存在のことを指してます。」


「・・・対処不可能?」


「はい、現存の異能者及び化学兵器を用いて倒すことが困難であり、もし彼らが気まぐれで人が住まう国を侵攻しようものならなす術なく滅ぼされるでしょう。」



淡々と述べる帆哭さんの言葉にエリスは目を見開く。

おそらく彼女の頭の中にはいくつもの疑問が生まれたはずだ。

何故そんな存在がいるのか、ならどうしてまだ国は滅んでいないのか、どうしていまは動いていないのか、、、。


正直な話、俺たちもまだそれに対して答えを得られては居ない。だから今答えられるのは「気まぐれ」に過ぎないと言えるだろう。



「その怪物達にはそれぞれ異名がつけられ、墜撃王、侵略種、配管皇、陽落とし、疫病神とそれぞれの特徴に合わせた名が付けられています。」


「・・・名だけではどういった存在か分からんが、とんでもなく恐ろしい存在という認識で良いか?」


「はい、今はその認識で十分ですよ。一体一体説明しても良いのですが、そうなると話が長くなってしまいますので。衛星写真と遥か遠方からの監視映像しか参考になるものがありませんが後で細かく説明します。」



今はまだこれから仕事もあるし細かな説明は後でするみたい。つまりエリスはまた勉強会だね。間違っても俺も一緒にとか言わないでくれよ?(切実)



「グリーンパイソンはその中の一体にこの国を襲わせようとしてるのか、、、。」


「えぇ。でも分からないのはレベル5を操る方法です。あの存在達に意思疎通を取る手段なんかありません。今は何故動いていなのか分かりませんが下手に刺激して彼らの機嫌を損ねれば殺されるのは彼らでしょう。機嫌を損ねさせておびき寄せるということも考えられますが、まず逃げ切るのは不可能なので現実的とは言えません。」



そうなんだよね。


別に人間の言葉を話したり理解するわけでもないからさあいつら、ホント災害みたいな存在だもん。

それに極東に近い存在となると墜撃王と配管皇の2体になる。それ以外なら国から遠いし動き出させようものなら先に他の国が抵抗を始めるだろうね。


・・・あぁ、だから機動力があって他国にも借りがある班長が調査に向かったのか。



「なので取り敢えず私達は直近の脅威に対処しましょう。」


「それが幽世渡りノ箱?」


「そうです、6番街には曲者も多いので調査は難航すると思います。早めに向かいましょう。」



そう言って窓の外を指さされたので覗いてみると、すでに黒いセダンが駐車されていた。俺は露骨にテンションを下げながら抵抗むなしく下まで降りて車に乗り込むのだった。




・・・・・。

・・・・。

・・・。




「遠いよ。」



事務所のある第八区から6番街のある第四区には移動だけでも3時間くらいかかる。高速を使ってこれだから間違っても下道からなんて行けないね。


てか何で第四区に6番街なんてあるだよ、統一してくれ紛らわしい。



「にしても車とは便利だな。休憩もなくこのスピードで走れるとは、あっちなら2回は野営をしているところだ。」


「うわぁ、行軍とか本当に大変そうだな。人が多くなればまとまりも悪そうだし兵糧とかの管理も大変そう。」


「・・・あぁ、めちゃくちゃ大変だぞ。大変、、、だったなぁ、、、。」



どこか遠い目をし始めたエリスを見るに結構ヤバかったみたい。そう考えるとたかが数時間を快適に移動できる現代って本当に優秀なんだな。文句言ってごめんなさいw



「・・・ラクラットさん、着く前に6番街について説明しますね。6番街とはいわゆるスラム街で、薬に違法武器、賭博など国がダメと規制しているほとんどが目を盗んで行われています。そこに住んでる人たちも表から追われたはみ出しものばかりで治安は最悪な場所ですね。」


「何でそんな街が野放しなのだ?」



エリスが「うえぇ?」と嫌そうな顔をしながら最もなことを聞く。ホントだよね俺もそう思うよ。



「その街で幅を利かせている人間が厄介なのと、あとはそこを潰してはみ出し者たちが散ってしまえば地方に潜伏される可能性が高くなり面倒だからです。」


「あぁ、密集してる方が監視はしやすいと。」


「そういう事です。」



下手に散らせると各地で奥に染み込むように裏溜まりができる。そうなるくらいなら多少の温床に目を瞑ってでも一箇所に集めておこうって感じかな?


まぁデメリットとしては組織として大きくなりすぎることだよね。


やれやれ、頭のいい人は考えることが多くて嫌ですねぇ。



「・・・ただ問題があります。」


「む、何かあるのか?」



すると帆哭さんが困ったような顔になる。



「いえ、ラクラットさん絶対に6番街で絡まれますよね。」


「え、今更? すっごく予想できたことでしたよね。」



帆哭さんがあまりにも今更なことを気にしだして驚く。普段から周りに目を向けている彼女らしくないな。


そしてそんな心配を他所に後ろに乗っていたエリスは「ふふん、大丈夫だ!」と言ってポケットから眼鏡ケースを取り出した。



「私にはこれがあるからな!」


「・・・眼鏡? それだけではとても変装には、、、え、まさか、、、。」


「あ。」



帆哭さんが目を丸くした瞬間に俺は冷や汗を垂らした。すでに手遅れなことを悟って「高速って飛び降りても生きてられるかな?」と真剣に考え始める。



「うむ! 認識阻害がついた眼鏡だ!これで私も目をつけられることは減るだろう!」


「・・・認識阻害ですか、作れるのは獣屋さんくらいですしあの人も噛んでますね。・・・はぁ、捕まらなければいいです。国防に貸しを作りたくないのでお願いしますよ。」



帆哭さんは痛そうに頭を押さえて深いため息をついた。横から一瞬鋭い目で見られたけど俺が頼んだわけじゃないと察してくれたのか溜飲は抑えてくれたみたい(あぶねぇ)。


後で潰されるだろう獣屋にご冥福を祈りながら無言で運転していると、第四区にたどり着く。

セキュリティゲートを越えて、第四区中央街に向かって車を走らせながら人通りの少ない路地裏横の有料駐車場に車を止めた。


ま、有料駐車場だけど対策局が個人経営風に見せてるだけだし無料なんだけどね。



「ここが6番街か?」



エリスがビル街を見渡しながら不思議そうに呟く。俺はそれに対して首を振った。



「そんなわけないだろ。いいか、大概悪いことをする時はな隠れながらやるんだよ。」


「そんな事分かっている。向こうにも治安が悪い場所など多いからな。だがここはビルがあるだけで他に何も無いではないか。」



まったくー、想像力が弱いなー。

ま、でも説明するよりも現地で説明したほうが早いか。なので俺は先導してくれる帆哭さんの後を追う。エリスも無言でついてくると、ある程度歩いたところにある寂れたカラオケ店の前に着いた。



「・・・『ヘブンゲート』?」



痛い名前のカラオケ屋だよなぁ、と思いながら薄暗く音もほとんどしないホラー映画に出てきそうなギリギリ生きてる店内を見渡す。


ピザの箱が乱雑に積まれた受付に向かうと、ホームレスの様なボロボロの服を着たオッサンが寝息を立てていた。

帆哭さんは気にせず近づいて呼び鈴を鳴らす。


その音を聞いてオッサンはパチリと目を開けた。



「・・・らっしゃい、どれにしやす?」


「22.3号室、無期限コースでお願いします。」



意味不明な返答を返した帆哭さんにオッサンは「あいよ。」と呟いて鍵を手渡した。

帆哭さんはそれを受け取り、店内の廊下を進んで一番奥の部屋を開ける。


その部屋にはまた鉄の扉があり、そこにもらった鍵を挿し込んでドアを開けると、光量の弱い蛍光灯に照らされた階段が現れた。



「エリスさんは眼鏡を、名木田君、虫除けは頼みましたよ?」



俺はその言葉に嫌そうに顔を歪めたが、必要性も理解してるので仕方なく頷いた。

反抗しても後が怖いし仕方ないよね。


階段を下り終えて最後の錆びた扉を開けると、遂に6番街が全貌を現したのだった。




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