表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界少女と無能の現代異生活  作者: たんぽぽ3号


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

33/49

暗闇の戦い



「待て待て、どこまで行くのだ?」


「もうちょい走るぞ。」



ルクシオンパークから飛び出し、外壁に沿って走る。


まるで車のような速度で2人は走り続け、海に続く崖の下に作られた地下水道の入り口の前へと飛び降りた。


にしてもエリス普通についてきたな。

結構スピードを出してきたはずだけど特に汗をかいたり息を切らすこともなく普通に立っている。



「・・・ここから中に入れるのか? 随分と遠くまで来たが。」


「あぁ、万が一の脱出経路だしな。入りこまれても困るし人目のつかない隠れた場所につくられてんだ。」



ルクシオンパークに来る前に地下の地図を沈んだデータの海から引っ張り出しておいた事が役に立ったな。

ま、その前に侵入もしたしある程度は地形も把握してるけどね。



「・・・ちなみにエリスは匂いとか平気?」


「む、舐めてもらっては困るな。どれだけの戦場を走り抜けたと思っている。」



エリスは胸を張ってふんと息を吐く。

腰に手を当ててキリッとキメ顔を浮かべてて可愛い。


入り口はグリーンパイソンが侵入しているからか既に壊されているのでアッサリと中にはいり再び地下通路を走る。



すると前に合羽を着ている三人組が見えてきたので取り敢えず真ん中のやつをバレる前に後ろからぶん殴った。

両側にいた2人は突然ふっとばされた仲間に動揺し、その隙に真ん中に降り立ったエリスが剣を構えて回りながら二人をノックアウト。


そのまま止まることなく通路を進んでいくと、ほんの僅かな声量で会話する声が聞こえたので角にそっと隠れる。



すると非常口の前に2人、見張りのように立っているグリーンパイソンがいた。



・・・張ってるのが国防じゃないってことはだいぶ攻め込まれてんな。ただ地下通路にグリーンパイソンも少ないし敵の追加はなさそうか。



ジッと相手の装備を確認したあと下に隠れたエリスに視線を送る。エリスは俺の視線を受けて一つ頷いた。



飛び出して俺が右に走り出すと、エリスは左に向かって飛び出す。



「んあ!? 対策局!?」


「遅えよ!」



一人が手を構えてくる前にR-808を抜き引き金を引く。相手の肩を撃ち抜き、数歩よろめいたあと顔面に蹴りをお見舞いした。


エリスは同時にグリーンパイソンと接敵。


剣を顕現させて腹に一撃、そのまま剣の柄で顎をぶち抜いて砕き割る。


相手は口から血を吐きながら後ろへと倒れた。



「・・・やりすぎじゃね?」


「む、綾人が無力化していたから私もわざわざ殺さぬよう気を使ったのだぞ。むしろ感謝してもらいたいくらいだ。」



確かに死んではいないだろうけどあれって放っといたらまずいんじゃない?

まぁわざわざ攻め込んできてる敵に対して介抱しようなんて微塵も思わないけどさ。


そしてフリーになった非常口に2人で視線を向ける。



「・・・さ、気合い入れてくぞ。」


「あぁ任せろ、前よりも霊力は回復しているし後れは取らん。」



遊びに来たかのような楽観的な雰囲気を消し去り、2人は静かに進んでいく。

暗き戦場へと、、、。




ーーー




「・・・嫌な血の匂いだ。」



完全に電気の落とされた暗闇を2人でしばらく走っていると、所々血の匂いと硝煙の香りが鼻を突く。

チラホラ転がる全身装備の兵士を横目に、俺達は今グリーンパイソンの合羽を羽織っていた。



「それは通路の話?それとも合羽の話?」


「どちらもだ。」



あぁ、確かにエリスが着てるのはエリスが顎を割って血を吐かせたほうだもんね。

まぁ通路が血生臭すぎて薄れるだろうけど、気分は良くないか。



2人はそんな会話をしながら走りつづける。

血の海を越え、溶けた地面を越え、階段を上がったり下がったり、、、。


すると、管制室のようなモニターに囲まれた一室に出る。


そこには死体が転がり、機械の多くが壊されていた。


暗い中マスクなんて被っていたら調査にならないのでマスクを外して辺りを注意深く観察する。

部屋は酷い血臭だが、エリスは軽く顔しかめるだけで吐いたりはしない。俺も慣れているため普通に入って死体の状態を確認した。



「・・・どいつも心臓に穴を開けられてるな。銃で撃たれたか、何かで貫かれたか。」


「これほど周りに銃痕などないなら異能だろう。」



エリスは周りを確認しながらそう判断する。

俺は思わずその返答に二度見してしまった。



「・・・お前、成長したな。」


「まてまて、私だって日々勉強しているのだぞ。銃火器の種類や性能に建築物の材質なども覚えたんだ。流石にそれぐらいの分析はできるようになってくる。」



・・・うん、そこまでいったら逆に俺のほうが知識不足になりそうだね。


ま、彼女の言う通り周囲には跳弾の形跡がないし死体に弾が残っていたり薬莢が落ちてたりもしない。

わざわざ攻め込んだ連中が痕跡を消すとも思えないしこの不自然さは明らかに異能の力だろう。


あとはそれが何の異能かだけど、、、。



「佐巳月だろうなぁ。」


「あぁ、あの男の異能なら可能だろうな。全く、相変わらず厄介な力だ。」



穴のサイズからしても銃弾よりは大きいしね。

もちろん他の異能者な可能性もあるけどあいつだけはどうせ来てそうだし他を考える必要もないか。



・・・少なくともグリーンパイソンのリーダーじゃないだろう。



ーーズウンッ!



突如として施設全体を大きな振動が襲う。

揺れは一瞬だったがモニターは何個も落ちてきて破砕音を立てながら破片を飛び散らせる。



「何だ?」


「地震じゃないな、何処かの戦闘の余波か。」



衝撃を感じたのはずっとずっと奥の方からだ。



「・・・だとしても今の衝撃は相当だぞ? まるで極地制圧魔法が使われたかのようだ。」



・・・なにそれ? 僕知らなぁい。


やけに物騒な名前だなぁ、いやだなぁ聞きたくない。うん、聞かなくていいや。



「結構奥深くまで攻め込まれてるのか? いや、いくら佐巳月でも早すぎるし別働隊でもいたのかもな。」



もし異常具が目的なら厄介だけどグリーンパイソンはそんなもの使うより自分でぶん殴る事を好むだろうからそこは気にしなくてもいいか。



「考えても仕方ないし、早く、、、」


「いいや、ここで足止めだ小僧。」



入り口から以前聞いたことのある声が聞こえ、気付くと首筋に白刃が迫る。

それをギリギリでエリスが白銀の剣で受け止め、二人して後ろへと跳んだ。



「悪い、助かった。」


「なに、返しただけだ。」



エリスが剣を構え返した先にはマスクの上からさらに包帯を巻いている蕪城 聯合が刀を片手に立っていた。



「久しぶりだな、上位存在。」


「あぁ、久しぶりだ。この前の借りはきっちり返させてもらう。」



お互いに武器を構えて睨み合う。

剣の腕は互角、、、いや、エリスのほうが上かな?

でも蕪城にはその差を補う異能がある。


踏み出したエリスは驚くほどの速さで距離を詰める。体を捻りながら溜めを作り、相手の首を跳ねようと剣を振る。



「エリス、うご「はあ!!」」



聯合が得意の呼びかけで動きを止めようとした瞬間。

エリスは大声をあげてその声をかき消した。

高く通る声が辺りに響き、耳がキーンってなっている間にエリスの剣は吸い込まれるように聯合の首へと、、、



「ーーっち!」



吸い込まれる前に聯合は刀を振り上げエリスの剣を弾く。

エリスは追撃しようとしたが聯合が蹴りを入れてきたのでそれを腕で防ぎ、距離を取られてしまった。



「・・・当然、対策済みか。」


「当たり前だ。」



そう、エリスにはあの後呼びかけに対してどう対応すればいいのかを伝えておいた。


呼びかけとは相手に声を届けて無理矢理言うことを聞かせる異能。

例え耳を塞いでいたとしても声が届けば相手は聯合の言うことを聞いてしまうのだ。


ならどうするか、答えは届かなければいい。


相手の声をかき消すほどの声量で叫べば声は阻害されてこちらへ届くことはない。

ただ勿論半端な声量だと異能は発動するので結構頑張らないといけないんだけど、エリスは異世界で指揮を執っていたみたいだし大声を出すことは得意なようだ。


エリスは再び剣を構え直して息を吐く、俺はその隣に並んで銃を構えた。


すると、、、



「綾人、先にいけ。先ほどの衝撃で何かしら状況が進んだはず、、、。あまり悠長にはしてられない、足止めが現れたならなおさらだ。」


「・・・いいのか? 聯合はお前にとって相性は良くないだろ。それに増援が来ないとも限らないぞ。」



エリスは聯合を睨みつけたまま、顔を向けずに先に行くように促してくる。


確かに足止めが現れたということは何か時間を稼ぐ必要があるということだ。それなのにここでまんまと聯合に時間を取られているわけにはいかない。


エリスをチラリと見るが、彼女は鋭い視線で聯合の動きに細心の注意を浮かべている。


その目には不安や迷いは一切ない。



「任せろ、相手してやる。」


「・・・ふっ、頼りになるね。頼んだぞエリス。」



俺はそのまま出口を塞ぐ聯合の元へと走る。

聯合は刀を構えて迎撃しようとしてくるがそこをエリスが遮った。



「エリス!ど「邪魔はさせん!」」



声が届かないように叫びながらエリスは剣を振り下ろす。聯合は冷や汗をかきながら刀で受ける。


エリスのあの細腕のどこからあんな力が出てくるんだろうね。



俺はその隙に出口から部屋を飛び出し、そのまま間をすり抜け通路を走る。



勿論迷いはある。でもここであいつを信じれなければ俺は二度と背中を預けられなくなる気がした。



「こっちも期待には応えないとなぁ!」



地面を踏みしめ全力で駆け抜ける。

先に行かせてもらった信頼に応えるために、、、。




ーーー




「・・・ふぅーーーー。」



息を吐きながら剣を構える。

冷や汗が頬を伝い、気の抜けない緊張感が襲う。



・・・剣技だけなら負けてない。だがそこまで差があるわけでもないのにこちらは相手の口元にすら細心の注意を払う必要がある。もし呼びかけられてしまえばこちらは深手負うだろう。油断なんて一時たりとも出来はしない。



ゆらりと立ち上がった聯合は首をコキリと鳴らした。



「・・・ここまで簡単に出し抜かれるか。やれ、後で半殺しだな。聯合、構えろ。」



瞬間、聯合から殺気が溢れたと思ったら刀を上段に構えて一足で現れる。


ーーっつ!?


起こりが全く見えずに近づかれ、振り下ろされた刀をなんとか逸らす。

剣を引き、突きを放とうとすると相手が口を開こうとしたのが見えた。



「ふぅ、はあ!!」



話される前に声を上げて突きを放つ、しかしその突きは見事に弾かれてしまった。


が、弾かれたまま捻りを加えて斬り返す。


相手は反撃できずに防御を優先させるが、あまりの剣速に傷を負う。

しかしそれをものともせずに刀を振り上げ、攻勢に出てきた。

油断のできない威力が込められた剣閃にこちらもスピードを上げて斬り結ぶ。

その際も相手の口元を注視していたが、相手の口元がふと袖で隠れた瞬間、小さな声が耳に届いた。



「エリス、動くな。」


「ーーっ!!」



ーービキッ!



突如として体が石化してしまったかのように動かなくなる。しまったと思った瞬間には相手の剣はこちらに迫っていた。



ーーズガンッ!



「・・・ん?」



聯合は相手の肉をきる感触を感じるはずだった刀が硬質な何かに当たる感触に目をしかめる。

事実エリスは斬られることなく吹き飛ばされて向こう側で土埃に紛れていた。


エリスはそこからゆらりと立ち上がり、一部だけ顕現させた鎧を消し去る。


その姿を見て聯合は笑みを深くした。



「くはっ! 前よりもやり辛えな。凌がれるとは思わなかったよ。」


「ふん、ゴブリンよりも軟弱な一撃だったな。」



エリスが言い捨てたゴブリンという単語に聯合は首を傾げたが、エリスは気にせずに突っ込む。


その速度は先程よりも上がっており、防ごうとした聯合を飛び越え、後ろの壁を足場に背中に向かって斬りかかる。



「聯合、振り返れ!」



相手の号令に合わせて聯合の体が無理やり急旋回する。背中を狙った一撃は見事に防がれたが、攻撃の手を緩めることはせずに怒涛の連撃を浴びせた。



・・・なるほどな。相手の呼びかけは自分も能力の対象に入っているのか。



明らかに無理だと思った攻撃にも対応してくるとは随分と応用の利く異能だ。



スピードと威力を乗せて斬り結ぶ。

相手も冷や汗を流しながら対応してくるところは流石だ。ただこちらも引き離せないことに焦りが出てくる。



・・・鎧は一部顕現でも霊力の消費が大きい。まだこの前より僅かしか回復してない今、連発はできないな。



元々薄暗い事もあって敵の次の攻撃が読み辛い。

右下から斬り上げられた刀を避けたが、相手は今まで両手で握っていたはずの刀を片手で振っていることに気づく。


嫌な予感を感じて聯合の片手に注意を向けるとナイフが握られ、胸に向かって投擲された。

避けられない速度ではなかったので余裕を持って回避したが、その際相手の口元から注意を外してしまう。



「エリス、気絶しろ!」



言われた瞬間、景色が歪んで意識が保てなくなる。


グラリと倒れそうになったエリスに聯合の凶刃が迫った。



ーーズダンッ!



「ーーっう、うぁあああああ!」


「な!?」



が、エリスは倒れる直前に片足を前に出して踏ん張った。目は鋭く相手を見据え、剣の刀身を握りしめた左手からは真っ赤な鮮血が垂れる。


そのまま鞘から引き抜くように一瞬の隙ができた聯合に向かって剣を振り抜く。



「纏え! 誉火!」



鮮やかな炎を灯した刀身は、即座に反応してのけた聯合が攻撃を防ぐために置いた刀を溶かしながら斬り飛ばし、片手とともに相手の胸を切り裂く。


上手く一歩下がられてしまったため両断は出来なかったが出血が酷く、もはや意識を保つことは困難だろう。


そう、思ったが、、、



「聯合、止血しろ!」



相手の叫びが響いた途端に斬り裂かれた皮膚はバチンッ!と合わさり血が止まる。

エリスはその光景に目を見開いて苦虫を噛み潰したかのような表情を浮かべた。



「ーーっ! 無茶苦茶な!」



異能の出鱈目さ加減に焦りを感じながら追撃しようと踏み出す。片手は斬り飛ばしたし、刀も折れた。相手の戦闘力は大きく削がれたはずだ。


しかし聯合は折れた刀をもう片方の手で握りしめ、投擲。


刀はエリスの肩を掠めるが、気にせずエリスは食らいつく。


が、突如として横合いから殺気を感じ、大きくその場から飛び退いた。

先ほどまで立っていた場所を爬虫類のマスクを被ったグリーンパイソン構成員が武器を振り下ろす。



「増援か、、、!」


「蕪城さん! ここは任せて逃げてください!」



すぐに標的を変え、足止めに来た敵を斬ろうと踏み出した、、、。



「エリス、動くな!」



ーービキッ!



呼びかけによって動きを止められ、その隙に聯合は出口から通路へと飛び出し走り去る。

その場にはエリスと残された構成員、そしてその仲間が数人集まっていた。


エリスは唇を噛み、怒気をあらわにしながら剣を構えた。



「そこをどけ! 邪魔をするなら斬り捨てる!」



まるで猛禽類の様な獰猛な光を目に灯らせ、相手を威圧。構成員達は冷や汗を垂らしながらも上司を逃がすための時間稼ぎを行う。



そして稼がれた数分の間に、エリスは聯合を逃してしまった。

汗を拭いながら、エリスは一つ息を吐く。



「・・・まぁよい。あやつももう前線には復帰できんだろう。私は急ぎ綾人を追うとするか。」



取り逃がしてしまった不覚はあっても先ずは綾人との合流を目指す。

エリスはすぐにそう判断を下し、管制室を後にした。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ