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異世界少女と無能の現代異生活  作者: たんぽぽ3号


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異常具



ーーコソコソコソ



「・・・こんな露骨に見つめてバレないか?」


「ん? あー、片方は視線を捉える異能使いだけど俺には意味ないし、俺が触れてればお前にも効果は行かないから大丈夫だよ。」



そう言いながら幾何学的な螺旋形状をした屋内アトラクションの端から顔を出し、怪しく立ち尽くす二人組みを眺める。



「あれほど不自然に立っていれば怪しまれるだろうに、、、。」


「異能に頼り切った異能社会の弊害だな。感知系や隠行系の異能者は警戒や警備の際に異能を用いる。そのぶん異能が通じないと気配を消したり、観察する能力が訓練された人より劣るんだよね。」



カーナビが発展すれば道を覚える能力が劣化するみたいなね。

便利な機能に依存しすぎれば地力は落ちる。



「なるほど、つまり片方は知覚系の異能を持っていて、もう一人は隠密系か、、、。お前は本当に異能者の天敵だな。」



・・・別に何もしてないのに天敵って言われるのも複雑だな。



なんとも言えない顔をしながらしばらく見つめた後、特に動きがないことを確認して踵を返した。


その後をエリスがトトトっと追ってくる。



「行かないのか?」


「行けねぇな。セキュリティが厳しすぎるんだよ。個人を認証するために通路全体にかけて体温に体重身長、歩くスピードのブレに歩幅から体重移動まで事細かにデータを取って判別してるんだ。」


「それほどか、、、。む? なら何故こんな人が集まる場所に施設を建てているのだ? もっと人気のない山奥に建てれば良いものを。」



何の気なしにも無く呟かれたエリスの言葉に俺は立ち止まった。



・・・そう言えばなんでだ?



なんとなく大掛かりな設備を作るのに利益を回収でき、疑われることなく大掛かりな施設を作るのにピッタリだからだと思っていたが、開発しているのは国防という国の守りの要である組織だ。


もたらされた情報から察しても軍事兵器の可能性が高い。


もし暴発したりして大きな事故を起こせば多くの市民を傷つけ、国への不安が募ってしまうはずだ。


無視しての強硬や抑圧することも可能だが、軋轢を生まないためにもそれらの対応は避けたいはず、、、。



「・・・何を見逃してる?」



口に手を当てて思わず呟いた。


そして記憶を遡り、一つの可能性に思い至った。


少し楽観的だった考えは鳴りを潜め、思わず怒りと焦燥が湧き上がり、顔を酷く歪める。

その雰囲気の変化にエリスも戸惑っていた。



「・・・ど、どうした?」


「まさか、『名奪の石碑』、、、? いや、あれは誰にも見つからないはず、、、。ただもしあれをこの人が大勢集まる場所で解き放てば、、、胡志田、奴の、思惑は、、、。」



・・・くそ、何がグリーンパイソンだ。確かに厄介だが、国防が隠し持ってる物のほうがはるかに危険じゃないか。



僅かに漂ってきた災害の香り。

見過ごせば世界を壊しかねない惨劇が訪れる。


だが俺達は対策局だ。

対策し、事前に災害の目を摘み収束させる。



「・・・やるしかないか。」



誰に聞かせるでもなく呟いたその一言でのまれそうになる心を奮い立たせた。





ーーー




今までどんな状況であっても余裕のあるように見えた綾人の表情が少し寒気を感じられるくらい怒りに染まっていた。


一瞬だけ気後れして口籠ってしまったが、何かただならぬ事が起きている気配を感じ、不安を押し潰して問いかける。



「綾人、何か分かったのか?」



すると彼はこちらを見て少し目を見開いた後、自嘲気味に笑った。



「・・・悪い、勝手に考えて勝手に固まってた。杞憂だったらいいんだがな。」



綾人は空気を変えるようにそう言うが、どこか確信でもあるかのような表情に焦りが感じられる。

ただそれが何なのか私には分からなかった。



「その名奪の石碑とは何だ?」



聞くと綾人は億劫そうにため息をつく。



「話すと長いんだよな、悪いけどかいつまんで伝える。当時の出来事とかは後で記録を読んでくれ。」


「うむ、わかった。」



何が起きたのかも気になるが、今は非常事態で長々話している時間はない。まずは危険性と何が問題なのかを理解するべきだろう。



「ある国で森の奥深くに黒い一本の石碑が発見されたんだ。それだけなら特に昔の建造物とかで注目される程度で収まるはずだったんだが違和感が重なってな。」


「違和感?」


「あぁ、気付いたのは偶然だが周辺に妙に生活感のある人が一人も住んでいない村が発見されたんだ。それも複数、、、。」



・・・確かに、一つでもそんな場所があれば誰だって不思議に感じる。


でもそれを調べようと考え、行動に移したのは彼らが異常を気に掛ける対策局だからだろう。


私は続きを促すように綾人の目を見つめる。



「その違和感のある村を地図でマークしながら数を把握していたらある地点を中心に広がる様に村が分布されている事に気付いてな。

そこはただの薄暗い森だったんだが、森の真ん中にある唯一光の射す湖の畔に真っ黒な石碑が建っていたんだ。」


「ふむ、、、それは、不気味だな。」


「あぁ、ほんとにな。」



綾人は近くの段差に腰掛け、何やら端末を取り出して操作を始める。急にどうしたのか気になったが、綾人はすぐに端末をしまった。



「それが名奪の石碑。破壊不可能で座した周囲から名と共に命を奪う。」



彼の答えに思わず目を見張る。

それが今この地下にある、、、嫌な予感をヒシヒシと感じ思わず冷や汗が垂れてきた。



「名とともに命を奪うとはどういうことだ?」


「石碑から一定の範囲内に入ると石碑に名が刻まれる。その刻まれた名前は不定期に突然線を引かれ、その人物を消し去るんだ。」


「け、消し去る!? そんな事になれば大騒ぎだろう!?」


「普通はな、だが名を消すっていうのはその存在を表すものすべてを消し去るということと同義なんだ。つまり誰にも知られずただただ人が減っていく。」



恐るべき力に怖気が走る。

国防はそんな物を兵器にしようとしているのか、、、?


ただそこまで考えて少し違和感を感じる。



「いや、待ってくれ。扱いづらすぎないか? 相手を範囲内に入れたとして、覚えてないなら消せたかどうかも分からないのだろう? それに不定期に線が引かれるなら時間もかかるしその間に範囲外に出てしまえばいいではないか。」


「いや、仮に範囲から出ても刻まれた名前は消えたりしない。そして厄介なのは刻まれた名前は外部から消すことも可能なんだ。」



綾人の言葉に思わず目を見開く。

それはつまり刻まれた名前を誰かが意図的に消すことが可能だということを意味する。



・・・そんなの、完全犯罪仕放題ではないか。



「だがそれをどうやって兵器として利用するのだ? 持ち運びも石碑と呼ぶなら簡単ではなかろうし傷つけるのだって難しかろう。」



あまりに凶悪な権能に、間違いがあってくれと願いを込めて不都合な点を告げる。


しかし、綾人はそれを聞いて苦く笑いながら首を振った。



「転送条件があるんだ。その条件が揃えば石碑は自主的にそこに現れる。傷つける方法はすぐに思いつかないが、まぁやり方はあるだろう。」



何か心当たりでもあるのか綾人はそう言って首を振る。ドンドンと消されていく否定要素に焦りが生まれていく。



「ま、まだそれが使われてると決まってるわけじゃないのだろう?」


「まぁな、ただ国防だけは唯一名奪の石碑の存在を知り得ることができるんだ。」



・・・? どういうことだ?


そんな凶悪なものを他の組織や軍は一切知らないということだろうか? 調べたのは対策局だろうし何故国防だけが、、、?


意味がわからず眉をしかめていると綾人は一つため息をついた。



「人の開発できる兵器に対策局は動かない。もし国防が開発しようとしてるのが通常兵器なら調査任務なんて発令されるわけないんだ。だとしたら特殊な『異常具』を使用してる可能性が高い。・・・そして、国防が保持してる危険度Level5の異常具は名奪の石碑だけなんだ。」


「・・・? 異常具とは何だ?」



知らない単語が聞こえて思わず聞き返す。



「あぁ、異常具は人が作り得ない日常からはみ出した不自然な道具の事だ。Level1程度なら大した性能もないし危険も少ないが、Level5は下手したら人類が滅ぶレベルの危険兵器になりえる。」


「な、なぜそんな物を兵器化しようと、、、。」


「知らねぇよ、トチ狂って頭でもおかしくなったんじゃねぇ? あれほど厳重に施した封印を解いてまで使おうとしてる理由は俺にもわからん。」



綾人は苛立ったように立ち上がって懐から飴を取り出して口に含む。軽く投げ渡されたパッケージにはイチゴ練乳味と書かれていた。



「ま、話は逸れたが名奪の石碑の管理は色々あって完全に国防に投げちまってたんだよ。昔だったら兵器利用しようなんて考えるやつはいなかったはずだが、人事移動もあったしな。」



至極残念そうにため息をついて綾人は飴を噛み砕く。

そしてポケットに両手を入れて立ち上がった。



「起こっちまったもんはしゃーない。いい加減動き出さないとドンドン状況が複雑化しそうだし俺たちも地下に行くぞ。」



綾人の言葉に私は立ち上がって一つ頷く。

どうやら状況はあまりよろしくなさそうだし先程のような余裕はなくなったのだろう。


今一度気合を入れるために両頬を張り、綾人の後を追った。




ーーー




といってもどうするかな。



先ほども言った通り警備は厳重でネズミ一匹入る隙はない。

今攻め込んでいるグリーンパイソンがセキュリティを奪い切るまで待つか? いや、表面上のシステムは奪えても深層システムに関してはただのテロリストが奪えるとは思えない。


なら別の侵入方法を探らないと、、、。



「地上の電気でも消すか?」



サラリと呟いたが簡単な話では全くない。

非常用電源なんて腐るほどあるし一つ落とした所でなんの問題もないほど電気設備は分けられている。

もし消すとしたら片っ端から消していけばいずれ電気は消せる


が、端から復旧されていくだけだろう。


正直セキュリティを強引にぶち壊しながら侵入したくなるが、そんな事をしてしまえば俺達の関与は決定的になる。対策局と国防の溝は更に深くなるだろうし、騒ぎも大きくなるだろうね。



「・・・仕方ねぇ、内側から行くか。」


「内側と言うと地下か?」


「あぁ、外側からの侵入は警備が厳重すぎる。それなら内側からグリーンパイソンの襲撃で混乱してる最中を突っ切ろう。」



外から入るよりは内側のほうが幾分かセキュリティは甘くなる。その分道のりは遠いし巻き込まれるだろうがここで手をこまねいているよりかはマシだろう。


顎に手を当てて少し侵入経路を考える。


どこから入ろうか選択肢を潰していき、一つため息をついて安牌を取ることにした。



「・・・よし、地下行くか。」


「おう?」





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