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異世界少女と無能の現代異生活  作者: たんぽぽ3号


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30/48

侵入



「・・・あっつ。」



多くの人ゴミに流されながらテーマパーク内に流れ込む。人の多さと強い陽射しに吐きそうになりながら俺とエリスは広場へと押し出された。



「まさかこれほど人がいるとはな。ここから大臣を見つけるなど至難の業だぞ。」


「・・・めっちゃ楽しんでない?」



若干グロッキーになってる俺にカチューシャと両手にチュロスを持ったエリスが一本渡してくれた。

いつものスーツではどこの人間かモロバレなので俺は白黒のありきたりなシャツとズボンに少しお洒落でブレスレットとネックレスをつけている。

エリスは暑いと感じたのか夏っぽいストライプのワンピースを着ていた。



「何を言ってる、こういう場所では楽しんでないほうが不自然だろう。私の霊力だって楽しみが原動力なら楽しまないとな、というわけであれに乗ってみないか!?」



そう言ってエリスが指差したのはでっかい星の輪っかを何個もくぐるようなジェットコースター。

イルシオンパークは『幻想』を意味していて人々が夢見る世界を体験させるというのがテーマの遊園地になる。


今見てるコースターは子供用の軽いやつだが、普通に酔いそう。



「お前、エレベーターに拒否反応見せてたのはどこいったんだよ。つか、俺は眠いんだ、さすがにそろそろ仮眠を、、、無理矢理連れてくなー!」


「騎士たるもの挑戦して然るべき! 馬やドラゴンに乗るようなものだろう!」



情けなく「うわぁーー、、、!」と引きづられて行く俺を遠くから見ている者がいた。




・・・・・。

・・・・。

・・・。



『ここからーーザザッ!を見つけるなどーーザザッ!業だぞ、、、。』



「・・・っち! ノイズがひどいな。今までこんな事なかったのに、、、。」


「今日はいつもより人が多いし、仕方ない。犯罪者共による妨害が既に働いてるのかも知れない。引き続け聞き続けろ。」



2階にあるカフェテラスで一般人に紛れ込んだ2人の人物は可愛い星のキャラクターがついたドリンクを飲みながら居座っていた。

2人ともポロシャツという若干不自然さが目立つ中、1人は不機嫌に1人は仏頂面を浮かべている。



「今のは若干怪しかったんだけどなー。キャラクターを探してるだけかも知れないし敏感になりすぎかな?」


「まだまだ長い時間張り続けるんだ、へたるなよ。」


「舐めないでくださいよ、俺だって長い間訓練受けてきたんですから。」



国防軍の2人は任務をこなす為にその場を張っていた。


このパークは入場の際にゲートを通ると自動で人物を認識し、料金を引き落とされると同時に危険物を検知するようになっている。

これを落とすには地下の制御室と中央監視室に侵入する必要があった。



「まぁ先ずあの二つは落とせないでしょ。地下には国防軍の特殊部隊が張ってますしね。」


「・・・万が一がある、警戒しとけ。」


「はーい。」



2人はその場で監視を続ける。

その水面下では、既に事態は動き始めていた。




ーーー




暗闇に包まれる地下通路。

ただ地上に通じ、唯一の進入通路となるここは厳重な警備が敷かれていた。



「・・・定時報告、地ー弐、異常なし。」


「同じく地ー参、異常なし。」



地下水路ではフルフェイスで黒い装備で固めた2人が周囲をライトで照らしながら探索していた。水路は薄い照明に照らされているが決して見やすくはないのでライトの明かりが頼りになる。


2人は決して油断はしないで常に周囲を警戒していると、、、



ーーカツッ



前方から足音が響いてきて、すぐに片方が手を上げてお互いに前方にライフルを構えた。



「・・・警告は?」


「無しだ、視界に入り次第射殺しろ。」


「了解。」



端的に伝え終えて互いに近づいてくる相手の出方を伺う。



ーーパシャっ



その瞬間に横合いの水路の水が膨れ上がってそこから合羽に身を包んだ爬虫類マスクの人物が隊員の首目掛けて銛を突き込んできた。


が、その襲撃を隊員は半歩下がって回避、構えていたライフルを横合いに向けて即座に引き金を引く。

響き渡る銃声と共に襲撃者は血飛沫を上げながら再び水路へと沈んだ。


その隙を狙って足音を鳴らしていた鉄のグローブをつけた別の襲撃者が拳を突きこんでくる。拳は全然向こうで振るわれたが、その衝撃が波のように広がって広範囲にダメージを与えた。



「・・・威力は許容値内だ。異能の使用許可は?」


「降りてない、現存の装備で対処する。」


「了解。」



隊員の2人は少しよろめいたが一人は近くの物陰に走り、もう一人はその場で射撃を開始。

襲撃者は銃弾を少しの間衝撃で防いだが、一人がリロードに入った瞬間に隙を突こうと踏み出した瞬間、影から追撃されて捌ききれなくなり撃沈。



「・・・熱源感知、十時の方向。」


「了解。」



隠れた方が確認した方向に向かって射撃。

向こうで影に隠れて狙撃しようとしてた襲撃者は姿を見せることなく処理された。



「反応は?」


「クリア、引き続き警戒を頼む。」



そう言って一人は監視室に襲撃と対処を終えたことを報告した。



ーーパァンッ!



「ーー!」



報告を終えて立ち上がろうとすると、立って通路を警戒していた仲間の頭が弾き飛ばされる。

隠れながら即座に銃を構えて、無線を繋ごうとしたが手を何かに貫かれた。



「ーーっ! 鉄球!?」


「さすがぁ、国防軍の隠し部隊だなぁ。折角引き連れてきたのにぃ、台無しだぁ。」



そう言って現れた男はくしゃくしゃのシャツにサンダルの要注意人物であった。



「ーーっ佐巳月!」



銃を構えて発砲しようとした瞬間、銃が暴発。

弾丸は自分の頭を跳ねて血を咲かせた。



ーーペタペタ



「・・・あー、やっぱりバレたかぁ。そりゃあ、心肺停止したらわかるようにしてるわなぁ。」



そう呟きながら佐巳月は歩きながら暗闇の端にあるドアに黒球で穴を開けて侵入する。



「非常ドアってのはぁ、万が一を想定してアナログな施錠されてるもんだから入りやすいなぁ。」



立ち去った後、直ぐに他の隊員がその場を確認しに来たが、それは既に一人の侵入を許した後であった。




ーーー




「標的はどこまで入り込んだ?」


「現在はAー3を通過中。既に戦死者は12名に及びました。」


「異能の使用許可は?」


「数分前に許可がおりました。」


「・・・ようやくか。黒地以外にも黒海、黒天を向かわせろ。」


「はっ! 直ぐに通達します。」



大量のモニターとPCに囲まれ、大勢の人たちが慌ただしく動いている。

真ん中に立った頭を光らせた司令 奮木は捉えどころのない侵入者に苛立っていた。



「侵入者はたった一人だ! もうすぐ大臣も参られる、即刻対処しろ!」


「「「はっ!」」」



ーーー



ーーパキャッ



「一人にここまで攻め込まれるなんざぁ、国防軍も落ちたなぁ。」



設置されているカメラやセンサーを次々に破壊しながら佐巳月は悠然とした歩みで進む。その動きに緊張感など存在しない。


水路を上がって清潔感のある白の通路を進んでいると死角から敵が一人滑り込みながら銃を構える。

佐巳月は動じることなく黒球を操作し、銃弾のような速度で相手に飛ばした。


バチィンッと弾かれる音と共に相手は「ぐっ!」と声をあげる。



「やっぱ硬てぇなぁ。まぁ、貫けなくてもやり方はあるがなぁ。」



黒球を周囲に漂わせ様々な角度から射出し、相手のバランスを崩し、その間に接近して首を掴んだ。



「がっ!」


「じゃあなぁ。」



ーーバンッ!



と弾ける音と共に頭部が真っ赤に染まって崩れ落ちる。


佐巳月は黒球のサイズを自在に変えられる。小さく縮小した黒球を首元からヘルメットに侵入させ、それを巨大化し、相手の顔面を押しつぶすことで硬い装備を突破した。


そのまま佐巳月はゆらりと歩き出そうとしたらガシャッ!と見えない何かに拘束されて地面に倒れる。



「・・・っち、許可おりたかぁ。」



いつの間にか後ろに接近していた3人の敵がこちらに銃を構えていた。

一人はフルフェイスを脱いで片目でこちらを睨みつけている。



・・・拘束系の異能かぁ。



「異能を使わせるな! 撃、、、がぁ?」



発砲を命じようとした一人の胸部から鋭い円錐状の先端が生えてきた。

背後から刺し貫かれた隊員はそのままズルリと倒れる。


横にいた隊員は即座に銃口を横に向けて引き金を引き、いつの間にか近づいていた別のグリーンパイソンを撃ち抜いたが、その隙を狙われてフルフェイスの中に小さな黒球が入れられる。



「しまっ、、、!」



ーーボキュッ!



「くそっ!」



残った1人は自爆覚悟で手榴弾のピンを3つ引き抜く。

轟音を響かせながら通路を破壊した。



「佐巳月さーん、危なかったですね。これは貸し1じゃないですか!?」


「対処はできたなぁ。にしても自爆とは、怖い忠誠心だねぇ。」



飛び散った破片は先ほどの襲撃の際に隠れ潜んでいたもう一人のグリーンパイソンの異能によって阻まれる。散った破片は余すことなく粘着性の高いスライムに飲み込まれていた。



「またまた〜! いやー、それにしても連中は佐巳月さんに釘付けですよ! ちょっとした変化も見落として馬鹿ですよね〜!」


「あんま調子のんなよ〜。油断すると足元すくわれるからなぁ。」



仲間を失っても動じず、興味すら示さない。

まるで道具かのように使えなくなったら切り捨てる。


どれだけ四肢をもがれようと、獲物へ向かって忍び寄る。それがグリーンパイソンという組織だった。



強化ガラスの扉をぶち壊しながら中に入るとオフィスのような空間に出る。



すると、、、



ーーガシャンッ!、ガシャガシャガシャ!



「え、なんすか!?」


「・・・閉じ込められたかぁ。」



周囲をシャッターで塞がれる。

試しに黒球を飛ばしてみるがシャッターはびくともしない。



シューーーー、、、



少し間を開けて何か空気が入り込むような音が聞こえてきた事に佐巳月は面倒くさそうに顔を歪めた。



「毒かぁ。」


「そんな悠長にしてる余裕ないっすよ! 早く逃げないと!」


「壁ぇ溶かせるかぁ?」



言われた男は手をスライム状にして壁に当てるが音がするだけで穴が空いたりしない。


佐巳月はしゃーないと、噴射口を破壊しガスの流入を防いだ。



「しゃがむなよぉ、死ぬからなぁ。」


「ひ、皮膚に触れても平気なんすか?」


「そんな劇物取り扱わねぇよ。事故が起きても重大な被害がでねぇようにある程度で留めてんだろ。後を考えてる大人の考えだなぁ。」



ただ吸い込めば重篤な被害を及ぼすだろう。

どうやってここから逃げ出そうか考えていると何かが外れる音と共に天井が勢いよく落ちてきた。



「・・・馬鹿だなぁ。」



ーーズガアンッ!



ーーー



隔離されたオフィスを囲むように隊員たちが並んで銃を構える。


その中のひとりが片手を上げるとシャッターがゆっくりと開かれていく。


シャッターと一緒に天井も上に上げられていき中の状況が把握できるようになった。


破壊されたデスクやパソコン。


その中央にゲル状の液体が散らばっており、宝石のようなものが割れていた。


隊員達は警戒しながら液体に近づく。



「・・・強い酸だ、触るなよ。」


「もう一人はどこへ?」



液体は散らばっており、決して動く気配はないがもう一人いたはずの男の痕跡が見当たらない。

酸で溶けたのかと思ったが緑色のスライムの下に黒い何かがめり込んでいることに気づく。



「・・・! 総員、構え!」


「遅ぇよぉ。」



巨大な球体が膨れるように破裂し、中から小さな黒球が手榴弾のように炸裂する。

狭い密室から高圧力で押し出された黒球は隊員たちの肉を抉り、甚大な被害を与えた。



「う、うあぁ、、、。」「ゴフッ、ヒューヒュー、、、。」

「づ、、、ぁあ!」「腕、、、?」



数名は死亡、残った者たちも瀕死の重傷で立っていることもままならない。


その場に立つのは佐巳月ただ一人。


佐巳月は真ん中で煙草に火をつけ煙を燻らせる。



「直ぐに結果を求めるからこうなんだぁ。閉じ込めときゃぁ抜け出せなかったのになぁ。」



正直、佐巳月の火力では壁を破ることはできなかった。あのまま閉じ込められて酸欠にでも陥れば不味かっただろう。


彼等は直ぐに結果を出そうと畳み掛けたためボロが出た。



「運がぁ悪かったなぁ。」



そして佐巳月は地面に広がる酸性のスライムを見下ろす。



「おめぇの酸のおかげで助かったなぁ。貸し1にしてやるよぉ、返せねぇけどなぁ。」



それだけ言い残してうめき声をあげる隊員たちにとどめを刺しながらその場をあとにする。

すると、制御室とプレートが書いてある部屋にたどり着いた。


扉の前には黒い端末が付けられている。



「暗証番号にキーが必要かぁ。まぁ対策してねぇわけないけどなぁ。」



言いながら軽く黒球を当ててフレームをズラして外して露出した差込口にUSBを差し込むと直ぐに「承認しました。」と言う電子音声が流れて扉が開く。


制御室という名のサーバールームで佐巳月は耳に手を当てた。



「俺だぁ、ここからどうすりゃあいい?」


『お、さすが、早いですね。えーと適当にUSBを挿し込める所に挿しといてください。そうすれば異能でちょちょっとできますので。』


「わかったぁ。」



佐巳月は言われた通りにUSBを差し込み、壁に背を預ける。



「挿したぞぉ?」


『・・・え、本当ですか? おかしいですね。俺の異能は設備に干渉できれば場所なんて関係ないはずなんですけど、、、。』



無線の向こうから戸惑うような声が聞こえて、佐巳月も首をかしげる。無線の向こうにいる奴とは何回も仕事をしたことがあり、彼の異能の利便性の高さはよく知っていた。


不自然に思ったので適当に設備を見回っていると、一箇所だけ不自然に塞がれた差込口があった。挿さっていたカバーを抜いて眺めていると再び無線がつながる。



『おっ! 侵入できました! 後はこっちで出来るので任せてください!』


「・・・あぁ?」



何故かカバーを外した途端に異能が発動したらしく、向こうは忙しそうに通話を切った。

残された佐巳月は手に持ったカバーを眺めて鼻で笑う。



「・・・のやろう、来てやがるなぁ? こりゃあ、予定通りにはいかねぇかぁ。」



そう言ってカバー放り投げて踏み潰す。

佐巳月は目を鈍く光らせながらこの場をあとにしたのだった。




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