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異世界少女と無能の現代異生活  作者: たんぽぽ3号


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悪意の渦中



乃之崎宅はよく見る田舎の瓦屋根の平屋ではなく、どちらかと言うと現代風の様相をしていた。


オシャレなコテージみたいな感じだね。


中に入って挨拶をすると、夕食までごちそうしてもらった。申し訳なく思いつつもおいしい家庭的な料理に感動し、お腹も膨れてちょうどよく眠気が襲ってきたところ、俺と秋は寝室に案内してもらう。


・・・ちなみにエリスは歌奈ちゃんに「かくれんぼしよう!」と連れていたれたよ。


少し前に下の階から唯差さんの「もう暗いから家の中でしなさい!」と怒る声が聞こえてきて、2人だけの家の中でのかくれんぼが始まっていた。


歌奈ちゃんはそそくさと隠れてしまったため、今はエリスがオロオロしながら探し回っている。

が、エリスは「人の家を勝手に物色するのはあまりに気が引けるのだが!?」と叫び、唯差さんからいいと言われながらも恐る恐る探していた。



「いやー、小さい子に好かれるのは心根が優しい証拠だね。ほら、だって僕と君には寄りつかないもん。」


「はっはっは、同じにすんなよ、俺はかくれんぼだったら相手を5秒で見つける自信がある。」


「・・・そういうとこだよ。」



何言ってんだ、前に孤児院へと情報収集しに行ったとき、子どもたちの相手をしといてくれって言われて全員を泣かせ、帆哭さんに泣かされた経験がある俺だぞ?



「ま、おかげでこれならゆっくりできそうだね。・・・じゃあ、明日は増えてる原因でも探ってみようか。増殖だったら元の素体、繁殖だったら痕跡、異能だったら使用者だね。」


「原因は盆田さんが所有する山じゃなくてもっと他にあるだろうな。一応明日は許可取りもするべきか、無許可で入っても印象悪いし。」



対策局は事件対応のためにあらゆる私有地や禁止区域への立ち入りが許可されている。それによる侵入で処罰されることはないが、許可を取るのと取らないのでは印象が一気に変わるので取れれば取ったほうがいいことに変わりはなかった。


あ、ちなみに悪質な侵入だと一般の方よりもはるかに重い厳罰が課せられるよ。



「あしたもやまいくの?」


「いやだからその話をし、、、て、、、?」



なんで同じ事を聞かれたのかと隣を見るといつの間にか歌奈ちゃんが俺と秋の間にかがみ込んでいた。

耳を澄ますと下の階からエリスが探す声がまだ聞こえていたのでかくれんぼの最中ではあるらしい。



「・・・歌奈ちゃん、かくれんぼは?」


「したにかくれてないのに、うえにこない、ひま」


「・・・あぁ。」



・・・でもね歌奈ちゃん、人の家で勝手に2階に上がろうとするのはなかなか勇気がいると俺は思うよ。



「ねぇねぇ、やまいくの?」


「ま、仕事でな。」


「じゃあズルズルくんに会いに行くんだ!」



ズルズルくん?


俺と秋は真顔になって歌奈ちゃんの方に座り直す。

昔から子供が忍び込んだ場所で異変を見つけるということはよくあった。

大人では入ろうとしない、入ることをためらう場所も子どもの冒険心には関係ない。そしてそこから国を揺るがすような異変が見つかることもあるのだ。



「なあズルズルくんってなんだ?」


「ズルズルくんはズルズルくんだよ!」


「人か?それとも動物?」


「ほそくてながいの!」



・・・うん、でも正確な情報が手に入るとは限らないけどね。



「えーと、横に長かった?」


「うーんとね、あるいててーほそくてぼそぼそしゃべってたんだけどー、ここらへんからながいものをズルズルしてた! だからズルズルくん!」



歌奈ちゃんはここらへんと言って腰のあたりを指さしてる。


・・・腰から何か生えてるのかな?


そのままの文面から受け取ると怪物のほうが近いかも知れないと思って眉をしかめる。



「どこらへんにいたのかな?」


「たどころさんのやまだよ!」



田所と言われて端末の資料データを確認すると、集落の一番奥地に田所宅と記されてあった。

彼が所有している山はだいぶ広い、車で登れるわけでもないから探索するにしても時間はかかるだろう。

でも子供の足で行ける範囲には限界があるしそこまで奥地ではないはずだ。



「よし、明日は田所さんと会ってみるか。」


「そうだね、むやみに山を歩くよりは有益だと思う。」



ようやく方針が定まったので気持ちよく休めそうだ。

というわけでもう寝たいがここに歌奈ちゃんがいる以上、寝られそうにない。


なのでこっそりと端末を操作してエリスに連絡しておく。

すると、彼女は気づかれないようにそっと登って来て、気まずそうに顔を出した。



「あー!やっときた!」


「いや待ってくれ、下だけではなかったのか?」


「・・・? そんなこといってないよ。」



真偽は知らないけど何か手違いがあったみたいだね。

すでに何回戦か終えた後みたいだしもうそろそろ終わってもいいと思うよ。


そしてかくれんぼの終わりを察したのか唯差さんも顔を出す。



「歌奈、もう寝るよー。」


「えー、まだあそびたいー。」


「そう言って声に元気がないでしょ。ほらおいで。」



唯差さんにそう言われると歌奈ちゃんは素直にトコトコ歩いて手を繋がれる。歌奈ちゃんは軽く手を振りながら、そして唯差さんはペコリと頭を下げて下の階へと降りていった。



「やれやれ、子どもというのは凄い体力だな。私でも疲れてしまうぞ。」


「お前の場合は気疲れだろ。」



というか客室は2階に一室しかないみたいで必然的にエリスと俺たちは同室になる。まぁ元々車中泊しようって話だったし変わらないけどね。


明日の予定をエリスとも共有して寝に入る。

外泊が多いので特に寝れないなんて言うこともなく、俺たちは次の日を迎えるのだった。




ーーー




朝日で目が覚めて、下に降りるとすでに起きていた佑さんと唯差さんがコーヒーを飲んで優雅な朝を過ごしていた。

佑さんはこれから車で街まで降りて手芸品を出してくるらしい。いつもはネットかここまで買い付けに来てもらっているみたいだけど、今日はお得意さんに直接卸すんだって。



「おはようございます、よく眠れましたか?」


「ええ、お陰様で、ありがとうございました。」



挨拶を終えると、唯差さんが朝ごはんまで用意してくれた。あまりに至れり尽くせりで申し訳なくなるが、ご厚意を無下にするわけにもいかないので美味しく頂く。・・・てかマジで美味いな。家庭的な温かい味で泣きそうになる。


腹ごしらえも終えて、田所さんのお宅へと向かおうとすると、まさかの障害があった。



「いーーやーーーあーー! あそぶのーー!!」


「歌奈!いい加減にしなさい!お姉さん達はこれからお仕事なんです! 邪魔しちゃいけません!」



なんと歌奈ちゃんが家を出る直前に腕をジタバタさせながら駄々をこね始めてしまった。

それを唯差さんが引き剥がそうとするが泣き止む気配がない。


俺達はどうしようか顔を見合わせる。

子供の駄々を通しちゃうとわがままに育っちゃうかも知れないが、乃之崎夫婦にはお世話になってるしなー。


横のエリスをチラリと見ると首を傾げられた。



「あー、エリス、今日は歌奈ちゃんと遊んであげられるか?」


「む? 構わんが、仕事はいいのか?」


「取り敢えず今日は許可をもらうのと軽い調査だけでやめようと思ってるし、僕と綾人で平気かな。」


「ふむ、それなら今日は任せる。荒事になりそうなら連絡してくれ。」



ひゅー、実際、荒事になったら一番頼りになりそうなのが貴女だから不思議。見た目は一番細いのにね。


何度も申し訳なさそうに頭を下げる唯差さんにエリスを預けて俺と秋は集落の最奥にある田所さんのお宅を目指した。


何軒か家の前を通り過ぎると住人のおじいちゃんおばあちゃんが手を降ってきたり挨拶してくれる。その挨拶に笑顔で返しながら、そっと集落の様子を確認した。



「・・・所々、人気のない民家があるな」


「ない民家は行方不明の申請が出されてるね。まぁ元々人口が少ない地域ではあるからいなくなっているのは3軒くらいだけど。」


「・・・3軒もだろ。」



首の後ろを掻きながら気怠げに歩く。

秋は何故かニコニコとムカつく笑みで隣に来た。



「相変わらず興味なさそうな顔して優しいね。」


「・・・っは、言葉だけで優しい人だなんて言われるならお得だな。」


「行動だって変わらないくせに。」



立ち止まって半目で睨むと秋はヤレヤレと肩をすくめた。

文句を言ってやろうとしたが、秋はそそくさと歩いて行ってしまう。



「・・・のやろ。」



軽く不満をつぶやいて後を追う。

すると、俺たちは目的地の田所さん宅に辿り着いた。

確か田所さんはこの集落をまとめている方で広い土地を所有していた筈。



「・・・でっけぇ家。門とかなくて泥棒入らねぇのか?」


「こんなに遠くで盗みを働いても移動に時間がかかるし、近隣の目も多いからデメリットも大きいんじゃない?」



敷地内に入ってインターホンを鳴らす。

車は全台あったし留守なことはないと思う。


奥から物音がしてその後に足音が聞こえてきた。



・・・二度手間にならず済みそうだな。



そう思って少し開かれた扉からは白髪を真ん中で分けた目の鋭い初老の男性が顔を出した。



「・・・誰だ?」


「失礼します、対策局の者ですが、、、。」


「・・・そうか、申し訳ないが私は対策局に用はない。どうせ行方不明の件だろ、私は知らん他をあたってくれ。」



取りつく島もなく、田所さんはそう言って扉を閉めようとする。そこを借金取りみたいに足を扉の間に差し込んで止め、、、いったぁ!?けっこう勢いありますねぇ!



「ーーな!? なんだ、私は何も知らないぞ!」


「・・・・・。」


「ど、どうした、、、?」



・・・い、痛い。



田所さんは涙を堪えてる俺に戸惑っていた。

何で戸惑ってんだよ、誰のせいだと思ってんだ。


必死に涙を我慢してるとポンっと秋に肩を叩かれる。



「・・・変わるよ(ボソッ)。」


「出来ればもっと早くに変わってほしかった、、、。」



足を挟む前くらいにね。


交代してにこやかに微笑む秋が田所さんの前に立つ。

田所さんは戸惑ったまま秋を見つめた。



「そう邪険にしないでよ、少し話を聞きたいだけだから。」


「・・・・・・・・あ、あぁ、すまん、最近は行方不明の件を俺に問い詰めてくる住民が多くてな。少し過敏になっていた。」


「平気だよ、気にしてないから。僕と君の仲だろう?」



まるで旧来の友人かのように話しかける秋に田所さんも特に嫌な顔をせず反応を返す。というかむしろ申し訳なさそうにすらしていた。



『距離調整』、それは人との距離感も調整出来る。

例え初対面の他人であっても、まるで恋人や家族の距離まで近づけることも離すこともできるのだ。


いつの間にかそばに存在し、そしてどこまでも離れることが出来る。


使い方次第ではどこまでも深く落ち、そして気づかれることもない、、、。



「別に行方不明の件で問い詰めるとかしないけど、実は君の山で気になる者を見たって話が、、、」



秋がそこまで言っただけで田所さんは慌てたように声を荒げだした。



「ち、違う! 俺はあいつを知らないんだ!気付いたら山にいて、そして山の社、、、ごぷっ、、、で?」



胸ぐらをつかみながら必死に何かを訴えようとした瞬間、彼の口から血が流れる。

突然の出来事に俺と秋は目を丸くした。



「田所さん!? 大丈夫ですか!」


「秋! 今すぐ救援班に連絡してくれ!」



彼が倒れ伏さないように手で支え、口から流れる血が喉に詰まらないように気をつける。

呼吸は荒く、痛みで冷や汗を大量に流しているが、すぐ手当てすれば間に合うはずだ。



「何で急に!?」



背中を擦っていると、口から一匹のムカデが吐き出された。ただ普通のムカデと違い、足の節々がナイフのように鋭利な形状をしている。



「・・・虫? てか、この、、、やり方。」



まさか、あいつか?

最悪な想像が脳裏をよぎり、思わず冷や汗が流れ落ちる。


すると、後ろから誰かが叫びながら近づいてくる気配を感じた。


よく目を凝らすと、唯差さんが慌てた様子で走ってくる。



「た、助けてください! か、歌奈が何処かへ行ってしまって、それを探しにエリスさんが山へ、、、!」



俺と秋はその言葉を聞いた瞬間に顔を合わせる。

そしてコクリと頷き合うと、秋に田所さんを預けて俺は山へと走った。



・・・たのむ、最悪だけは避けてくれよ!




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