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異世界少女と無能の現代異生活  作者: たんぽぽ3号


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現場入り


帆哭さんの相談事も終わったので、スーパーで夕飯の食材を適当に買ってから自宅へと戻る。

仕事の概要はメールで届いてたので確認し、明日の予定を組み立ているとあっという間に家に着いた。


ロックを解いて玄関を開けるとエリスの靴があったので無事に帰ってきたことがわかる。



「ただいまー。」



いらないハプニングがあっても嫌なので一応声を掛けたが何の返事も返ってこない。

別に挨拶を返されなくて怒ったりはしないけど居ないのか?と少し疑問は感じた。


すると、浴場の方から微かなドアの音が聞こえる。



「あぁ、風呂か。」



・・・ふ、ここで漫画とかのお約束だと気づかずに浴場に入って怒られるのが定番だが、そんなお約束を踏む気はない。


謎に勝ち誇っていると、ガチャッと洗面所の扉が開かれた。



「・・・む? 帰ったか。」



横を向くとそこには水気を軽く拭いながらタオルで軽く隠れているだけのエリスが立っていた。



「何で裸なんだよ!?」


「あぁ、着替えを忘れてな、今取りに行こうとしたところだ。」


「ついでに忘れた羞恥心も一緒に取って来い。」



エリスは裸を見られても特に意に返さずにそのままあてがった部屋へと入って部屋着に着替える。


なんだよ、せっかくラッキースケベを回避したのに向こうから来るとか聞いてないよ!


てかあいつ、スーツだとよくわからなかったが意外と胸あ、、、やめとこう。



「それにしてもシャワーというのは革新的だな。爽快感があるし、汚れもよく落ちる。」


「元の世界にはなかったのか?」


「桶はあったがシャワーはないな。」



あぁ、お湯をすくう感じか。

確かに言われてみるとシャワーって便利だよなーと感じながら冷蔵庫に食材を仕舞い、何を作ろうかと考える。


そんな風に冷蔵庫の前で少し考え込んでいると、何故か一旦ソファに座っていたエリスが気付いたら横にいた。


開けた冷蔵庫を彼女も覗き込む。


横から上がりたてのいい匂いがふわりと香る。

そういえばこいつのシャンプーとか俺とは別のやつ買ったよなー。



「何か食いたいものあるか?」


「この前テレビで見たロールキャベツとやらが食べてみたいな。」


「うえぇ? めんどくさいな、、、。まぁ、丁度ひき肉買ったし出来るけど。」



言われるまではハンバーグとキャベツの千切りをしようと思ってたので食材はある。コンソメはないけど肉タネの味付けをしっかりすれば大丈夫か。



そう思って食材を取り出し、料理に取り掛かる。

エリスにはその間にテーブルを拭いてもらったり、食事の準備をしておいてもらう。


タネをキャベツで巻いて煮込む。もう遅くなるので煮込む時間は最低限にしたが、上手くしんなりして美味しそうに出来上がった。



「なるほど、中身の段階であれ程焼いたり味付けたりするのだな。」


「ちゃんと作ろうとするともっと時間がかかるから今回は時短な。まぁ、上手くできたとは思う。」



深めの平皿によそってお互いの席に置く。

ついでに少しさみしく感じたのでついでにウィンナーとかを茹でて並べておいた。

ご飯は炊くのがめんどくさかったのでチン米で済ませたけどね。



「「いただきます。」」



すっと箸が入って割ると中から肉汁が溢れてくる。

湯気と香る香りが食欲をそそって口にいれると少し濃い目の味が広がった。



「ーーん〜〜! お前本当に料理が上手いな!」


「そりゃどうも、美味しいなら良かったよ。」



嬉しそうに頬張るエリスに気恥ずかしく笑いながら食べ進める。おかわりを要求されたのでよそって上げながらあっという間に食べ終えた。



「「ごちそうさまでした。」」



食べ終わったらそれぞれの時間に移る。

片付けを2人で終わらせて、エリスは定位置のソファで端末を弄りはじめ、俺はテレビを付けて適当なバラエティを流し見る。



「そういえば明日の現場は車で3時間もかかるのだな。何時くらいに出る?」


「午前中には着きたいからゆっくり行くとして6時には出発したい。」


「うむ、わかった。そのくらいで用意しておく。何か調べておいた方が良いこととかあるか?」



そう聞かれて何かあったかと少し考える。

怪物の正体は分からないし、地形も分かりやすいので軽く知っといてもいいが調べなくてもいい気がした。



「特にはないが、一応地形と家の配置くらいは覚えといて貰ったほうが助かる。後は、また食べたいものでも考えといてくれ。」


「む? それはもう決まってるぞ。次は天ぷらなるものを食べたい。」



揚げ物かー、揚げ物は外食で済ませてたからあまり作ったことがない。後で専用の鍋みたいなやつでも買っておくか。



「わかった、後で勉強しておくよ。」



そこまで考えて当然のように家で自炊しようとしている自分に驚いた。別にエリスを連れて食べに行けばいい話でわざわざ手間を掛けてまで家で作る必要はないのに、、、。



「本当か!? 楽しみだな!」



溢れるような笑顔で同じようにテレビを見始めるエリスにまぁ良いかと息をつく。


美味しそうに食べてくれる人がいると作りがいがあるってことか。




ーーー




「んーー、遠かったな。」


「お前寝てたろうが、騎士は遠征も慣れっこじゃないのか?」


「そうだが、馬車とは乗り心地が段違いでな。あれ程柔らかいクッションと適度な揺れでは眠くなる。」



さすが現代のサスペンションだよね。

静かな空間で適温を保たれ、流れる景色を見るだけなら俺も眠くなる。

まぁ、流石に秋に運転を任せて助手席にいる以上、寝はしないけどね。



「3時間くらいならそこまで疲れないね。ただコーヒーくらい奢ってもよかったんじゃない?」


「悪い、端末を忘れてな。」


「本当だったら一大事だね。」



仕事の連絡とか資料とかも入ってるからね。もはや田舎であろうと回線がつながる今の現代社会において、端末がないとか不便が過ぎる。



青空の下、よくある田舎のように道路に沿って建てられた建物と、畑の間をゆっくりと通る。

秋は手でひさしをつくって周囲を確認しながら適当な位置に車を止めた。



「うん、太陽の位置からして時間は変わってないね。特にスピードが速かったりもしないし時間の流れは同じかな。」


「景色も資料や衛星写真に比べて変わりはない。特に空間を歪まされてたりはしなさそうだ。」



お互いに状況を確認しながら現在いる場所が本当に元の居場所かを観察する。

この前の騙り猫のように異空間に引きずり込むタイプもいるので細かく観察しておくのは非常に重要だ。


俺たちがそんな感じで話していると、何もしていない事にソワソワしたのかエリスも慌てて何か言おうか考え出す。



「か、風もあるな。」


「あはは、無理に意識する必要ないよ。こういうのは普段の環境を理解してる人が見ればいいから。むしろ君が不自然って感じるところがあったら教えて、多分よくないものだと思う。」



エリスは俺たちよりも遥かに感受性が優れている。

そんな彼女が分からない景色の中、違和感を強く感じた場所があれば怪物が関わっている可能性が高い。


取り敢えずは様子を見ないとな、そう思って並んで歩いていると、横から視線を感じた。

俺がそっちを見ると、他のふたりも視線を送る。


そこには垣根から顔を出した少女がいた。



「どわぁ!?」


「あははははっ! びっくりしてる!」



エリスがいいリアクションで飛び上がると、少女はズボッと生垣の向こうに顔を引っ込めた。



「び、びっくりした。」


「ナイスリアクション。」



驚きで胸を押さえているエリスにグッと親指を立てておく。あまりに綺麗な飛び方に思わず拍手したくなったわ。



「・・・いいファーストコンタクトかな(ボソッ)。」



腹黒の小さな呟きを聞かなかったことにしていると少女は生垣から回り込んで前に仁王立ちしてこちらに指を指してきた。



「乃之崎 歌奈! 8歳!」


「名木田 綾人、24歳。」


「佐山 秋、同じく24歳だよ。」


「え、え、え? え、エリス・ル・ラクラットだ、、、。歳は21だ。」



え、まじで!? てっきり見た目から16から19くらいだと思ってたんだけど成人してたんだ。


てかなんだこの自己紹介、思わず合わせたけど何で年齢言わされたの? 



「・・・あれ、乃之崎?てことは君、唯差さんと佑さんの娘さんかな。」


「パパとママだよ!」



どこかで聞いたことがある名前だなと思って首をひねると、確か対策局に相談していた夫婦だと言う事を思い出した。



「きれーなお姉さん!」


「む? 私のことか?」



歌奈ちゃんはエリスを指差して得意げに腰に手を当てている。

エリスは腰を曲げて歌奈ちゃんに目を合わせるようにかがみ込んだ。



「遊ぼ!」


「うぇ? だ、だが、私はこれから仕事でな、悪いが遊んでる時間は、、、」


「遊ぼ!」


「いやだから、、、遊べないから引っ張っていかないでくれ!」



謎に押しの強い歌奈ちゃんに手を引かれて家と家の間にあるちょっとした空き地にエリスは連れて行かれた。何度もこちらにチラチラと視線を送ってきていたが、俺たちは特に助けることもしないで見送る。


そんな微笑ましい光景を眺めていると前の家から慌てた女性が飛び出してきた。



「歌奈! どこ行ったの、まだ勉強終わってないで、、、! しょ、、、。」



飛び出してきた女性は目の前に立っているスーツ姿の2人組みに目を丸くする。俺は苦笑いを浮かべながらエリスが連れて行かれた方向を指さした。



「えーと、対策局の者です。歌奈さんはあちらに内の同僚を連れて遊びに行かれました。」


「ええ!? ご、ごめんなさい、直ぐに連れてきますね!」



母親らしい女性は、指さした方向に即座に駆けていく。その数分後にしょんぼりした歌奈ちゃんと、何とも言えない複雑な顔をしたエリスが連れてこられた。



・・・大丈夫、お前はよくやったよ、、、。





ーーー




「申し訳ない、遊び盛りの子で目を離すと直ぐに遊びに行ってしまうのです。」


「はは、元気なのはいいことですよ。最近は遊び場が減っていたりと外で遊ぶ子も少なくなっていますからね。」



あの後、奥様に招待されて家にお邪魔した。

座敷に案内されて、並んで座る。

何故か俺が真ん中に座らされて、両脇を秋とエリスが固めていた。



「そう言ってもらえるとありがたいですね。・・・申し遅れました、私は乃之崎 佑といいます。ここで妻の唯差と娘の歌奈の3人で暮らしています。」 


「ご丁寧にどうも、私は名木田綾人、こちらが佐山秋、エリス・ル・ラクラットですね。私達は超常現象対策局 極東支部 異能犯罪対策班に所属しています。」


「やはり対策局の方ですか、来てもらえるとは思っていませんでした。」



来なくていいなら俺も来たくはなかったですよ、ええ。


自己紹介を終えると、唯差さんが俺たち3人の前にお茶を置いてくれる。急須で入れたお茶なんて久し振りに飲むなーと思いながらのどを潤した。



「歌奈は大丈夫かい?」


「えぇ、もし進んでなかったらおやつ抜きって言ったから、ちゃんと勉強してるはずよ、、、たぶん。」



徐々に自信がなさそうになっていく様子から、普段から目をかいくぐって遊びに行ってしまっているのだろうと予想できる。

勉強したくないって気持ちはめちゃくちゃわかる、俺は逃げまくって後で先生に呼び出されてた人だからなー。


まぁ親もそんな風になってほしくないだろうし、将来の事を考えても今のうちに知識を入れとくのは大切だよね。



「では、本題に入らせていただきますね。今回相談された件は近くの住人が行方不明になられている、、、と、言う内容で合ってますか?」


「・・・はい、よく野菜を分けてもらっていたボン爺さんがここ1週間前ほどから姿を見せなくなって、、、。家も隣で鍵が閉まっていませんので様子を見に行ったのですが、誰もいなかったんです。」


「たまたま出かけていた、という可能性は?」


「私もそう思って畑に山なども見に行ったんですけど、見つからなかったのです。山で足を滑らせてもしかしたら、、、ということも考えたのですが、他の近隣の方達も何人かいなくなっていると聞いて。」


「それでおかしいのではないかと。」


「・・・はい。」



来る前に隣の家も見たが止まっていた車は登録されていたものと合致していた。

この、買い物するにも最寄りの店が3km近くある田舎で車を使わないで移動するとは考えづらい。



「えっと、確か隣の盆田 弘さんの登録台数は1台だったな?」


「うん、そのとおりだよ。他に新しく契約した車とかもないからその1台しかないはず。」



んー、なら持ち山もあるみたいだし本当に足を滑らせた可能性はあるな。まぁどっちにしろ調査しないといけないから見に行かないとだけど。



「・・・はーーー、山登りか、、、だる。」


「え?」


「わぁー! 何でもないですよー! では現地を見ないと何とも言えないので一度山に入らせてもらいますね。」



思わずポロッと漏れた本音を慌てて秋がフォローしてくれる。


・・・いやだって山登りだよ? しかも人探しとかめちゃくちゃ疲れるやん。


と、言葉に出したら怒られそうなことを考えながら、エリスを見ると、彼女は固まったように動いていなかった。なんか震えてる?


なんか気になったので足裏をチョンと突付いてみた。



「わひゃあ!? な、何をするか!!」


「動かないと思ったら足痺れてたのか。」


「貴様、やっていいことと悪いことがあるだ、、、あだだだだ!」



エリスは急に動いたため、足がもつれて転ぶ。

直撃してお互いに頭を打っても嫌なので俺は即座に立ち上がって避けた。ちょうど座布団があったおかげで頭を打たずに済んだね。



「ーーっく! な、なんなのだこれは? まさか、、、呪い?」


「座って血流が悪くなったからだね。正常な現象だから気にしなくていいよ。」


「む? 確かに段々平気になってきたな。」



正座とかしてなさそうだもんね。

こういう風な座敷で座布団に慣れてる人なら問題ないけど、エリスは初めてっぽいし痺れやすいのかな。


そんなどうでもいいやり取りが目の前で行われ、乃之崎夫婦は目を丸くしていた。

俺とエリスは「「あっ」」と声を漏らし、秋は恥ずかしさに顔を両手で覆っている。



「・・・さ! 山登り行くか!」


「そうだな、すぐ行こう!」


「君達仲いいよね。」



恥ずかしさを紛らわせるために俺とエリスは即座に立ち上がり、秋はやれやれと呆れたようにゆっくり立ち上がる。

戸惑う乃之崎夫婦を置き去りに、裏の山へと走るのだった。


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