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異世界少女と無能の現代異生活  作者: たんぽぽ3号


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19/48

夢は苦く、されど近く


一服して帰ると丁度話し合いが終わり、明日のために帰ろうかと帰宅準備を始めている最中だった。



「おっ、ぴったりじゃん。」


「ギリギリとも言うな。」



全く、人がいい気分になって戻ったのだから水を差すんじゃないよ。

前を見るとどことなく疲れた様子のエリスがこちらに半目を向けている。



「・・・なにかあった?」


「リリカに今度一緒にステージ立たないかと押されてな、肌に合わんと断りきった所だ。」



見た目は完璧だし運動神経も高いからね。でもコミュニケーションは怪しいから難しいと思うよ。


・・・だって直ぐ剣取り出してくるし。



「貴様でなければそうそう抜かん。」


「どうやって心読んだ?」


「思いっきり口に出していたぞ。」



ハッハッハ、そんな馬鹿な。

口が硬いことで有名な俺だぞ?(自己評価)



「・・・そろそろ帰れるか? 少しつかれた。」


「まぁ元々その予定だったし帰るか。」



思ったよりも負担が大きかったようで疲労が顔に出ていた。それでも落ち着いて見えていたのは彼女の忍耐力によるものか。


無理もない、佐巳月との戦いは精神がすり減る。



・・・それをマッチングしたのは俺だけど。



でも仕方ないじゃん。あいつ程命の危険なく経験を積ませられるやつも少ないし。

運良くここに来てて良かったよほんと。


帰り支度を終えた俺達はアパートへ帰り明日への英気を養う。その為に夕飯は奮発して鰻を頼んだ、おそらく大丈夫だけど他の異能犯罪者が襲撃してこないとも限らないしね。


食べられるうちに美味いものを食う、これ大事。


そして次の日、俺達はモールへと到着しリリカと合流した。



「おはようリリカ、ゆっくり休めたか?」


「おはよう!エリスさんも休めた?」



エリスがリリカに挨拶すると彼女は笑顔で返事を返す。その笑顔は眩しく昨日のことなど感じさせない。



「騎士は身体が資本だからな。下手に疲れを引きずるようなことはせん。」


「えぇ? そういうものかな?流石に完璧には疲れ取れてないよ。」



まぁそれは普段から鍛えてるかどうかの違いだね。

ちなみに俺は超眠いよ、鍛えてるのにね。



「・・・これからステージだな、応援している。」



エリスはグッと拳を差し出してリリカを応援する。

リリカは既に華やかなステージ衣装に着替えて化粧もバッチリ終えていた。

だが、その時彼女の表情が少し曇る。



「・・・どうした?」



一瞬を逃さず声を掛ける。

すると彼女は少し驚いた後に苦い笑みを見せた。



「・・・やっぱり少し心配。皆から昨日撃退できたからもう大丈夫とは言われてるけど、、、。」


「異能が邪魔するか?」



目を閉じながら察したことを口に出すと、彼女は先程よりも目を開いた。



「・・・驚いた、読心術の異能でも持ってるの?」


「わりいけどただの勘だ。」


「ふふっ、私の異能も通じないしやっぱり対策局って凄いところなんだね。」



異能が通じないのは異能のせいでしてね、えぇはい。

後別にこの程度は心が読めなくてもわかる。



「・・・そ。見てくれる人たちにもいろんな経歴があって、私にはそれが見えてきちゃう。全員が全員綺麗に生きてきたかといえばそんなわけないし、見ただけで震え上がるような異能を持ってる人もいる。」



異能は自分で選べない。

一般人であってもエグい異能を持っていることもあるし、犯罪者がしょっぱい異能しか持ってないこともある。経歴だって初犯であれば判断できないからな。


危険な異能保有者は国から規制とレベルに応じて監視が入るが生活は保障されていた。


昨日の件があった以上、彼女は危険な異能や更生してたとしても前科があれば警戒してしまう。そうなってしまえば満足に歌えないだろう。



エリスはどう声をかければ良いのか分からず、複雑な顔をしている。実際、これは彼女の問題で他人がわかるようなものではない。


・・・でも、、、



「・・・なら、一度だけ夢を見てみるか?」


「・・・え?」



・・・・・

・・・・

・・・



「おぉ! 凄い、凄いな! ワクワクするな!」


「そうだな〜、一応護衛ってことは覚えててくれよ〜。」



3階の吹き抜けで手摺に寄りかかりながらステージを見下ろす。人がドンドンと集まっていくステージと、モール全面協力のライトアップで緊張と興奮は上がり続けていた。


・・・すごいもんだな、俺だったらこんな景色をステージ端で見たら吐いちまうよ。


他人事のように俯瞰していると、ステージの壇上にリリカが現れる。


彼女はライトに照らされると、カッと一歩踏み出して、声を上げた。



「いっくよ〜!!」



唐突に曲が始まり、会場はドンドンと熱気が増していく。ステージに立つリリカは光り輝き、その眩しさに俺は目を顰めた。



・・・俺にこの光は眩しすぎるな。



目を逸らして辺りを見渡しておく、佐巳月が帰るって言ってたからあれ以上の襲撃はないと思うが、犯罪者共は他にもたくさん潜んでる。


そう思って周りを見ていたが、先程まで興奮した様子だったエリスが動かずにステージに魅入っていることに気付いた。



「どうした?」


「・・・いや、なんというか、昨日よりもキレがいいというか、陰りが無い?」



変化としては本当に僅かだろうにエリスはその変化に気づいたようだ。実際に彼女は昨日よりも溌剌とした笑みを見せていた。


彼女の熱心なファンの中にも少し戸惑った後にドンドンとのめり込んでいく人も見受けられる。



「・・・何かしたか?」



小さく尋ねられて、横目でエリスを見ると、まっすぐな瞳と目が合う。



「どうしてそう思った?」


「あの事件の後、リリカは自分の異能で得られる情報に過敏になっているはずだ。その状態で持ち前のポテンシャルを超える演技は難しいだろう。・・・だから何か仕掛けがあると思ってな、異能を使えなくするような何かが。」



確信でも得ているかのように真っ直ぐに見つめられて、俺は先に視線を外し、ステージに戻した。


勘が鋭いというか、頭が回るというか、、、伊達に騎士団長をやっていたわけじゃないな。


観念したように俺は「はっ」と自嘲気味に笑った。



「能無しの数少ないメリットのひとつだ。俺が長期的に保有してる物品に能力が()()()事がある。手を離れれば効果も薄くなるから一時的だけどな。」


「つまり相手の異能を使えなくできるということか?」



エリスは目を見開いて驚く。

この異能社会で異能を使えなくするなんて、脅威以外の何物でもない。

もし反異能グループにバレでもしたら捕まって飼われるくらいにはね。



「短い時間だけな。効果は俺が持ってた時間に依存する。数分とか数時間とかそんな単位じゃねぇよ? 数ヶ月、数年で消せるのは数分か数時間だ。」



今回リリカに持たせたのは胸ポケットに入れていた安物の指輪。入れてたのを忘れて何回も洗濯し、結構な時間を共に過ごしている(ズボラ)。


たぶんあと数時間くらいは保つだろ。



「・・・ただ、あいつは普段から情報が目に入る環境で生きてきた。急に見れなくなるのは逆に不安だろうし、感覚もおかしくなるはずだ。」


「生き生きしてるが?」


「よほど願ってたんじゃないか?」



知らないけどね。


ただ、見てる限り少し熱がこもっているというか酔ってるかのようにふらついている。テンションが上がりすぎて軽いトランス状態に陥っているのかもしれない。


リリカはそんな状態の中、ライブはドンドンと進んでいき、結局最後までノンストップで歌って踊り続けた。



そして、、、




ーーライブ終了後




「はひゃへーーー。」


「・・・綾人、本当はクスリでも打ったのではないか?」


「やめろよ人聞きの悪い。ここまで効き目が強いとは思わなかったんだよ。」


「現行犯逮捕だな。」



ライブが終わって控室に行くと、酔いつぶれたかのように頬を赤くさせながら気持ちよさそうにリリカは眠って、、、潰れて?いた。


お世話になったスタッフや警備に挨拶もせずに眠ってしまったようでマネージャーさんがペコペコ謝りながら挨拶している。


その後に俺たちも挨拶をされて、エリスが顔を見たいと言ったので、彼女の元まで案内された感じだね。



「まぁ、あそこまで通しで動けばこうなるわな。」


「私ですらあそこまで過度な運動をすれば体力が尽きる。騎士の私がそうならリリカは尚更だろう。」



取り敢えず端末のカメラを起動して写真をパシャリと撮っておく。エリスにとても冷たい目で見られたが、無視してポケットにしまおうとするが、、、



「・・・副班長に報告はするからな。」


「本当にすみません出来心だったんです今は反省してるので許してくださいごめんなさい。」



必死に謝りながら端末の画像を消した。

悪用する気はないけど弱みは握ろうとしましたすみません。



そんなどうでもいい一悶着があったあとに俺達も帰り支度を整えて、モールを後にした。

帰り道を歩いて事務所へと向かっていると、前から見知った顔が歩いてくる。



「あれ? 綾人、仕事終わったの?」


「お前こそチーマーの潜入は終わったのか?」



現れたのは無駄なイケメンで同僚の佐山 秋だった。


秋は「あっはっは」と目だけが笑っていない乾いた笑みを浮かべる。



「終わったよ終わった。それで何もなかったよ、ただのチンピラが集まって異能で遊んでただけだった。その為に数日を無駄にしたとか最悪な気分。」


「・・・そうか、俺は気分が上がってきた。」


「ぶっ飛ばすよ?」



そんな軽口を交わし合っていると、ふと秋の視線が少し下がる。たどると、何故かエリスは俺の後ろに隠れていた。



「・・・なにしてんの? 確かに女を取っ替え引っ替えしてそうな顔してるけど流石に同僚には手を出さないだろ、、、たぶん。」


「本当に失礼だよな君。」



非難めいた視線を受け流しながら背中に隠れたエリスに説明する。


が、彼女はまだ戸惑ったようにオドオドしていた。

別に人見知り設定とか無かった気がするけど。



「い、いや、よく分からないが変な感覚がして? う、うん? 何故だ、分からん。」



その説明を受けて心当たりのある俺は、チラリと秋を見る。


すると、彼はそっと肩をすくめた。



「別にまだ何もしてないよ、彼女の勘が鋭いだけじゃない? というか君に触れてる時点で僕は何もできないし。」


「ちなみに触れてなかったら?」


「いやいや、僕だって手当たり次第に異能使ったりしないから。」



怪しい者をみるような胡乱な目で見ていると、クイクイと服が引かれて振り返る。



「どういう事だ?」


「こいつの異能は精神にも干渉できるからな、お前の直感がそれを察知して自然と避ける感じになったんじゃね。」  



直感なんてその人の感覚だから推測だけどね。

俺は元々効かないから尚更わからんし。



「蕪城と同じか。」


「・・・もっと質悪いけどな(ボソッ)。」



エリスは一度苦い思いをさせられた蕪城を思い浮かべているらしいが、あれよりも厄介な精神干渉系の異能は多い。

目の前で照れたように笑ってるこいつは精神だけでなく現実にも干渉出来るので余計に質が悪かった。



「あ、そうそう、次の仕事だけど僕と君達2人でだ「ちょっと待ってくれ。」・・・なにさ?」



話を変えようとした秋に待ったをかける。

俺は聞き捨てならない台詞が聞こえて手で顔を覆った。



「つ、次の仕事? 休みは?」


「あぁ、これの後に取って良いって。」


「そう言って前も先延ばしになったじゃん!」



もう何連勤してると思ってんだよ!

いい加減に夕方まで寝てたいわ!


労基呼んでこい、労基!


何とか逃れることはできないか必死で頭を回転させるが、指令に背いたら命をなくす気がす、、、何で休みとるのに命がけなんだろう?



「いや、休めるなら僕だって休みたいよ。」


「ならバックレようぜ。」


「命は失いたくないなぁ。というか、こんなに連続して異変が起こるなんておかしいよね。」



秋も疲れているようでため息を吐きながら連勤に嘆く。本当にバックに帆哭さんがいなかったら逃げてたわ。



「前はそれ程でもなかったのか?」


「ん? まぁ数年前はな、異変をひとつ解決したら1週間は休めたくらいだ。」



隕石落下直後から現在までのインターバルなのか知らないけどその間は本当に暇だったらしい、俺が所属した直後なんて暇で天職かと思ったもん。

なのに、ここ数年は異変が増加傾向にある。


何か大きな事が起こる前兆なのかなぁ。



「お前も休みたいよな。」


「む? 別に平気だぞ、というか私は体を動かしていないと落ち着かん。」


「・・・ワーカーホリック。」



どこかの誰かさんみたいだね。

仕事を覚えたらこき使われそうな予感がするので今のうちに優しくしといたほうが良いかな? めんどいからいいや。



「取り敢えず2人は一回事務所に帰ってこいって。」


「帰る気ではあったけど帰りたくはなくなった。」


「もうあきらめなって、文句言ってても始まらないよ。じゃ、僕はこれからデートだから。」



秋はそう言って歩き去る。

その背中に中指を立てて見送りながら、諦めて事務所へと向かった。


手当欲しいな~。



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