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異世界少女と無能の現代異生活  作者: たんぽぽ3号


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18/48

任務の終わりに


一人暮らしの暗いマンションの一室。

中は乱雑に散らかっており生臭い匂いが充満している。



「気味が悪いですね。」


「確かにねー、まぁ私たちにとっては見慣れたものだけど。」



汚れた部屋の真ん中で帆哭 朱紀と須木原 紗耶香は一点を見つめる。視線の先には行方不明になった社員の一人が首から上がない状態で力なく座っていた。


部屋は汚いが争った形跡は一切なく、ただただ突然首だけがなくなったような不自然さを感じさせる。



「それにコレで8人目でしょ。」



そう、今見つけた行方不明者はこれで8人目。

そして全員同じように首から上がない状態で見つかっていた。



「・・・連続犯か怪物か、心当たりが多くて困ります。」


「そうね~、少なくともこの不気味な手口はヘビじゃないと思うけど。」



グリーンパイソンは破壊的な手口を好む連中が集まる傾向にある。なのでこの陰湿で不気味なやり方は彼等らしくない。可能性が低いだけでゼロとは限りませんけど、、、。



「こうなると残りの行方不明者も生きてるか怪しいんじゃない?」


「・・・怪しいというより絶望的ですね。ただ、探さない訳には行かないので調査は進めますが。」



死体から流れ出る血は赤く暖かい、まるでさっきまで生きていたかのようだ。

むせ返るような血臭に顔をしかめる。



「それもそっか、じゃあ私は引き続き探してこようかな。」



沙耶香には早めに協力をお願いしていたので、時間をかけることなく順々に見つけることができていた。

やはり情報を専門に扱う収集班の隊長は頼りになる。



「ありがとうございます。」


「いーえー、お礼は家に泊まりに来てくれればいいよー。」


「それはお断りします。」


「何でよー!」



沙耶香はこうやって何度も泊まらせようとしてくるが目の怪しい輝きが怖くいつも断っていた。

何回も飲みには行っているが彼女の家にまで行ったことはない。



「一生のお願い! 一歩踏み入れるだけでいいから!」


「それはお泊りとは言いません。」


「そうだけどさー、じゃあハグしてよ。」



そう言って彼女は両手を広げる。

赤々しい死体の前で何やってるのだって話だが、私達は死に対しての感覚が狂いすぎていた。


呆れたため息を吐いて仕方ないなという風に彼女をそっと抱きしめる。



「・・・それぐらいは構いませんよ。」


「ーー!! っは!はぁはぁはぁっ! す、すごいいい匂いがする。適度に引き締まった体と上目遣いがたまらない!」


「あ、あの、あまり感想は言わないでもらっていいですか? 後、目が怖いです。」



背は彼女のほうが高いので自然と上目遣いになってしまうのは仕方ないが、目が血走り呼吸が荒いのはぶっちゃけ怖い。


対策局に所属して恐怖に対する感覚が鈍感になっているのに恐怖を感じるのだから相当なものだろう。



「このくらいでいいですよね。」



そう言ってそっと離れると沙耶香はしばらく同じ体勢で固まった後、とびっきり明るい笑顔を見せた。



「本当だったらお持ち帰りしたいけど取り敢えず今は大丈夫! じゃ! 張り切って探してくるねー!」



笑って敬礼した後、瞬きの間に沙耶香は姿を消した。

その隠形具合は流石だが、悪用しないかと心配になるのは気にし過ぎだろうか?


最後に処理班へと連絡をしてそっと死体の前に屈む。

手を合わせて黙祷し、言葉にする。



「・・・あなたの最後はわかりません。でも必ず見つけます、あなたが死ぬ事になってしまった理由を。」



恨みかもしれない、理不尽かもしれない、悲劇かもしれない、理由はわからない。でもそれを見つけ対策する事が私達対策班の役割だ。


立ち上がって一室を背にする。

現場は調べて幾つか不自然な点も見つけてあるが、まだ情報が少ない。


でも解き明かす、獣のようにしつこく貪欲に、、、。




ーーー




「・・・・・何か言う事は?」


「すいませんしたー!!」



グリーパイソンNo2を退けた後、綾人から連絡が入って2人で事務所へと向かう。

そこには裏から入ってきた警察や処理班が大量に捕縛された犯罪者を護送している最中だった。

その事に関して綾人を問い詰めるとあっさりと私達を囮に使ったと白状した。


その時のニヤケ面には殺意が湧いた。


リリカは皆が無事だった事への安堵と利用されたことへの憤りで複雑な表情。でも明日のステージに差し支えないと聞いて安心したようで、今は疲れが溜まったのかソファで寝ている。



「正直、後半はそうなんじゃないかと思っていた。だがな、そう決めたのは良いが連絡はするべきだろう。こちらの胸中も考えるべきだ。」


「い、いや、やっぱ自然体が一番かなって、、、。」


「言いたいことはわかる。しかし、仮にもリリカは一般人だ。それを巻き込むのは理に反するのではないか?」



ぐぅの音も出ないのか綾人は正座のまま素直に怒られる。だがまぁ、お陰で敵の増援やモール内で暴れる奴が現れなかったりと、助かることがあったのも事実なのでそこまで強く責められない。



「今度からはもう少し相談してくれ、お前にとっては信用ならないかもしれんがな。」



彼にとって私はまだ頼りになる存在ではないのだろう。だから、利用しうまく使うように仕向けていると感じる。実際に私は負けてばかりで今回も引き分けただけだ。実力を買われて対策局に入れてもらったのにお荷物も良いところ。


そう思っていると、綾人は首を傾げて口を開く。



「何いってんだ、信用してるからリリカを守らせて立ち回ってもらったんだろ。信用できないなら直ぐに迎えに行ったし、一人で戦わせたりなんてしない。」


「・・・・・だが、私は負けてばかりだろう。」


「・・・? 負けてないだろ? 蕪城相手も別に生き残ってるし、No2はリリカを守りながら撃退できたんだし上出来じゃね?」



彼は何を言ってるんだ?という風にそう言った。



「あのなー、俺たちの仕事は生き残ってなんぼだ。生き残って勝利、上手くできて任務成功、そんな風に考えないとやってらんないんだ。別に貪欲になるなとは言わないが、負けて卑屈になるんじゃ無くて生きてる今を喜べ。」



常に変わらない彼の指標。

いつ死ぬかわからない、死んだら終わり、なら今を生きろ。



「生きてりゃ誰かの人生とぶつかる日もある。それが俺たちには驚くほど多いんだ。ぶつかったらどちらかの道を折らないと前へは進めない、人生なんて常に勝負の連続だ、自分が生き残るために相手の人生を折れ。」



その目にふざけた様子は一切感じ取れない。

自分を通すなら傷つく覚悟を、負けたら終わる絶望を。



「今回はお前が生き残ってリリカを守り、相手の目的を折った。だからお前の勝ちだろ。」



彼は笑いながらそう口にした。

考え方は正反対、騎士としての私は死んでも勝利を手にし、負けて生き残るなど恥に等しい。

彼がすべて正しいとは思わない、騎士としての誇りは憧れ目指したものだからだ。


だが、、、



「貴様は本当に自由だな。」 


「そうか? 休みなんてしばらく取れてないけど?」


「そうではない、見方が自由なんだ。」


「お、おう? ありがとう?」



綾人は首を傾げてよくわからなそうにしているが、私は彼の考えを面白く感じた。

全くの正反対、だからこそ新鮮で面白い。


そうか、だから私は、、、



「貴様といると力が抜けるな。」



どこか落ち着くこいつといることが楽しく感じ始めているのだろうな。




ーーー




なんかよくわからない説教をされてようやくエリスから解放された。

なんか最後に穏やかな笑みを見せられたけどなんだったんだろ?あれかな?嘲笑されたか?


ま、別に舐められ慣れてるけどね!


取り敢えず周囲を見渡すと明日の段取りに動くもの、警備の見直しをする者等、様々。

ぶっちゃけ俺等は遊撃部隊のようなものなので別に参加する必要はない。



「てことで帰るか。」


「んー、まぁ疲れたし帰るのは同意だな。」



お、案外真面目なエリスさんからも賛同が得られた。


よし怖いものもないし帰るか。


そうして帰ろうと準備して出口へ向かおうとすると、隣で歩いていたエリスの袖が引かれる。



「・・・む?」


「エリスさん、どこ行くの?」



さっきまで寝てたはずのリリカが眠気眼を擦りながらエリスを見上げる。

彼女は不安に揺れる瞳を浮かべていた。



「いや、やる事もなさそうだし帰ろうかと。」


「もう少し一緒に居ようよ。」



おぉ、百合ですか、いいね。

少しの間とはいえエリスと行動をともにしたお陰でエリスにだいぶ懐いていた。


ちなみに俺への信用はゼロになったよねw



「・・・いや、私は構わんのだが。」



エリスはそう言ってちらりとこちらを見る。

俺はそれに対して手を振って行ってこいと指し示す。

エリスはおずおずとしながらも二人で奥へと歩いてく。


そうすると俺は一人手持ち無沙汰になった。


別にやることはないので帰っても良いのだがふと気が向き、挨拶くらいしていくかと立体駐車場の6F、人気が少ない最奥へと一人歩いて向かう。


そこにはくたびれたシャツに帽子、短パンサンダルといったラフな格好をした男がタバコを吹かしていた。



グリーンパイソンNo2 幹部 佐巳月 レイ



「・・・や。久しぶりだな佐巳月。」



久しぶりにあった友人に会うかのように片手を上げながら近づく。

佐巳月は気怠げな視線を向けるだけで特に反応は示さない。・・・まったく、さみしいなー。



「・・・久しぶりねぇ。テメェで呼んどいて久しぶりもねぇと思うがなぁ。」


「なんのこと?」


「首かしげても可愛くねぇぞぉ。」



とぼけるように首を傾げたら顔をしかめられました。

おかしい、最近読んだラブコメだとドキドキのシーンだったのに、、、。



佐巳月はこちらを一瞥した後、煙をくゆらせる。



「・・・行方不明は知らねぇぞぉ。」


「だろうな、あれにお前たちは無関係。」



はっきりと断言した俺に佐巳月は頭をかいて反応する。



「知ってんなら教えてやったらどうだぁ? お前の上司は無駄な労力だろぉ。」


「あれに早期解決は求めてないなぁ。下手に解決が早いと厄介なやつが野放しになる。」


「カカッ! それで今後被害にあうだろう人達も見殺しかぁ? 随分と立派なもんだなぁ。」


「・・・全て助けられない事くらいお前だってよく知ってんだろ。」



その目は冷たく据わっているが、瞳の中に静かな意思が灯る。


対策局は警察や軍じゃない。

守ることが仕事ではあるが、守るのは人々の生存圏であって個人ではないのだ。

1人と100人の命が天秤にかけられたのならば、100人を守ることが是となる。


・・・正直、この考えは好きじゃない。だが必要であることも理解している。



「いや、俺はお前の考えは理解できねぇ。俺は今も昔もあの人一人のために生きてるからなぁ。」



吸い終わったタバコを携帯灰皿に捨て、興味なさそうに呟く。

まぁそうか、こいつと俺とじゃ生き方が違う。



「・・・まだ須木原さんを想ってるのか?」



俺がそう返すと佐巳月は顔を歪ませて笑う。



「想うねぇ? カカッ! そんな簡単な話じゃねぇ。俺はあの人に生き方も心も命すらも捧げてんだよ。今電話で死ねって言われれば直ぐ飛び降りてやらぁ。」



瞳には狂気が混じる。

俺がこいつと知り合ったのも須木原さん関係の話だし、こいつはグリーンパイソンのNo2でありながら絶対的な忠誠を須木原さんに誓っている。

そのことを知っているのは俺と須木原さんのたった二人だけだがな。


そしてそうなるとこいつは須木原さんにマイナスなことは一切しない。

須木原さんが熱を持っている帆哭さんの部下にはちょっかいを出しても決して手を下したりしないので俺は平然とエリスを差し向けられたのだ。


そんでこいつが負けを認めればグリーンパイソン共は手出しできなくなる。



「・・・ついでに蕪城の野郎に心を折られた上位存在に自信をつけさせようって魂胆だろぉ?」



佐巳月からは見透かされたように思考の途中を読まれる。お互いに貼り付けた笑みを浮かべながら心を読み合うかのように睨み合う。



「別に本気出したってよかったけどな。」


「いやぁ、無理だなぁ。須木原さんが大好きな帆哭副班長の部下に手をかけようものなら俺が殺されちまわぁ。・・・てかそれがわかってて俺をけしかけたくせにしらじらしいぞぉ。」



ま、バレてはいるか。 


こいつとだって短い付き合いじゃない。

お互いに利用しあう、妙な縁が長々と続いていた。



「つってもリーダーは止まらねぇぞぉ。あの人は壊そうと思えば一直線だからなぁ。」


「そこをなんとかしてくれない?」


「んな義理はねぇなぁ。」



でしょうね、俺もお前にそんな事言われたら速攻で断る。


こいつ等のリーダー相手は流石に班長に相手してもらわないとキツすぎる。でも俺は班長(化け物)に会いたくない。

嫌だねジレンマ。


佐巳月はそれだけ伝えるとポッケに両手を入れて出口へと向かった。



「じゃあなぁ。」



相変わらずツンデレだなぁ。


ついでに自分も一服し、その後エリスの下へと戻る事にした。

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