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異世界少女と無能の現代異生活  作者: たんぽぽ3号


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14/49

強襲



「んーー! それにしても美味しかったな。また行きたいものだ。」



焼肉おわりの帰り道、エリスはるんるんとした足取りで俺の前を歩く。

俺は子供のような彼女に呆れながらも自然と笑みがこぼれる。



「・・・あんな高級店はしばらく無理だから俺の料理で満足してもらうぞ。」


「なに、構わん。貴様の手料理だって美味いからな。」



そう言ってにこやかに返す彼女に俺は何も言えなくなった。純粋に褒められると無性に気恥ずかしくなるな。



たが、そんなゆるい雰囲気は即座に壊される。



眼の前に二人の雨合羽とマスクを付けた不審者かみ現れる。連中は示した合わせたように手にナイフを持ってこちらへと突っ込んできた。・・・もはや会話や挨拶は不要らしい。


まずは、先制と俺が一歩前に踏み出して相手の腕を掴み捻り上げる。


・・・が、相手の腕はボロボロと崩れ去り、俺の手は虚空を掴んだ。


相手は懐に隠していたもう一つの腕を伸ばしてこちらの胸へとナイフを伸ばすがそれを体を開いて躱し、右手を握りしめ力いっぱい振り抜く。


その拳は相手の顔面へと吸い込まれ遥かに後方にふっ飛ばした。



「おぉ! やるな綾人!」


「そりゃどうも、次はお前だぞ。」


「あぁ、わかってる。」



腕からトゲをはやしたもう一人がエリスの側面から殴りかかる。

それを一飛びで躱してエリスは横に剣閃を振り抜く。が、その攻撃に対して敵は全身からトゲを生やして防ぎ、そのまま突っ込んできた。


エリスはその動きに一ミリも動揺せずに顔をしかめて剣を振るうと、今度は相手の棘ごと腕を切断した。



「ぐぁあああっ!」


「舐められたものだ。あの程度のトゲ切り裂けないと判断されるとは。」



まぁ、壁すら斬れるのに棘は切れない道理はないな。



「ーーぐ! 舐めんなよ!」



敵は全身に力を込めて縮こまる。

弾けたように体から糸のようなものが飛び出し、エリスを拘束しようとするが糸に当たらないようにエリスはそのすべてを斬り落とした。



「ーークッソ!」


「なーるほど、ちゃんと拘束手段もあったんだな。そりゃそうか、エリスを殺すのはお前らの目的じゃない。」



横から相手の襟を掴んで地面に引き倒す。

顔面をこすりながら相手はうめき声を上げた。



「ーー!? 異能が使えねぇ!?」


「棘なんか出せねぇよ。」



そのまま力を込めて俺は相手を拘束する。まるで万力のようにミシミシと締め上げて相手はとても苦しそうにうめいた。



「綾人、こいつらがグリーンパイソンか?」


「あぁ、今までも何度か様子を見ていやがったが重い腰を上げたらしい。」



冷たい眼差しを向け、手錠をかけようとすると奥の路地から強い殺気が向けられた。


俺とエリスは即座に反応し構えを取って距離を開ける。



ーーパチパチパチ



「下っ端じゃきついみたいだな。そりゃ人間じゃねぇ上位存在だ、半端は失礼か。」



片手に刀を下げた雨合羽が一人、ゆらりと現れる。

他のマスクと違い、相手はマスクの上からさらに包帯を巻いて視界を塞いでいた。



「ではお嬢さん、お相手願う。我は蕪城 聯合 グリーンパイソンの幹部だ。」


「む?そうか。私はエリス、、、」


「返答を返すな!」



俺はエリスの言葉を遮って相手に向かう。

俺に合わせて聯合は刀を振るい、それに合わせるように俺の警棒が交叉し火花をちらした。



「・・・失礼だな、対策局の男。真剣の斬り合いに無粋だぞ。」


「ーーよく言う! テメエの異能は『呼び掛け』、名前を含めた呼び掛けで動きを抑制する異能だろ!」



焦りを混じらせながら返すと相手はにやりと笑みを浮かべた。


エリスは慌てて口を抑えていたが、既に手遅れ。

というかこいつは俺達の戦闘を前から見ていただろう。既に名前は割れている。


刀を翻して達人の様な細かな動作で刀を振られ、俺は裂傷を受けてしまう。それでもなんとかくい付こうとギリギリでその動きに対応しながら警棒をふるった。


だが、聯合の刀についていくのに精一杯で注意が疎かになっていた蹴りを腹部に食らってしまう。


その隙を逃さないと聯合は刀を振り下ろすが、それをエリスが受け止めた。

そのまま剣と刀の攻防に陥るかのように見えたが、聯合は笑みを見せる。



「エリス! 何をしている!」



大気を揺らすような叫びで名前を呼ばれたエリスの体は完全に動きを止めてしまう。

体はしびれてるように動かなくなってしまい、その隙に腹を殴られた彼女は崩れ落ち、聯合に受け止められた。


そして、男はこちらに視線を向けて笑みを浮かべる。



「・・・異能が効かないとは本当に面倒だよ、綾人。」


「知らねぇな。悪いがそいつは返してもらう。」



相手の目的はエリスだ。

もう敵の手中にあり、俺は聯合の刀に一歩及ばない。



「貴様に勝ち目はない。」


「どうかな?」



勝ち誇った聯合に俺は余裕の笑みを浮かべながら警棒を地面に落とした。



「・・・なにをしている?」


「俺の本気はこっちだ。」



拳を構えて脱力。

一歩でアスファルトを踏み抜き、相手へと肉薄した俺はエリスに当たらないように拳を振り抜く。


聯合は俺が素手で殴りかかってくると思わず、反応が遅れてモロに拳が入った。



ーーミシミシッ!



軋む音を響かせた後に最初の敵のように吹き飛ぶ、ことはなく聯合は数歩よろめいて血を吐いた。



「小僧お!」


「叫ばなくても聞こえてるよ!」



足に蹴りをいれる。

バランスを崩した聯合からエリスを奪い去り、連打をお見舞い。

相手は対応できずによろめいた。



しかし、相手も幹部。

跳ねるように刀を振り上げ無造作に振り下ろしてくる。その刀はエリスを狙っており、引き寄せて無理に態勢を変えた俺は転がってエリスを手放してしまった。



・・・ちっ!



「エリス! 来い!」



聯合の呼び掛けに応じ、エリスはふらりと聯合へと向かう。俺とエリスを引き剥がすために狙ったのか!


俺は即座にエリスを押さえようと踏み出すが、その時相手の目から不穏な気配を感じ取った。



「エリス、殺せ!」


「ーーっ!」



命じられたエリスは俺に向かって剣を振るった。

もし、不穏な気配を感じて後ろに下がっていなければ斬られていただろう、それほどの速度で振られていた。



「本当に厄介な異能だな!」



だが、決して操り続けるわけではない。

エリスは一度剣を振るっただけでまた倒れた。


顔を打つと危ないので駆け込みキャッチ、うん、大丈夫そうだな。



「・・・・・逃げられたか。」



睨むように聯合がいた場所を見ると、そこには誰も居らず、聯合とほか二人も姿を消していた。





ーーー




寂れた遊園地の一角、メリーゴーランドのベンチに大仰に座ったフードを目深に被った女性は気怠げにため息を付いた。



「・・・ふーん、それで? 結局上位存在を連れてこれなかったわけだ、聯合。」


「・・・申し訳ありません、対策局が護衛に付いている事は予想しておりましたが、能無しだとは思わず。」


「ふーん、予想できる事だろうが。異能に対する知識がないやつに能無しを付けるのは合理的だよ。お前はまんまと追い返されたわけだしな。」



聯合は腕に力を込めて顔を歪める。


正直な話、綾人の能力と自分の能力は相性が悪く、それに戦闘力も同格となると戦闘時の細かな小細工の差が明暗を分けることになるだろう。


ただ、相性が悪いなど言い訳でしかなくそんな事を口にすれば怒りを買うのは明白なので押し黙る。



「あー、めんどいな〜。・・・まぁいいや、次は失敗すんなよ?」


「つぎ、、、ですか?」



彼女はユラリと立ち上がり猫背でこちらを見下ろす。

背丈は190近く、こちらが跪いているのも相まって強い威圧感を感じられた。


そんな彼女は聯合の疑問にニヤリと笑みを浮かべる。



「近々でっかく暴れようと思っててな、上位存在ちゃんに対策局に軍と警察、国を守る防衛の要に大きなダメージを与えてやろうじゃないか。」


「それは、、、とても良いですね。ぜひお供させてください。」



聯合は足取り軽く歩く彼女の後をそっと付き従うのだった。




ーーー




ータタタッ! バシュー!




「副班長! 私を鍛えてくれ!」


「お待ち下さい。初めから説明願えますか?」



次の日の朝、早朝から事務所へと向かい、早速帆哭さんに詰め寄るエリス。

それを俺は後ろからのそのそとあくびを噛み殺しながら付いて行った。


ちなみに事務所には相変わらず帆哭さんしかいない。対策班って3人だっけ?


急に詰め寄られて帆哭さんが困惑していたので、興奮しているエリスに代わって俺が後ろから事情説明をする事にする。


説明を受けると帆哭さんは得心がいったような表情を浮かべた。



「あぁ、昨夜の件ですか。連絡が来たときは肝が冷えました。・・・名木田君がいて良かったです。」


「そうなんだ! もし綾人がいなければ私は捕らえられていた、強くならなくてはならない!」



単純〜。


俺は他人事のように自分の席に座ってpcを開き、今日のメールを確認しておく。

あ、須木原さんからお金寄越せってメール来てる。


無視しよー。


チラリと隣に視線を送ると帆哭さんは困った表情を浮かべていた。



「正直、ラクラットさんはもう十分強いですよ。今回負けたのは相性が悪かったのと異能戦への経験不足からなるものだと思います。ですので、任務をこなして行けば自ずと解決しますよ。」


「だ、だがそれでは、また襲われたときに対処できないかもしれん。」


「一人で戦おうとしないでください。今は名木田君、もしくは私を頼るようにお願いします。私達は敵の異能もある程度把握していますが、ラクラットさんにはまだ教えきれていません。異能戦に於いて、相手の異能を知っている利点は身にしみて理解しましたよね?」


「そ、それは、、、まぁ。」



いくら自力を鍛えても異能戦では意味をなさないこともある。操られる、力を取られる、弱体化されるなどザラにあるからな。


そのため培うべきなのはどちらかと言うと感覚であり、感覚を養うには経験しかない。



「敵はこちらが強くなることを待ってくれません。そこに半端な訓練を行ったところで意味はありませんので大人しく任務をお願いしますね。」


「あぁ、わかった。・・・では行くぞ! 綾人!」


「え、俺も?」



勝手に仕事を入れられそうになった俺は思わず聞き返した。


・・・ 別にエリス一人でも良いんじゃ。



「良いわけ無いですよね? 土地勘というのは非常に重要ですし、狙われてるってわかった直後じゃないですか。」


「それはまぁ、そうですけど。・・・ちなみに良さげな任務があるんですか?」



そう聞くと、早速とばかりに端末が震える。

ポケットから取り出して画面を覗くと、帆哭さんから任務の詳細が送られてきていた。



「・・・ショッピングモールで営業アイドル『リリカ』の護衛? んなもん警察の仕事じゃないですか。」


「通常であればそうですね。問題はアイドルの異能である『個体識別』。一度見た相手の素性を理解し記憶する異能が犯罪者に狙われています。」



何その異能怖。

個人情報とかあったものじゃないじゃん。



「・・・悪用の仕方はいくらでも思いつくな。」


「そうですね。ちなみに彼女自身は自分の異能を嫌っているようですよ。」



帆哭さんはそう言って目を伏せた。


・・・異能というのは誰しも望む力ではない。


持ってるだけで生活が制限されるのもあるし、今みたいに犯罪者に狙われることもある。


てか選べるなら能無しとかいらねぇしなぁー!



「・・・ふむ、護衛か。よし、やろう!」


「おう、頑張ってな。」


「貴様も連れて行くに決まってるだろ。」



嫌だよめんどい。

人がたくさんいるところで大勢を気にしながら犯罪者に常に目を光らせるとかどんな拷問だよ。



「もちろん私達だけでは人員不足なので警察や専属SPも警護に回っているそうです。」



随分厳重だな。

まぁ確かに敵側に回ったら相当厄介な異能ではある。多分普段から護衛付いてんだろうね。



「・・・ちなみに帆哭さんは?」


「私は後から合流します。近くの企業で15人の社員が行方不明らしいので調査してきます。」



・・・15人?


無断欠席にしては数が多すぎる。

対策班の副班長が出るだけのことはあるか。



「では、行ってきてください。」


「あぁ!」


「・・・うぃ〜」



・・・・・休みってあるのかな?



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