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飄々ゼンジの異世界謳歌  作者: 寒原
第4章 Aランク試験
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第3話 〜ヘビ、トカゲも龍のうち〜

 戦闘終了後、各部隊は本部のある丘に集結していた。

 とは言ってもまだ後片付けが残っており、モンスターから素材を剥ぎ取る解体班と死傷者を回収する衛生班が、戦闘部隊と入れ替わる様に戦場跡へ出発した。

 ゼンジは小隊解散後、一緒に戦った新米冒険者達を連れて本部から少し離れた野営地にやって来ていた。


「皆お疲れちゃん。疲れたろうから何か美味しい物でも奢るよ」

「ありがとうございます!」


 気前の良い先輩に後輩達は顔を輝かせてお礼を言う。

 何百人もの冒険者が集まるユニオンは言わば商人達にとって商機であり、何処から沸いてきたのか野営地の周りには道具屋、武具屋、雑貨屋、食物屋がこぞって出張出店している。

 その中でゼンジは近くの村からやって来たらしい父娘の店で脚を止めた。


「お嬢さん。その巣蜜を人数分頂戴な」


 自分より年下に見える少女にゼンジは紳士的な態度で話し掛ける。

 彼が買い求めたのはハチミツがたっぷり滴る巣蜜のブロックだ。


「この辺りは養蜂が盛んでねぇ。これを食べるのを楽しみにしてたんだ」


 そう言うとゼンジは我慢出来ないとばかりに渡された巣蜜にかぶり付く。手にハチミツが着こうが関係無い。熊の様に手を舐めて甘味を堪能する。

 そんな意地汚い先輩を見て後輩達も黄金滴る巣蜜を口に運んだ。


「美味しい!」

「こんな上手い物が食えるなんて! ユニオンに参加して良かった!」


 嬉しそうに感激しながらハチミツを堪能する。

 だが一人だけ口を付けて無い少女がいた。


「どしたの? もしかしてハチミツダメだった?」

「いえ、冒険者になってから甘い物とか食べれなかったので。勿体なくて」

「早く食べた方が良いよ。他のメンバーが狙ってるから」


 ふと周りを見ると戦友達が物欲しそうな目で自分の巣蜜を見つめていた。


「ッ!? い、頂きます!」


 取られてたまるかと急いで彼女も巣蜜を食べる。

 ゼンジが面倒を見ている彼等は最低ランクのGランク冒険者だ。本来このランクはユニオン参加の義務は無いのだが冒険者の扱いは決して良いとは言えない。


『Gランクが冒険者ならヘビ、トカゲも龍のうち』


 こんな言葉があるくらい周りから蔑まれているのだ。

 勿論、ゼンジの様にいずれ頭角を現す強者も居るが、登録したての冒険者など一般人と変わらないというのが世間からの評価だ。

 だから彼等はユニオンに参加する事で実績を作り、早くFランクに上がろうとしたのだ。


「おうおう何やええもん食うとんやんけ」


 柄の悪そうな台詞と共に魔導杖を担いだルイが寄って来た。


「やあやあルイ。そっちはどうだった?」

「小型ゴーレム六体、大型を一体っちゅうところや」

「ああ見てた見てた。相変わらず凄い威力だねぇデーモンハンド。羨ましいよ」

「アンタはゴーレム相手やと何も出来んからのう」

「そこら辺、毎度お世話になってるよ」


 ゴーレムは刀を弾き、ブラフも通用しないので、ゼンジの苦手なモンスターランキング第一位に君臨する。

 それは繰気術という新しい必殺技を習得しても同じだ。何せ呼吸をしないのでお得意のインビジブルハンマーも効果が無い。

 だからこれまでゼンジはゴーレムと相対すると火力特化型のルイに助けてもらっていた。


「そんでそっちはどないやねん? なんぼ倒したん?」

「十二体目から数えるの止めたよ。ただ第一小隊の中じゃ俺が一番キル数多いらしいねぇ」

「ほう」


 ルイは目を細めて彼の後ろに居る新米冒険者達を見た。


「アンタ等このアホに置いてかれへんかったけ?」


 噂に聞く「赤毛の悪魔」から声を掛けられ冒険者成り立ての少年少女達はビックリして戸惑いつつも口を開いた。


「いえいえ、ちゃんと的確な指示を出して貰えたので、お陰で一人二体は仕留めれましたよ」


 その言葉にゼンジはどうだと言ったドヤ顔を決める。


「小隊長さんに止められなかったら、もう少しキル数伸ばせたんだけどねぇ。出過ぎだって言われちゃったよ」


 それはゼンジがサイクロプスを倒して分隊の士気がピークに達していた時だった。小隊長が駆けて来て隊列が整うまで前進停止と言われたのだ。


「常時身体強化(バフ)掛かっとるアンタとはちゃうねん。あんま突っ込んどったら囲まれんで」

「その時は俺が突破口を切り拓くさ」


 さも当然の様にゼンジは軽く言ってくれる。

 その態度が何となくルイは気に入らなかった。


「アンタ最近調子乗り過ぎとちゃうけ?」

「ん、そう?」

「タジルの件が終わってから明らかに調子乗っとるわ」


 タジルの件から二ヶ月、ゼンジは以前よりまして強くなった。

 新しく習得した繰気術を改良し、彼の持つスキルも一段階出力がアップした様に思えた。

 決闘では四連勝、クエストでは中型モンスターを二体倒している。


「ふうん。オタクにはそう見えるか。確かに自分でも気分が高揚してる自覚はあるけどねぇ。ただそれは何と言うか、人に喜んでもらえて嬉しい的な感じなんだ」

「どういうこっちゃ?」

「タジルでアンスラを討った時、街の人達皆喜んでくれたじゃん。あの幸せそうな顔がね癖になってしまってねぇ」


 ゼンジは後ろで楽しそうに談笑する後輩達に目を向けた。


「だから早くFランクになりたいっていう後輩君達の気持ちに応えただけさ。夢は応援してやりたいたいじゃん」

「ええ格好しいが」


 キザったらしい答えにルイは呆れた様子だ。

 そこへ松葉杖を突いた少女が近付いて来た。


「ルイさん!」


 二人は少女の方に向く。

 ゼンジには見覚えのない顔だ。容姿や装備からしてこの娘も冒険者になったばかりだろうと思われた。


「アンタさっきの。足は大丈夫(べっちょない)け?」


 どうやらルイの知り合いの様だ。話から察するにゴーレム戦の時に出会ったのだろう。


「はい、ヒールのお陰で早く良くなりそうです! さっきはありがとうございました! 私も貴女みたいに強くなります!」


 少女は感謝を伝えるとその場を立ち去ろうとした。


「あーちょい待ちい」


 そんな彼女をルイは呼び止める。


「甘いもんでも食うてくけ?」

「良いんですか!? ありがとうございます!」


 ルイも店で巣蜜を購入し彼女に手渡す。

 ゼンジの部下達が彼女を支えて近くの石に腰を掛けさせる。そして新米冒険者同士楽しそうに談笑を始めた。


「オタクもいい格好しいじゃん」

「うっさいわ」


 生意気をいう相棒に突きを入れる。

 まあそれとしてルイもまんざらでもない表情をしていた。

 そこへゼンジの分隊にいた一人が戻って来た。


「ゼンジさんちょっと聞きたいんですが」

「うん?」

「ゼンジさんはBランク。ルイさんはAランクですよね?」

「そうだけど?」


 彼は何だか聞きづらそうな感じで質問した。


「何故ゼンジさんはAランクにならないんですか?」

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