第2話 〜ゴーレムは持ったな!! 行くで!!(無理)〜
第四小隊は第三小隊とゴーレムの群れとの間に布陣しそこでゴーレム達を迎え撃った。
彼我との戦力差はそれほど無いが、やはりゴーレム達の硬い岩の身体によって、大剣やハンマーといった重量系武器を持たない冒険者は魔法で強化された武器を持ってしても苦戦を強いられている。
「ひい、助……け……」
一人の新米冒険者の少女は剣を折られ、ゴーレムに押し潰されようとしていた。
全身が岩石で出来たゴーレムの重量は小型であっても数百kgはある。
身体中からミシミシと悲鳴が上がる。息も出来ずもうダメだと諦めかけた時ゴーレムの動きが止まった。
見ればゴーレムの頭を誰かが鷲掴みにしている。
「ぬんッ!!」
気合いの入った声と共にゴーレムを引き離すとそのまま仰向けに叩き付ける。
丸い大きな帽子と変わった形のローブを羽織った魔法士が少女に振り返った。
「べっちょないけ?」
「あ? え?」
聞き慣れない単語に少女は何を言われたのか、どう返したら良いか分からない。
ルイは「またけ」と呟くと手でのジェスチャーも加えて、相手に伝わる言葉を選ぶ。
「さっさと後退しい」
少女はようやくルイの言葉を理解する。
「ありがとうございます。でも脚が……」
見ると少女の脚が青く腫れていた。
ルイは魔導杖を彼女の脚に向けると無詠唱魔法を発動する
『ヒール』
「痛みが引いていく……。これ無詠唱魔法!?」
「あんま無茶すんなや」
そう言うとルイは起き上がるゴーレムと対峙すると、魔導杖を地面に突き刺し羽織っているヴィジットを脱いだ。
彼女にとってゴーレム等物の数では無いが、こうも周りが乱戦になってしまうと、お得意のギガインパクトも迂闊に使えない。木っ端微塵にしたゴーレムの破片が仲間の冒険者に当たるかもしれないからだ。
だから彼女はもっとも自分の趣向に合った戦い方を選んだ。そう肉弾戦だ。
ゴーレムがルイに目掛けて突進する。
ルイは手に唾を付けると真正面からゴーレムを受け止め、力尽くでその勢いを殺した。そしてゴーレムの股に手を掛けると、ヒョイッと岩石の身体を持ち上げて見せた。
「!!??」
周囲で戦っている冒険者達が思わず二度見する。
「うりゃっ!」
そんな周囲の反応等お構いなしにルイはゴーレムを頭上に掲げると別のゴーレムに叩き付けた。
岩と岩がぶつかり、その衝撃でゴーレムを構成する岩がバラバラに飛び散る。
その様子を見たルイは何かを閃いた様にバラバラになったゴーレムの腕を拾い上げた。拾い上げると簡単に言ってもその腕は丸太の様に太く、普通なら数人がかりで持ち上げる物だ。そんなゴーレムの腕を良い物を見付けたとばかりにルイは担ぐとそのままゴーレムの群れに突貫する。
「どりゃあぁ!」
指を柄代わりにしてゴーレムだった腕をゴーレムに叩き付ける。
そうゴーレムの身体が硬いのなら同じゴーレムで殴れば良いのだ。という無茶苦茶な理論ではあるが、少なくとも殴られたゴーレムは頭部を砕かれヨロヨロとよろめくと追撃の一撃を受けて大地に崩れた。
「おお、これええやん!」
思った通りゴーレムの身体が対ゴーレム武器として有効な様だ。
しかし今の衝撃で腕も砕けてしまったが問題は無い。そこに出来立てのほやほやゴーレムの骸があるやろ?
ルイは倒れたゴーレムを踏み付け、腕を引張り、まるで人形を壊すように岩石の身体から腕をもぎ取った。
「次ぃっ!」
新しい腕を手にルイはまた一体ゴーレムを仕留める。そして砕けた腕を捨て、新しいゴーレムの骸から腕をもぎ取り次の獲物に襲い掛かる。
「何だ? あの戦い方……」
「あれユニオンコマンダーの所の『赤毛の悪魔』だ」
「あれが? 怖えぇ、その名の通りじゃないか」
周りの冒険者がその戦い方に戦慄する。きっと彼等の目にはルイの姿が破壊神の様に見えた事だろう。
時間が経つにつれて他の冒険者達も体勢を整えゴーレム達を押し返し始めた。戦闘の主力を重量系武器を装備した冒険者とし、軽量系武器を装備した冒険者はポーション等で負傷した前衛の回復役に徹したのだ。
「よし、このまま包囲殲滅だ」
小隊長の男が麾下の冒険者に迂回してゴーレムを包囲するように命令を出す。
彼は最初予備戦力と言う事で出番が無いのかと心配だったが、こうやって戦闘に参加出来た事を喜んでいた。ここで手柄を立てて次のランクに上がってやると、昔軍で学んだ知識の通り敵を包囲殲滅せんとしたのだ。
その思惑通りゴーレム達は一箇所に追い詰められ完全に包囲された。
勝利は時間の問題と思われた時、ゴーレムは自らの身体を瓦解させ、周りの仲間達を巻き込んで一つになり始めた。
「おい、これマズいだろ!?」
「一旦下がれ!」
危険を感じ取った冒険者達が蜘蛛の子を散らすよう後退する。
直後、彼等が居た地面までもがゴーレムに吸収されその巨体に組み込まれていった。
「各々最大魔法を撃て!!」
小隊長が慌てて指示を出す。
『アクアシュート』
『ガンズロック』
『フレイムキャノン』
魔法士達がそれぞれが使える最大火力をゴーレムにぶつけた。だが火力が足りない。狙いを指示しなかった事もあり攻撃もバラけてしまった。魔法攻撃はゴーレムの身体の一部を欠けさせただけで、何事も無かった様に煙の中から圧倒的な巨体となったゴーレムが姿を現した。
「クソッ! 一時退却だ!」
小隊長は苦渋の決断をする。
自分達が退けば第三小隊が危ない。だがこのまま冒険者達を突っ込ませる訳にはいかない。
ゴーレムが合体する前に押し切れなかった事が悔やまれる。いや、そもそも自分が包囲では無く、分断しての各個撃破を命令しておけば巨大化は防げたのではないか?
「俺が殿を務める!! お前達は第三小隊と合流しろ!」
悔やんだところで後の祭りだ。
小隊長としての責任感から彼は剣を抜いてゴーレムを迎え撃つ覚悟を決める。
そんな彼の背後から悠々と近付く魔法士がいた。
「おっちゃん退いとき」
「お前はユニオンコマンダーの所の魔法士」
ルイは魔導杖を携え小隊長より前に出ると柔和な顔を彼に向ける。
「すんまへんな。杖と服探しとったら遅れたわ」
小隊長に一瞥すると迫り来るゴーレムに向き直る。
ゴーレムが歩を進める度に地面が揺れる。しかしその巨体故に動きが遅い。
「身体がデカけりゃ勝てると思たんけ? 甘いわ土人形! むしろ恰好の的じゃ!」
ルイは魔導杖を掲げ詠唱を開始する。
『精霊よ集え。冥界の門を開き、彼の地に封印されし魔人を解き放て。顕現せよ――デーモンハンド』
虚空に出来た裂け目から悪魔の手が召喚される。
ルイは手に唾を付けると自分の身体一部の様にデーモンハンドを操る。ゴーレムの抵抗などものともせずその巨体を鷲掴みにし持ち上げる、そして暴れるゴーレムを木っ端微塵に粉砕した。
「はん! いっちょ上がりや!」
地面に落下して行くゴーレムの残骸を壮快な表情で見やる。
その時、指揮所がある丘から作戦終了を告げる黄色の発煙弾が上がった。
各所から勝利の歓声が湧き上がる。
モンスターの大量発生はこうして冒険者達の勝利で幕を閉じたのであった。




