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飄々ゼンジの異世界謳歌  作者: 寒原
第2章 凸凹冒険者コンビ
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第6話 〜OK。相棒!〜

 ここに来てスピットはようやく、自分はとんでもない相手に決闘を吹っ掛けたのではと気付いた。

 のらりくらりと自分を手玉に取ったゼンジ。

 魔法が使えない状態で前衛型冒険者の二人を瞬く間に倒してしまったルイ。

 どちらもその強さは圧倒的に自分達より上だ。

 だがスピットに逃げるという選択肢は無い。それは彼のプライドが許さなかった。


「……アンチマジックフィールド解除」


 スピットはわざわざ発動した魔法封じの結界を解除する。


「おや、せっかくの魔法。止めちゃうのかい?」

「ああ、あの女には無意味だった様だからな」

「良いのかい? うちの相棒に魔法を与えたら竜に宝玉だよ~?」

「竜? ああ、確かにな!」


 スピットは速やかに戦闘態勢に入る。

 魔法封じの結界が消え本領発揮したルイはヴィジットを靡かせて爆速で迫っていた。


『精霊よ。万物斬り裂く刃を我に――ソードフォーム!!』


 魔導杖の先端に光の刃が現れる。

 更に続けて詠唱する。


『精霊よ。彼の者に焔の嵐を――ファイアーブラスト!!』


 無数の火球がスピットに向かって飛んだ。


「いやちょっと! 俺もいる!」


 巻込まれては堪らない。ゼンジは横にダイブして火球の雨を躱す。

 一方のスピットは剣で防御しながら後ろに飛んでやり過ごしたが、そこへ炎の中を突っ切ってルイが肉薄した。

 ぶつかり合う刃と刃。

 ルイは(およ)そ魔術士らしからぬ力技でスピットに剣撃を浴びせる。

 だがスピットも負けじとその剣撃を上手く捌きルイの実力を測っていた。


(なるほど、流石はAランクだ)


 あの2人が負ける訳だ。下手をすればそこら辺の前衛型冒険者よりよっぽど強い。


「だが俺には及ばねぇ!」


 スピットは一瞬の隙を見抜き、刃を受け止めたカウンターで切り返す。彼の剣は確実にルイを捉えた。


『即効魔法――ワープ!!』


 キンッと言う金属音が響き渡る。

 スピットの剣はゼンジによって止められていた。


「チッ!」


 スピットは飛び退き一旦距離を取った。


「オタク突込み過ぎな」


 ゼンジは猪突猛進な相棒の肩を小突く。


「すまん……ちと熱うなり過ぎたわ」


 ルイは助けられた照れ隠しなのかぶっきら棒に口を尖らせた。

 それを見てゼンジはやれやれといった感じに笑う。

 この2人。猪突猛進型はどちらかと言うとルイの方だった。

 ゼンジは確かにトラブルメーカーであるが、勝負事になるとその性格もあってか俯瞰したように作戦を立て勝利する。

 一方のルイの方は目の前の相手に突っ込んで行くだけで作戦も何もあった物ではない。しかしその火力はゼンジを遥かに凌いでいる。

 だからザルムはこの2人でバディを組ませているのだろう。現にこの凸凹コンビは何やかんや、お互いを信頼している所がある。


「ゼンジ、援護頼む」


 ぶっきらぼうな少女の口から溢れた言葉に、ゼンジは少し嬉しそうに力強く返す。


「OK。相棒!」


 ゼンジは前衛に出るとスピットに斬り掛かる。

 スピットは小さく舌打ちをした。

 先程この男に一杯食わされたばかりだ。

 おそらくあの魔術士との連携を意識しているのだろうが、こうも自分と接近していれば迂闊に魔法は撃てない筈。かと言って先程の様に魔法の刃で接近戦を仕掛けて来る様子も無い。少し離れた所でこの戦いを観察している。

 だがスピットに考えている余裕は無い。疾風の様な斬撃が彼の思考を釘付けにしているのだ。


(コイツ、さっきと動きが違う!)


 先程とは打って変わってゼンジは怒涛の剣撃をスピットに浴びせる。

 右袈裟に一刀。受けられたら左袈裟に一刀。刀がダメなら蹴りを入れ、正面がダメなら横にズレる。鍔迫り合いで膠着したならグイっと押しつつ脚を掛けてスピットの体勢を崩そうとする。

 だがスピットも持てる全ての剣技で何とかゼンジの猛攻を凌いでいた。


(仕方ねぇ。奥の手だ!)


 スピットはゼンジが真向斬りの構えに入った所で剣を地面に突き刺した。

 ゼンジの一刀が振り下ろされる。

 その刀をスピットは両手で受け止めた。


「白刃取り!?」

「うおぉぉ!!」


 気合の雄叫びと共に、スピットは捉えた刀を横に捻じり抑え込む。そして左手で鷲掴みにすると、空いた右手で剣を取りゼンジに振りかざした。


「――ッ! ルイッ!」

「あいよ!」


 気付けばルイがスピットの真横に迫っていた。その目は獲物を狙う猛獣の様にギラギラして渾身の一撃が来る事はスピットにも分かる。

 ゼンジは囮だった。

 2人の作戦は何時もゼンジがその機動力と剣技で相手の隙を作り、そこをルイの高威力魔法を叩き込むという作戦だ。

 ルイは魔導杖をスピットに突き入れ、ゼンジは来たる衝撃に歯を食いしばった。


『ギガインパクト!!』


 骨の髄まで響く衝撃音が決闘場内に轟く。

 スピットの身体は中を舞うと水切り石の様に身体を打ち付けながら地面を跳ね転げて行った。

 あれだけ激しく打ち付けられているのだから、もう立ち上がれないだろう。


「ああスッキリしたあ。ゼンジ大丈夫(べっちょない)け?」


 会心の一撃を放ったルイは至極満足といった顔をしている。

 だがギガインパクトの余波を間近で食らったゼンジは耳をやられたのか大声で聞き返した。


「ああ? 何だって?」

大丈夫(べっちょない)け!?」

「とんでもねえあたしゃ神様だよ!」

「ふざけとんちゃうぞ!」


 決着は着いたと思って気を抜く二人。

 だが決闘の終わりを告げる合図が中々上がらない。

 その時吹っ飛ばされてダウンしたかと思っていたスピットがゆらりと立ち上がった。


(つう)ッ――、今のは流石に効いたぜ」

「嘘でしょ? どんだけ頑丈なのよ?」


 確かにルイの魔法は彼の横っ腹にクリーンヒットした筈だ。決闘仕様に威力を弱めたギガインパクトだったとは言え、人間を戦闘不能にするには十分な威力を持っていた。なのに彼の身体や鎧には傷一つ付いていないではないか。

 スピットはフッと笑うと自らの手に剣の切っ先を押し込む。


「おいっ!?」


 何をやっているとゼンジ達はギョッとするがスピットは笑みを浮かべて無傷の手を見せた。


「残念だったな! 即効魔法――アルギストを使った! この魔法でもうお前等の攻撃は一切聞かねえよ!」


 アルギスト――それは絶対防御魔法と呼ばれる最強の魔法であった。

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