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飄々ゼンジの異世界謳歌  作者: 寒原
第2章 凸凹冒険者コンビ
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第4話 〜魔法封じの結界!?〜

 決闘場に鐘の音が響き渡る。

 刀の背を肩に託し、脚に絡まらない様に鞘を保持し、待ってましたと言わんばかりにゼンジは駆出した。

 相手パーティーもランサー(クリス)モンク(ロロ)を繰出して来る。

 そしてリーダーのスピットはと言うと後方で魔法の詠唱を行っていた。


『精霊よ去れ。汝らの居場所はここに非ず。ここは人の里、人の国、人の世成り――アンチマジックフィールド!!』


 スピットの魔法により決闘場の空気がガラリと変わった。


「魔法封じの結界!? あいつ魔法戦士だったの!?」

「これであの女魔法士は使い物にならないな!」


 魔法戦士とは武芸と魔法両方に秀でた冒険者をそう呼ぶ。

 スピットが発動したアンチマジックフィールドは対魔法手段として最も有効と言われる魔法封じの結界を展開する魔法だ。

 この魔法の影響下では通常の魔法は勿論、魔法カードを使った即効魔法も使う事が出来ず、ゼンジお得意のワープを使った奇襲も封じられた。

 ただしゼンジの魔力で発動しているスキルには影響が無いようだ。ならばまだやりようはある。

 クリスとロロが迫る。

 どっちを先に仕留めるべきか?

 ゼンジは先ず迂回して自分とクリスの間にロロが来る様な配置に誘導しようと考えた。こうする事でクリスはロロが邪魔になって槍を使った攻撃が出来ない。その間に実質サシの勝負となったロロを撃破しようという魂胆だ。

 勿論、そんなポジションなど直ぐに崩されるだろうが、ゼンジはその僅かな時間さえがあれば最低でも大勢有利まで持込める自信があった。

 彼我との距離が縮まった所でゼンジは脚にブレーキを掛け、同時に左へとステップする。

 しかし彼女達はゼンジには構う事無く直進した。


「アレ?」


 今の動きを傍から見ればゼンジが道を譲った様に見えるだろう。正直物凄く恥ずかしい。


「お前の相手はオレだ!」


 空かさずスピットがゼンジに突っ込んで来る。

 ゼンジは彼の剣と突進をバックステップで受け流し、直ぐに仕掛けるがスピットの剣に受け止められる。


「あの二人はルイ狙いかい?」

「そうだ。魔法の使えない魔法士なんかザコだからな!」


 魔法士は前衛を担うようなクラスでは無い。剣士や槍兵と言った前衛を得意とするクラスの後ろで補助魔法や攻撃魔法をする後衛向きのクラスだ。その為、接近戦には滅法弱く、更に強みである魔法を封じられた今の状況は非武装と言って良い。

 一般的な魔法士なら――。

 

(生憎とルイは接近戦型魔法士なんだよねぇ)


 初めて会った時、ドラゴンに接近戦で挑んでいたルイはCランク以下の冒険者なら前衛でも余裕で渡り合える。

 決闘開始前の反応を見ても彼等がそんな事を知るはず無い。きっとあの二人は「赤毛の悪魔」と呼ばれるルイによって酷い目に合うだろう。

 ゼンジは生贄になる二人を気の毒に思いながら、眼の前の男に剣撃を打込む。

 刀が受け止められれば無理押しせず一旦退きまた打込む。スピードと勢いが売りのゼンジは変幻自在の剣術を繰り出すが、スピットも巧みに受け止めて何とかそれを凌いだ。

 どうやらBランクの実力は本物のようだ。


「デブ!! 何やってる!! さっさと援護しやがれグズ!!」


 後ろで弓を構えるハインに苛立ちが混じった指示を飛ばす。


「そんな事言ったって、そいつ君を盾にするような立ち回りをしているから迂闊に射てないんだよ!」


 その言葉にスピットは漸くゼンジの術中にハマっていた事に気付く。

 ちょこまかと動いたり、積極的なのか消極的なのか分からない攻撃だなと思っていたがそんな小細工をしていたとは。


「ハハ、バレたか」


 いたずらがバレた子供の様にゼンジは笑う。

 ならばとスピットは全身の体重を掛けてゼンジを弾き飛ばした。

 軽装備のゼンジと鎧を着た重装備のスピットでは単純なパワーはスピットの方が分がある。


「射て!! デブ!!」


 ハインは弾き飛ばされたゼンジに狙いを定め矢を射る。

 その矢が放たれる瞬間ゼンジは待ってましたと言わんばかりにニッと笑みを浮かべた。

 体勢を低くして矢をやり過ごすとクラウチングスタートの要領でハインに向かって駆け出した。


「あっ!」


 スピットも急いでゼンジを追うがどんどん引離される。

 スピードでは軽装備のゼンジに分があるのだ。


「う、うわあ!!」


 ハインは慌ててニの矢を番える。

 彼我との距離10メートル。この距離なら避けられない筈。

 しかし矢が放たれる直前、ゼンジは腰に吊ってある鞘を抜くとハイン目掛けてぶん投げた。

 回転しながら飛んだ鞘はハインの顔を掠った程度だったが、一瞬でも彼の気を逸らさせ、矢の狙いを狂わせる事に成功した。

 放たれた矢はゼンジを飛び越え追走するスピットの鎧に当たって弾かれる。


「うおぉッ!?」


 飛んで来た矢に驚きスピットは悲鳴を上げた。

 彼我との距離5m。


「ひぃぃ!!」


 もはや矢を番える暇もないハインはただただ身を庇うしか出来ない。

 そんな彼にゼンジは問答無用の一太刀を浴びせた。

 カンッと木を割った様な音が響く。

 ゼンジが斬ったのはハインの持っていた弓だ。

 だがそれだけで終わるはず無く、ゼンジは更に一蹴り入れてハイン吹っ飛ばす。


「隅っこで大人しくしてなよ!」


 そう言うとゼンジは直ぐに、背後から追って来るスピットに刀を正眼に構えた。


「クソッ、役立たずが!!」


 スピットは変わらずハインに悪態を付く。特に今回は誤射された事もあってか発する罵声が一段と厳しかった。


「ザコをやっただけで良い気になるなよ! 直ぐにお前の相棒も倒されて――!」

「キャアァァ――!!」


 金切り声の様な悲鳴が木霊する。

 反射的に悲鳴がした方を向くと、向こうでの戦いに決着が着いた所だった。スピットの思惑が裏切られる形で。


「な――、」


 そこにある光景にスピットは固まった。

 後襟を掴まれて気絶しているロロ。

 突き出した槍を捉えられ、そのまま槍ごと持ち上げられているクリス。


「なんじゃそりゃー!!?」


 まるで荒ぶる鬼神に蹂躙されたが如き光景にスピットは仰天の声を上げた。

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