第三十話 『に、兄さん』
俺は、リトライラを連れて五次元間を転移した。
「あ、あなたは一体何をしたんだ?」
状況が飲み込めていないのかリトライラは困惑の声を上げる。
「俺には、「次元転移」っていう固有スキルがある。」
「それがどうかしたの。周りの光景は変わった様に見えないんだけど、そのスキルで転移したという訳じゃないのかい?」
「まあ、一応転移はしたんだよ。」
五次元間を転移したのだから、場所も時間も変化はない。
周りの見た目に変化はない。
「何のために?」
「俺は先輩としてさ、お前を救えるのなら救ってやりたいんだよ。」
リトライラは顔を伏せた。
俺に見える頭部からは、リトライラの心情を読み取ることは難しい。
「このスキルを使えば、自分を起点とするパラレルワールドに飛ぶことだって出来るんだ。」
少し理解に苦しんでいるのか、リトライラは首を捻っている。
「例えば、俺が朝起きた時に顔を洗った世界線、洗わなかった世界線の両方を移動しようと思えば自由に行き来できる様な能力だと思ってほしい。」
「なんなんだ、そのバカげた能力は。」
「この能力は、俺が起点になっている世界線ならばどの世界線でも飛んでいけるんだよ。」
リトライラは、何が言いたいのかと俺に詰め寄ってくる。
「直感で、その世界線が存在することが分かるんだ。俺がさっきベヒモスを討伐しようとしなかった世界線、このボス部屋に仲間と挑んだ世界線とかな。あと、」
「だからなんだっていうんだ!君が移動できるのはあくまで君が起点となった世界線だけなんだろう。それで、一体どうやって僕を救ってくれると言うんだ!」
リトライラは叫び疲れたのか、その場に座り込んだ。
俺はまだ、説明を続ける。
「話は最後まで聞くもんだぜ。俺は飛んで来たんだよ、未来の俺がお前を連れてくる世界線に!」
そう言った瞬間、目の前にいきなり俺とリトライラが現れた。
「確かに、俺じゃお前の心を救ってやれないかもしれない。でも、お前のことを世界一理解している未来のお前なら、救ってやれるんじゃないのか。」
「な、なんで僕が目の前に居るんだ!いや、理屈は分かる。でも脳が与えられた情報を全然読み込めてない!」
リトライラは、目の前に自分が居ることに戸惑って頭を抱えてしまった。
「やあ俺、久しぶりだな。」
「ああ、久しぶり。」
俺たちは、数日ぶりの自分との再会に喜び、握手をし合った。
カオス、意味不明、もう何とでも言うがいい。
「お前の世界では、もうリトライラを説得し終えたのか。」
「そうだな。俺もさっき俺に助けられたから、しっかり次に託そうと思ってな。」
流石俺、俺の考えを全て理解した上で話してくれるから会話が楽でいいぜ。
俺は、未来から転移してきたリトライラに声をかける。
「なあリトライラ、その~なんだ、そこに居るリトライラと話してやってくれよ。」
「うん、そのつもりだよ兄さん。」
兄さん?
未来で何があったら、リトライラが俺の弟になるんだ。
「リトライラはさ、数日前に信じていた家族に裏切られただろ。だから、俺のことを親まではいかずとも、義理の家族だと思ってくれていいぜって言ったら、兄さんって呼ばれるようになったんだよ。」
「なるほど、そんな背景が。」
リトライラがリトライラと話し合っている間、俺は俺と談笑していた。
未来の俺と言っても、数分後の俺なので持っている知識はほとんど変わらない。
そして数分後、俺の居た世界線のリトライラが俺達の元に歩いてきた。
「あなた会えたことは幸運だと思う。神様もこんな僕に、まだまだこんなサプライズをしてくれるなんてね。」
リトライラは、俺に向けて初めて笑って話した。
最後に、というかリトライラを色々慰めたことの大半の功績者は未来のリトライラだから、なんか反応に困るな。
「まあ、ベヒモスの代わりに召喚された時のお前が俺に少し重なって見えてさ。放っておけなかったんだよ。」
半分は俺の自己満足だ。
でも、例え俺の自己満足の為だったとしてもリトライラがこうして笑みを取り戻してくれたのなら良かった。
「そういえばさ、あなたの名前ってなんていうの?まだ僕しか名乗ってなかったよね。」
「ああ、そういえばそうだったな。」
リトライラの事情の濃さで、俺の自己紹介を完全に忘れていた。
「俺の名前は清原祥佑だ、よろしくなリトライラ。」
「あまり聞かない名前だね。それに、発音の仕方もなんだか独特だ。」
それは俺が地球から召喚されたから、といえばその疑問は解消できるが、それを話せばこれまでの経緯を話す必要が出てくるだろう。
絶対に説明がが長くなる。
「まあ、兄さんとでも呼んでくれよ。」
俺は、俺の助言通りそう提案する。
「な、なんで僕があなたのことを兄さんなんて呼ばないといけないんだい?僕には実の兄が居るのであって、そもそも僕とあなたはほとんど初対面な訳であって、」
リトライラは慌てて色々と話し始める。
多分、数日前のことで家族というものに若干の抵抗があるのだろう。
「だって、リトライラは今家族に追放されて一人なんだろ。なら、俺が親まではいかずとも、義理の家族になってやりたいなと思ってさ。」
リトライラは俯いてしまった。
やっぱり、いきなり兄さんは早かったか。
しかし、リトライラは俺の思惑とは異なり、顔を真っ赤にして言った。
「に、兄さん。今後もよろしくね。」
「結婚してくれ。」
男だが、あり得ないくらいの美少年に上目遣いで兄さんなんて呼ばれたら、例え地球、いや宇宙中のだれであっても求婚を申し出たはずだ。
これに関しては断言する。
「い、いや、結婚はちょっと。」
「真に受けるなよ、リトライラ。」
横から未来の俺が言う。
というか、こいつも俺なんだから初めて兄さんと呼ばれた時に求婚をしたはずだろうに。
「とにかく、長い時間この世界線に居てももう意味はないんだし、そろそろ元の世界線に戻ろうよ、に、兄さん。」
「それもそうだな。」
俺は、未来の俺とリトライラに別れを告げて元の世界線に戻っていった。
「ねえ、最後に聞かせてよ兄さん。」
あと、明日は短いリトライラ視点と佐々木原視点です。
あと数話で、VS冥皇チーム戦が始まりますので。
三、四話に渡ってリトライラとの出会いを書いたのですが、流石に長すぎたかもしれないので随時修正はするかもしれません。
でも、リトライラは今作で重要キャラの一人だったんで、力を入れて書きたかったんです。
どうか大目に見てほしいです。
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