第二十七話 『僕の名前はリトライラ、今はまだ』
俺と葉山は、その後も「次元転移」を駆使してベヒモスを狩り続けた。
今や討伐したベヒモスの数は十や二十では足りないだろう。
予想通り、クルトは自分が戻ってきた時にはもう既に俺たちがベヒモスを討伐したことを知って物凄く驚いていた。
《経験値が入りました。》
《経験値が上限に達しました、レベルが上がります。》
《次元転移を発動します》
俺は、今日何回目になるかわからないベヒモス討伐を終えると、五十階層に転移してまた魔物狩りを始めた。
クルト曰く、ボスモンスターを討伐すると、復活には数分から数十分のクールタイムが必要とのことなので、過去にでも転移しない限り連続でボスモンスターを討伐し続けてレベルアップをするのは難しいらしい。
まあ、クールタイムのせいで若干の足止めは食らっているものの、この数日のボス討伐ラッシュのお陰で俺のレベルは120丁度、葉山は82と、前よりも圧倒的にハイペースでのレベルアップが出来ている。
「何回目かはもう数えてないけど、今回も張り切ってベヒモス討伐を始めるとするか!」
戦闘では、油断が命取りだ。
俺は久々に気合いを入れ直して、ベヒモス討伐に挑む。
ちなみに、毎回二人が合流するのは非効率的なので、葉山はここには居ない。
ゴゴゴゴゴゴッ
レベルアップのお陰で俺はこの扉を軽々開けられているが、そこら辺の一般人が押してもこの扉はびくともしないだろう。
そして、俺は今まで通り奥の魔方陣からベヒモスが現れるのを待った。
しかし、一向にベヒモスが姿を現さない。
数秒、数十秒、数分、それくらいの間俺は身構えた状態で待機していたが、それでもベヒモスは現れない。
「何が起きてんだ?もしかして、バグとかか。」
原因はわからないが、何かしらの外的要因によって前の様にこのダンジョンでバグが起こったのかもしれない。
こういう時は、クルトに伝えれば問題ないだろう。
そう思い、俺が「次元転移」を発動しようとした時、
「こ、ここは一体?」
突然、本来ベヒモスが召喚されるはずの魔方陣から、若干光った神秘的な長剣を携えた謎の美少年剣士が現れた。
「は、はぁ?」
俺は、起こった事態があまりに想定外過ぎて思わず変な声が出てしまう。
それも仕方がないだろう。
なにせ、なかなか現れないなと思っていたら、突然魔物ですらない少年が現れたのだから。
まあ、彼は彼で事態を飲み込めてはいない様なので、とりあえずは友好的に接しておくべきか。
「お前、ここがどこか分かってなかったりするのか?」
俺は、この状況で必要かつ、なるべく当たり障りのない内容を聞いてみる。
すると、その言葉で俺の存在を認識したのか、その美少年剣士君は俺に剣を向けて俊敏な動きで身構えた。
「おっと、俺はお前の敵じゃない。というか、俺もこの状況に混乱してるんだよ。」
「ここは何処なのか、何故あなたはここに居るのかについて、端的に答えてほしい。」
美少年剣士君はあの魔方陣から現れたので、俺との距離は約十メートル程ある。
十メートルというのは、地球では当然相手の間合いの外だろう。
だが、魔法あり、超能力ありのこの世界では、相手が遠距離に対応できるスキルを持っているのなら、間合いなんてあてにできない。
この世界では、慎重に慎重を重ねたって足りない。
「ここは、ミリエーラダンジョンっていうダンジョンのボス部屋だよ。」
シャーロッタさん、改めて思うのだがもう少し名前をどうにかできなかったのだろうか。
安直過ぎるでしょ。
「俺は、レベリングの為にこのダンジョンに籠ってる。」
一応、要求通り現状説明はしてやった。
「それはおかしいよ。」
「どこがおかしいんだよ?」
「だって、僕はさっきまでラッシュバード帝国にある、マリクネルダンジョンでベヒモスと戦い終えたところなんだから。」
どうも話が噛み合わないな。
こっちが事情を説明したのだから、今度はこっちが一つずつ聞いていくか。
「じゃあ、俺も少し尋ねるぞ。まず、お前の名前はなんだ?」
「は?」
俺の質問が予想外だったのか、美少年剣士君は口をポカンと開けて固まってしまった。
「ずっとお前って呼ぶのは、なんか距離を感じるじゃんか。」
「別にそこまで近しい仲とい訳でもないだろうに。まあ、名乗る分には問題ないよ。決別の意味も込めて。」
美少年剣士君は一旦深呼吸をして、前を真っ直ぐ見て言った。
そこまで名前を伝えることに意気込まれても反応に困るけどな。
「僕の名前はリトライラ。今は紹介するべきことは何もないんだ。ただの一人の魔族だと思ってほしい。」
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